第2話

「本当にそう思う?」



あたしは窓辺へ視線を向け、ため息を吐いて見せた。



もちろんそこにはなにもない。



しかしマナミの表情が少しだけ変わったことを見逃さなかった。



眉を寄せて窓辺を気にしている。



学校に幽霊がいると言われて怖くない子なんて、きっといない。



マナミやリサみたいに信じていなくても、『幽霊はいる』と繰り返して言っていればどうしても気になってくる。



「呪われても知らないよ?」



ノドカが追い打ちをかけるように言うと、マナミは「チッ」と小さく舌打ちをした。



そしてあたしを睨みつけてくる。



「放課後話があるから、校舎裏に来て」



マナミはあたしの耳元でそう言うと、自分の席へと戻っていったのだった。



☆☆☆


小学校の6年間は、あたしは目立たない生徒だった。



仲のいい子は何人かいたけれど、輪の中心になることなんて1度もなかった。



なにをして遊ぶか考えるときだって、みんなの意見に便乗してばかりだった。



スポーツは苦手なのに、縄跳びをしようと言われればやったし、ドッジボールをしようと言われればいやいや参加した。



本当は小説や漫画が好きで、休憩時間にはお絵かきをしていたかった。



でも、それは言えない。



あたしが意見なんてしたら、きっとこの場の空気が壊れてしまう。



そんな風に思っていた。



自分はみんなの影みたいな存在だ。



そう思い始めた時だった。



『ミキコちゃんって暗いよね』



トイレで、友人たちがそんな話をしているのを、偶然聞いてしまったのだ。



あたしは驚いて個室から出ることができなくなってしまった。



『そうだよね。全然自分の意見言わないし』



『ずーっと私たちの後ろをついてくるよね』



『まるで背後霊だよね~!』



みんなの言葉は胸に突き刺さる。



そんな風に思われているなんて知らなかった。



確かに自分の意見を言ってこなかったけれど、みんなと仲良くしたいからだった。



それなのに…‥。



あたしはこの時も、なにも言うことができなかった。



背後霊みたいだと笑われて悔しかったのに、またみんなに合わせてしまう。



中学に入学したらこんな性格は変えるんだと、自分に言い聞かせていたんだ……。

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