第11話

☆☆☆


「みんな、大変だよ!」



A組へ戻った瞬間、あたしは叫んだ。



数人の生徒たちが一旦あたしへ視線を向けたが、興味なさそうに顔をそむけてしまった。



「トイレに女の子の幽霊がいる! すごく強い霊気だから、みんなにも見えるかもしれない!」



あたしの言葉に反応したのはノドカだった。



ノドカは勢いよく立ちあがり「本当に!?」と、駆け寄ってくる。



「うん! 本当だよ!」



「見に行きたい!」



ノドカがそう言うと、何人かの女子生徒がチラチラとこちらへ視線を向け始めた。



なんだかんだ言ってみんな気になっているみたいだ。



あたしとノドカは目を見かわせあい、トイレへと向かった。



「本当にいるんだね」



トイレに入り、真正面に女の子は立っている。



ノドカは驚いたように目を丸くして女の子を見つめる。



「そうだよ? ノドカが教えてくれたアプリのおかげじゃん」



「そうだけど……。こんなにすごいとは思わなかった」



ノドカは呟いて女の子に近づく。



触れようとして手を伸ばすけれど、幽霊だから触れることもできなかった。



「嘘、本当にいる!」



そんな声に振り向くと、クラスメート数人がトイレの入口に立っていた。



結局気になってついてきたみたいだ。



「だから言ったでしょう? みんなにも見えるって」



あたしは強気でそう言った。



みんな驚いていたり、怯えて青くなったりしている。



「おい、なんの騒ぎだよ?」



騒ぎを聞きつけた男子生徒もやってくる。



普段なら女子トイレから追い出すところだけれど、今日だけは特別だ。



あたしは体をよけてトイレの中を見させてあげた。



途端に悲鳴を上げて逃げていく男子生徒。



その様子に思わず噴き出した。



「ねぇ、あの子は何かを訴えているの?」



クラスメートにそう聞かれて、あたしは一瞬言葉に詰まってしまった。



幽霊の細かな設定を考えていなかった。



「そ、そうだね。たぶん、大昔この土地で亡くなった子で、まだ成仏できないでいるの。だけど大丈夫だよ。みんなの楽しそうな声が聞こえてきたから、出てきただけだと思うから」



嘘をつくのは得意だった。



「さ、もう教室へ戻ろう。この子も、ずっと見られていたら成仏できないから」



クラスメートからこれ以上突っ込まれるのが嫌で、あたしはそう言ってそそくさと教室へ戻ったのだった。

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