第5話
「もちろん」
あたしは気分を良くしてスマホを見せる。
近づいてきた男子生徒たちは一様に驚いた顔をしている。
「これ、この教室じゃん!」
「まじで? この学校って幽霊いんのかよ!」
やっぱり男子たちも怖い話は好きみたいだ。
どんどん盛り上がっていく心霊写真の話題をするうちに、いつの間にかマナミとリサが登校してきていた。
2人は不機嫌そうにあたしを睨みつけている。
あたしはそんな2人へ向けてほほ笑んで見せたのだった。
☆☆☆
学校1可愛い子より人気があるって、なんて気持ちいいんだろう!
休憩時間中、あたしは自信満々になっていた。
マナミとリサの2人は時折悔しそうな顔をこちらへ向けている。
「ねぇミキコ。もう1度あの写真みせてよ!」
ノドカが駆け寄ってきて言う。
「いいよ!」
そう言うと他の子たちもまたあたしの周りによってくる。
あたしはさっきと同じように机の上にスマホを置いて、みんなに加工写真を見せた。
「やっぱりモヤが写ってるね」
「このモヤってさ、よく見たら人の顔に見えない?」
「見えるかもぉ!!」
口々に好き勝手なことを言い始める。
こうして勝手に盛り上がってくれるんだから簡単だった。
しかし、いい気分を台無しにする子もいる。
「そんなのウソに決まってんじゃん」
マナミがリサを引連れて、あたしの机の前に仁王立ちをする。
「なんでそう言い切れるの?」
そう聞いたのはノドカだった。
「こんな写真、いくらでも加工できるでしょ」
リサがマナミに代わって言う。
一瞬ドキッとした。
だけどノドカはまっすぐにマナミを睨みつけている。
「この写真が加工だっていう証拠は?」
「それは……」
ノドカの言葉にマナミもリサも黙りこんでしまった。
加工だという決定的な証拠はないのだ。
もちろん、ちゃんと調べればバレてしまうけれど、今はそんなことできない。
「この写真のせいで喧嘩になってるのなら、ごめんね?」
あたしは申し訳ない表情を浮かべてみせて、スマホをポケットにしまった。
「ミキコのせいじゃないよ。その写真は本物なんだから!」
ノドカが慌ててあたしをかばってくれる。
「ノドカ、あんなのが本当に本物だと思ってるの?」
マナミが呆れた声になって言った。
「当たり前じゃん」
ノドカは大きく頷く。
それを見たマナミはため息を吐きだした。
「加工だっていう証拠はないけど、本物だっていう証拠もないよね?」
マナミはまるで諭すように言う。
確かにそのとおりだった。
「そうだけど、でもあたしはミキコを信じる」
そんなノドカにあたしは目を見開いた。
そこまでオカルトが好きなんだ。
それとも、あたしのことが好きなのかな?
どっちにしてもノドカはこれから先も騙されてくれそうだ。
「もういい、行くよリサ」
マナミは呆れたようにそう言うと、あたしから離れていったのだった。
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