遺書

音澤 煙管

わたしの場合……




書き遺すと書いて、

「イショ」と読む。


何も死ぬ間際とは限らない、

ココもソレに成る。


その時、その時間に

言い表せなかった事や。


対面した者たちへの、

思いをそのまま遺す。


日記や日誌、日報などは

自らの行動を記し残すだけ。


責任ある者は、

そんなものなど残さない。


また、

遺すと残すは違うことだ。


食べ残しなどしない教えで育った、

自分は思い遺しだらけだろう。


正直に生きて居ても、

遺すことは沢山ある。


誰にも教わらず自らの目と手で、

ココにソレを遺して居る。



死ぬ間際とは、

既にこの世に意思は無い時で。


その時はもう遅いだろう、

遺体はソレまでの証だけ。


死人の遺物はコレに成る、

だから今書き遺した自分が在る。


遺物は書物、

意識は空虚、

遺産は何も無い、

意味はソレまでの妄想、

遺伝は分身の自分、


遺伝子が遺せと言う時、ココに

先人たちへ感謝と敬意を遺す……


コレがわたしの遺書である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遺書 音澤 煙管 @vrymtl

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ