第10話
☆☆☆
翌日。
いつもより早く学校へやってきたあたしはA組の近くのトイレに入っていた。
幸い、トイレには誰もいない。
スマホを開いて昨日ダウンロードした《具現化アプリ》を表示させる。
「もう1度、ちゃんと説明を読んでおかないと……」
呟き、説明画面を表示させた。
《具現化アプリ
このアプリに写真を取り込むと、それが現実世界でも現れます。
例えばカッコイイ彼氏。
素敵な友達。
幽霊でもなんでもOK!
写真は雑誌を撮影したものでも、スクリーンショットでも大丈夫!
アニメキャラをそのまま出現させることもできるよ!
ただし、アプリで作成された人間や物は24時間で消滅してしまうよ。
24時間以内に消滅させたい場合は、制限時間を設定してね!》
あたしは説明を文を読み直して息を吐きだした。
これが本当だったらあたしはここで幽霊を出現させることができるのだ。
そうすればクラスメートたちだってあたしを見直すだろう。
マナミたちだって、もうなにも言えなくなるはずだ。
考えただけでワクワクしてしまう。
でも……。
写真で撮影されたものが現実に出てくるなんてありえない。
画面上で3Dとして見えるだけじゃないかな?
そんな予感もしていた。
なにせよくわからないサイトでダウンロードしたアプリだ。
信用できるかどうか、わからなかった。
「よし、とにかくやってみよう」
気を取り直すように呟き、アプリに女の子の幽霊の写真をアップロードした。
昨日寝る前にトイレの花子さんを連想させる写真を探して、スマホに保存しておいたのだ。
「アップロード完了! で、一応2時間で消滅するように設定しておこうかな」
幽霊が24時間ここにいるのはちょっと不自然だからだ。
「これでいいのかな?」
最後に表示されたOKボタンをタップしてすべては完了。
しかし、特に変化は見られない。
画面上にはさっきあたしがアップロードした写真が表示されたままだ。
「どうなってんの?」
首をかしげて呟いた瞬間だった。
今まであたし以外に誰もいなかったのに、不意に人の気配がして振り向いた。
あたしの後ろには窓があるはずなのに、その前に見知らぬ女の子が立っていたのだ。
「ヒッ!」
思わず悲鳴を上げ、それからその女の子があたしがアップロードした写真の子だと気がついた。
小学校低学年くらいのその子は制服姿で青白い顔をしている。
体は半分透けていて、それは写真で見たものそものもだった。
「び、びっくりした……」
ドキドキしながら女の子の顔を覗き込む。
女の子と視線がぶつかるが、なんの反応もなかった。
「おーい?」
声をかけても反応はしない。
どうやらこの子は、だたここにいるだけみたいだ。
それだけでも十分怖い。
あたしは女の子の周りをグルッと一周してみた。
どこから見ても体は半分透けている。
そしてどこからどう見ても幽霊だった。
とたんに全身にゾクゾクと寒気が走った。
自分が作った幽霊に怯えたのではなくて、武者震いしたのだ。
これでみんなを見返すことができる!
あたしはニヤリと笑い、教室へと駆けもどったのだった。
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