第8話

☆☆☆


「あんたたち、なに考えてんの?」



マナミに呼び出されたのはこれで2度目だった。



今度は体育館倉庫の裏。



グラウンドでは部活動をする生徒たちの声が聞こえてくる。



マナミからの呼び出しを無視しようとしたあたしとノドカだったけれど、ホームルームが終わった直後に連れてこられてしまったのだ。



さすがにこれはまずい状況かもしれないと思い、冷汗が背中を流れていく。



しかし、あたしの隣にいるノドカは平気な顔をしている。



「あんたたち、なに考えてんの?」



マナミが一歩近づく。



あたしは一歩後ずさりをする。



でも、ノドカはその場から動かなかった。



「なにって、なにが?」



ノドカは首をかしげている。



「いつまで嘘つきごっこしてんのかって、聞いてんの」



リサが怖い声で言う。



「嘘つきごっこ?」



ノドカは首をかしげてキョトンとした表情をしている。



本当にわかっていないのか、本当はわかっているのにわからないふりをしているのか。



いずれにしても、その態度はマナミを怒らせた。



「テメェ、いつまでもふざけた態度してんじゃねぇぞ!」



マナミは怒鳴ると同時にノドカの肩を強く押した。



ノドカは体のバランスを崩してその場に倒れ込む。



土埃が舞い上がり、あたしはせき込んだ。



マナミがノドカの体の上に馬乗りになり、その頬を思いっきり叩いていた。



パンッ! と頬を打つ音が響く。



あたしは咄嗟にはなにもできず、呆然と立ち尽くす。



その隙にリサが近付いてきていて、あたしの頬にも痛みが走った。



ハッと我に返ったときには、自分の頬を自分の手で押さえていた。



「今度嘘ついたら、これだけじゃ終わらないからな!」



マナミは捨て台詞を吐き、リサと共に逃げて行ってしまったのだった。


☆☆☆


「ごめんね、あたしのせいで」



あたしとノドカは学校の近くにある公園に来ていた。



ノドカがこけたときに手をすりむいていたので、その手当が必要だったのだ。



公園の水で洗い、絆創膏をはってあげるとノドカはニコッとほほ笑んだ。



こんな目に遭ったのは全部あたしのせいなのに、どうしてノドカはこんなに平気そうな顔をしているんだろう?



あたしは本当に疑問になっていた。



「どうしてノドカはここまでしてあたしと一緒にいるの?」



公園のベンチに座り、思い切って質問する。



するとノドカは「友達は自分で決めるから」と、返事をする。



それはそうかもしれないけれど……。



それでもあたしは納得できなかった。



いくらノドカがオカルト好きでも、ここまで一緒にいるだろうか?



疑問をぶつけようとしたとき、ノドカがスマホを取り出した。



「霊感なんてないのはわかってる」



その言葉に心臓がドクンッと跳ねた。


ノドカがなにを言ったのか理解できなくて、頭の中は真っ白になる。



だけどノドカはいつもの笑顔をあたしへ向けていた。



「な……なんで、わかってたのに一緒にいるの!?」



マナミが言っていた通りあたしは嘘つきだ。



ノドカもそれを知っていたのなら、あたしから離れることも簡単だったはずだ。



それなのに、どうしてイジメられながら一緒にいたのかわからなかった。



ノドカはまだ笑っている。



笑いながら、あたしの眼前にスマホを掲げた。



「嘘なら、現実にしちゃえばいいと思わない?」



「え?」



ノドカの画面には見たことのないアプリが表示されている。



それは《具現化アプリ》と書かれていた。



「どんなものでも、このアプリに写真をアップロードすれば、現実世界にそれが現れるんだって」



「なに……それ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る