第6話
☆☆☆
「この学校には本当に幽霊がいるんだよ」
「うんうん。そうだよね!」
一週間後、あたしの話に熱心に耳を傾けてくれるノドカ。
しかし、他の子たちは話に飽きたのか全然近づいてきてくれない。
「それで?」
「そ、それでね……」
ノドカは相変わらずあたしの嘘を目を輝かせて聞いてくれてりる。
それは嬉しいのだけれど、みんなの注目が減ってきていることが不満だった。
つい一週間前まであたしがクラスで1番注目されていたのに、今はみんな思い思いの時間を過ごしている。
美容だったり、ファッションだったり、みんなの興味の移り変わりは激しいのだ。
あたしはうつむき、机の木目を見つめた。
どうにかしてみんなの注目を集めることができないだろうか?
考えてみても、いい案は見つけられない。
化粧は苦手だし、ファッションにも疎い。
心霊現象のように嘘をつけば、『それは流行とは違う』と、すぐにバレてしまう。
「どうしたのミキコ?」
気がつくとノドカが心配そうにあたしの顔を覗き込んでいた。
「な、なんでもないよ」
慌ててそう答え、笑顔を作る。
いつまで経ってもノドカはあたしの霊感を信用していて、嘘のい話をちゃんと聞いてくれる。
でも、ノドカ1人のために嘘をつくのも疲れてきていた。
「まぁた嘘ついてんの?」
そう声をかけてきたのはクラスメートの吉田さんだ。
吉田さんはマナミたちと仲良くなり、あたしをからかってくるようになっていた。
「嘘じゃないってば!」
すかさずノドカが反論する。
「あんた、なんでこん嘘つきを守ろうとするの?」
「ミキコは嘘なんてついてないからだよ」
真っすぐに吉田さんを見て言い切るノドカ。
一瞬だけ、胸が痛んだ気がした。
「でもさぁ、これ見てよ!」
吉田さんは突然あたしの机に手を突っ込んだかと思うと、ノートを一冊取り出していた。
あたしはハッと息を飲む。
「やめて!!」
手を伸ばして取り返そうとするが、吉田さんはすぐに逃げ出してしまった。
教卓の前に立ち、あたしのノートを広げる。
そこに書かれていたのは……。
《うそつき!》
《キモイ》
《学校来るな!》
マジックで乱暴に書かれた文字。
あたしは咄嗟に顔を伏せた。
教室内がざわめく。
今日、移動教室から戻ってくると、あのイタズラ書きがされていたのだ。
あたしはキュッと唇を引き結ぶ。
今のクラスメートたちの反応を見ると、みんなも知らなかったんだろう。
ということは、ラクガキがされていると知っていた吉田さんが犯人で決まりだ。
「うわ! なにそれ悲惨!」
そんな声に振り向くと、マナミとリサが笑っていた。
「でも本当のことしか書いてないよね? 嘘つきだもんねぇ?」
リサはゲラゲラと下品に笑う。
「ちょっと、なにしてんの!」
3人の反応に怒ったのはノドカだった。
ノドカは顔を真っ赤にして怒り、吉田さんからノートを奪った。
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