第3話

それなのに、呼び出し。



あたしは大きくため息を吐きだした。



せっかく霊感があるということにして有名になれたのに、さっそく出る杭は打たれることになってしまった。



「ミキコ、1人で行って大丈夫?」



「うん。なにかあったらすぐに連絡するから、助けに来てね?」



放課後、さすがに堂々と1人で呼び出し場所へ行く勇気はなくて、あたしはこっそりノドカに説明をしていた。



ノドカはすごく心配そうな顔をしてくれている。



「もちろん、絶対に助けに行くよ!」



その言葉はすごく心強くて、あたしは安心して校舎裏へと向かったのだった。


☆☆☆


校舎裏にはすでにマナミとリサの2人が待っていた。



2人ともすごく不機嫌そうに仁王立ちし、あたしを睨みつけている。



その雰囲気だけでも気押されしまいのうになる。



立ち止まってしまいそうになる気持ちを奮い立たせて、あたしは2人の前に立った。



あたしには霊感がある。



あたしには霊感がある。



あたしには霊感がある。



自分に暗示をかけるように何度も頭の中で繰り返した。



「話ってなに?」



あたしはできるだけ冷静に見えるように言った。



本当は、心臓がドキドキしていたけれど、顔には出ていなかったと思う。



「あんたさ、ちょっと調子に乗ってるんじゃないの?」



マナミが一歩前へ出て言った。



「どういうこと?」



あたしはわざとわからないフリをして首を傾げる。



「とぼけんじゃねぇよ!」



マナミの前に立っていたリサが怒鳴り声をあげ、思わず身を震わせてしまう。



だけど、ここでひるんじゃいけない。



「本当に、なんのこと?」



「霊感なんて嘘のくせに!」



リサがあたしの肩をドンッ! と押して言う。



尻もちをつきそうになったけれど、どうにか耐えた。



「霊感は本当だよ?」



「嘘つき! そんなので有名になろうなんてふざけんなよ!」



奇麗な顔をしたマナミが汚い言葉を吐き出す。



本当にあたしのことが気に入らないみたいだ。



小学校時代のあたしなら、なにも言えなくなってしまっていただろう。



でも今は違う。



あたしは真っすぐにマナミを見つめて、その背後へ向けて指差した。



「さっきの女の子の霊が、マナミにとりついてるよ?」



そう言った瞬間、マナミがサッと青ざめた。



「そ、そんなわけないじゃん! だって、幽霊なんていないんだから!」



言いながらも、自分の背後を気にしている。



あたしはジッとマナミの背後へ視線を向けた。



もちろんそこにはなにもない。



あたしはただ演技を続けているだけだ。



「幽霊なんかいないって言ったとき、すごく怒った顔になったよ。もう、それ以上言わない方がいいよ?」



「う、うるさい! ウソつき!」



マナミは怒鳴り声をあげると、リサを連れて逃げて行ってしまったのだった。



あたしはその後ろ姿を見つめてほほ笑む。



上手く行った!



マナミとリサさえ黙ってくれれば、あたしの中学生活は順風満帆になる!



そう思い、鼻歌交じりに帰路へついたのだった。

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