第17話 繋がる
※前話との時期が前後しますが、クリスマスのお話です(紗奈視点)
私は、ある決意をした。気持ちは固まった。ただ、実践するまでにはクリアしなきゃならないタスクがいくつもある。それも難易度が高い。そのためにするべき事がある。
「え、今週もダメなの?」
電話越しの美穂さんの声で、表情が想像出来てしまう。がっかりさせてごめんなさい。
「先週も練習会だったよね? 体、大丈夫なの?」
怒るのかと思ったら、心配してくれる。それも申し訳なくて辛い。
「ごめん美穂さん、こんなスケジュールになっちゃって。来週は空けてあるから! あ、えっと……会ってもらえますか?」
途中で気付いたーー来週はクリスマスイブであることーー私と過ごしてもらえるだろうかと、途端に不安になってしまった。
「当たり前でしょ? 予定あるって言われたらこっちから押しかけようと思ってたよ」
あ、少し声に怒りが滲んでる。
「ご馳走作るから、期待してて」
あぁ、やっぱりそうなるよね、いつも作ってもらってるから、たまにはって思うけど、そこらのレストランよりも美味しいんだもんなぁ、美穂さんの料理。遠慮してもきっと気分を害するだろうから。
「楽しみにしてます、料理はお任せするとして、出掛ける場所は任せてもらっていい?」
美穂さんに楽しんでもらいたい。というか、私が美穂さんと行きたい場所があるんだ。
「ん、いいよ。どこ?」
「それは……」
「当日までのお楽しみ? それもいいね」
うまくアテンド出来たらいいな。
「久しぶりじゃないですか、ああ、この時期はレースですか?」
この店のオーナーは顔馴染みで、趣味のマラソンの話もしている。
「そうなんです、やっと来れました。お詫びに……じゃないけど、今日はゲスト連れて来ましたよ」
「いらっしゃいませ、まずは体験でいいですかね?」
興味津々な表情の美穂さんへ、料金の説明や注意事項を話し始めていた。
美穂さんを連れて来たのは、クライミングジムだ。最初はトレーニングのためにと思って通い始めたが、続けるうちに楽しくなっていて、だから美穂さんにもやってみて欲しくなったのだ。あわよくばこれから一緒に通えたら最高だけど、それは美穂さん次第だから。
最初なので、オーナーにいちからレクチャーしてもらう。私も隣でしっかり復習をーーと思ったら「見本見せてよ」と二人の視線がこちらに。
「えっ」
まずは、ボルダリングの基本のラインを登る。
「ああやって、同じ色のを掴んで登ります」
オーナーの説明が下から聞こえていた。
そんなに難しくはないので、注意事項だけを確認して、美穂さんも登り始めた。
「いいね、達成感あるから楽しいね」
休憩スペースで、水分補給をする。
「さすが美穂さん、運動神経良すぎ」
「センスあるかな?」
「自信ありって顔に書いてあるけど?」
美穂さんはクスクスと笑って、バレたかと言う。
「ルートクライミングの方、空いたからやってみる?」
オーナーが声をかけてくれた。
「はぁい」
こちらはロープを使って、高い場所まで登る。クライマーとビレイヤーという二人一組で行う。二人ともハーネスを付けてロープで繋がれる。ビレイヤーは下でクライマーの安全のためにロープを確保するのだ。
「じゃあ、まずは見本を」
ニヤけながら私を見るオーナー。
「ですよね」
オーナーにビレイをお願いして、一本目。以前にも攻略したルートへ。久しぶりだから緊張する。美穂さんもいるから格好良いところを見せたいし。
「ほっ、やっ、っしょ」
前半は順調だ。上へ行くにつれ難しくなる。こっからどうするんだっけ、時間をかけると腕の力も使うから、とにかく上へ上へ。なんとか一番上のホールドへ両手をかけてゴール。
「お願いしまーす」
声をかけて降ろしてもらう。
「ありがとうございました」
オーナーにお礼を言う。
「なかなか良いね、次はこっち?」
「いや、少し休ませて」
心臓もバクバクしてるし呼吸も整えなきゃ。
「じゃ、お姉さんいきます?」
「はい、是非」
美穂さんの目は輝いていた。
交代しながら、それぞれ三本ずつ登った。ルートの難易度は違うけれど、美穂さんはスイスイと登っていて、その後ろ姿もまた美しい。
私の三本目は、今までゴール出来たことがないルートに挑戦して、見事に玉砕した。ホールドを掴み損ねた。ロープがあるから落ちることはないけど、あぁ情けない。
「あとは、二人でやれる?」
いつまでもオーナーをお借りするわけにもいかないか。
「はい、ありがとうございました」
「紗奈ちゃん、こう見えてビレイも得意だから安心して」
こう見えて、は余計じゃね? って思ったけど、美穂さんが不安ならこれで終わってもいいかなと思っていた。
「どうします?」
「登ってみたい」
美穂さんはやっぱり目をキラキラさせて言う。
ハーネスは正しく装着されているか、ロープは正しく結ばれているか、お互いに自分の目で確かめる。
「不安じゃない?」
再度、美穂さんに確かめる。
「お願いします」
美穂さんの登るスピードに合わせてロープを張っていく。ひとときも目を離さずに見守る。危なげなくゴール。
「降ろしてくださーい」の声を合図に、体重を後ろにかけつつ、ゆっくりとロープを緩める。
「ふぅ、気持ち良かった! ありがとうございました」
ペコリとお辞儀をするので、私もつられて頭を下げる。
「美穂さん、余裕なんだもん。すぐに抜かされちゃうなぁ」
「紗奈が下から支えてくれたからだよ」
その言葉に嬉しくなる。
「もう一本行く?」
「行きたいけど、もう腕の筋肉が限界みたい」
「そうだね、無理はしない方がいいから、今日はこの辺にしますか」
会計は私が払うと宣言し、受付へ行った。そして美穂さんの会員登録も済ませた。カードを渡すと驚いていたけど、喜んでくれたので、これからも一緒に通えそうだ。
「美穂さん、今日も美味しかったです、ありがとうございました」
どれもこれもが本当に美味しくて、今日はケーキまであるし。
「でしょ? 愛情がたっぷり入ってるからね」
クリスマスということでワインを飲んだ美穂さんは、素面の私まで赤面させるかのような事を言い出して、そしてケラケラ笑っている。
やだ赤くなってる、可愛いんだからなどと言いながら、目はトロンとしていて。
適度な運動の疲労感と、美味しいご飯と少しのアルコールで、今すぐにでも眠ってしまいそうだ。
「もう、ベッド行きますよ」
ここで寝落ちされたら、連れて行くのは大変だ。
「やだもう、紗奈ってばエッチなんだから」
「なっ、そんなこという人にはしませんよ」
手を添えれば素直に立ち上がったので、そのまま寝室へ連れて行く。
「えぇ、なんでぇ」とか何とか言ってたけど、ベッドに寝かせれば静かになった。
私は片付けを済ませてからベッドへ潜り込み電気を消した。
すっかり寝入っていると思ってたが、モゾモゾと動いている。
「起きてるの?」
「ん、久しぶりなんだもん、寝ちゃったら勿体無いよ」
私は思うところあって、最近は泊まる事を控えていた。
「寂しかった?」
「うん、いつも寂しいよ」
ごめんなさい、もう少しだけ待ってて。心の中で謝りながら、向き合って腕枕をする。
「今日はずっと一緒にいるよ」
囁くように宣言をする。
「今日はね……ロープ……」
「え、縛るの?」
「違う、紗奈と繋がってて嬉しかったの」
「ああ」
「命綱でしょ」
「そうだね、絶対離さないって思ってた」
「紗奈……好き」
「美穂さん……んん」
自然と唇が合わさった。
「美穂さんのお尻、綺麗な形だよね」
チュッチュと唇を啄みながら言うと。
「え、なに?」と睨まれた。
「ハーネスが似合ってた」
「そんなところ見てたの?」
褒めたのに怒られるなんて……見てたけど。
「もう」
ガバッと起き上がり、体勢を変えられ、美穂さんが覆い被さってきた。
「今日はお仕置きだね」
見上げた美穂さんの顔は、いつもより綺麗で、何をされてもいいと思ってしまうのだった。
口を塞がれて、舌を絡められる。ジュルッと音がして美穂さんが飲んだのが分かる。今夜はやけに大胆だな。
私の手は自然とお尻を撫でていた。
「そんなにお尻が好きだったの?」
「おっぱいも好き」
胸も触ろうとしたらサラッと避けられた。
「今日は私が」とパジャマの中へ手が入ってきた。
「ひゃ、冷たっ」
「ふふ、あったかい」
お腹から徐々に上へと触ってくる。さわさわと軽く触れる程度が、逆に私の感度を上げているみたいでビクビクしている。
「ね、脱いで」
一旦身体を起こし、脱がせにかかる。
「美穂さんも」
お互いに脱がせ合う。
美穂さんの胸は、私と違ってかなり豊満で、どうしても目がそこへ行ってしまい、そして触れたくなる。
それを察知した美穂さんは、私の手を握り返す。恋人繋ぎだ。そして口付けを交わす。
「「あっ」」
二人揃って声をあげた訳は、一瞬二人の乳首が触れたから。
私はさっきのサワサワでしっかりと勃っていて感じてしまった。
「こっちもキスしたね」
今度はわざと、触れされる。
「んっ」
「可愛い」
美穂さんは、今度はいきなり乳首を口に含んだ。もう片方は指で摘んだり撫でたり。
「あぁぁ……ん」
電流が走ったような刺激に声も出ちゃうし、身体の芯も熱くなってくる。
「美穂さんのも」
触りたくて、手を差し入れる。
柔らかくて揉むたびに形を変える。
美穂さんが身体を浮かせてくれたので、先端の敏感な場所に触れることが出来た。
「んっ」
美穂さんの身体がビクッと跳ねたことで、私への刺激も強くなって、私も感じる。
「一緒に……感じよ」
「久しぶりだから感じやすいみたい」
美穂さんの高揚した顔が近づいてきてキスをする。綺麗だ。
「溜まってたんだね」
と言うと顔を歪ませた。その顔も好き。
「そういうこと言うんだ」
見つめられたまま、美穂さんの手は下腹部へと伸ばされ、一気に敏感な場所を探し当てる。
「紗奈だって感じてるじゃない」
「……っ、もちろん……感じまくり……あっ」
「やらしい顔してる」
今日は言葉でも攻めてくる。
「一緒がいい」
私も美穂さんの感じている顔を見たくて、手を下の方へ動かす。背中からお尻へ、形の良いお尻を堪能してから前方へ移動させる。
「美穂さんも凄い……」
濡れている。
攻められている同じ場所ーー最も感じる場所ーーを私も攻める。
見つめ合ってた視線を、ふと逸らされた。それを合図にキスを求めた。
いつもより激しく口付けながら、ほぼ同時にお互いの中へ指を沈めていく。
上も下もクチュクチュという水音が漏れる。
呼吸が苦しくて息継ぎをする。
「美穂さ……激しっ」
「紗奈だって……」
「もぉ……やっ」
「イキそ?」
「ん......美穂さ......んも」
美穂さんも気持ち良さげに腰を動かす。
ロープはなくても、二人は確かに繋がっている。出来ればこのまま繋がって、そして溶け合ってしまいたい。そんな事を考えながら。
「美穂さん......はぁっ……いぃぃ」
「あっ、紗奈......私も」
ほとんど同時に高みへと昇っていった。
「紗奈、ありがとね」
今度は逆に腕枕をされて、髪を撫でられている。
「何が?」
「クライミングジム、楽しかった。また行こうね」
「もちろん」
「お正月はやってるのかしら?」
「ああ……そうだ、美穂さん」
「ん?」
言い辛かったけれど、お正月は帰省する事を伝えた。だから一緒に年越しは出来ないことを。もっと早く言うべきだったけど、なかなか言い出せなくてごめん。
「そっか、そうだよね。うん、楽しんでおいで」
言葉ではそう言ってくれたけど、寂しそうな表情で胸が苦しくなる。
だから、もっと触れたくなったんだ。
「美穂さん、舐めていい?」
「はい?」
抵抗される前にスルッと移動した。
美穂さんの脚の間へと。
「なに? イったばっかり......だめっ、はっ、ぁん」
速さが肝心だから、何を言われようが辞める気はない。
膝を立てて顔を近付ける。美穂さんの敏感な秘所へ。
「ふぁぁぁ、んぁ、紗奈ぁぁ」
声が大きいのは、やっぱりイったばかりで敏感になってるからだろうか、ジュルジュルと舐めあげれば、また切ない声をあげる。
「紗奈……のも、欲し......」
「え?」
「一緒が......いい」
驚いて見れば、その大好きな顔で懇願されて子宮の奥がキュンとなった。
だから、恥ずかしいけど体勢を変えた。美穂さんも舐めやすいように。
自分をこれほどまでに曝け出すことが出来るなんて思ってなかった。今までの私は、どこかで少し壁を作っていたから。素の自分を受け入れてくれる優しい人。
いつまでも一緒に、心まで繋がっていたいと思える最愛の人。
メリークリスマス!
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