幕間Ⅲ

初恋

 お隣同士だから、仲良くしてあげてね。


 ちょっとだけお兄さんなんだから、しっかりね。


 最初に会った時、大人たちはそんなことを言っていたけど、正直彼女は俺よりずっと大人だった。ずっと色んなことを知っていた。そして、ずっと成長していた。


 そんな俺よりもずっと凄い彼女は、いつも俺のことを助けてくれた。


「××。ここ、分かんないんだけど」


「分からない?ここはね。こうやって…………こうして…………こうすれば解けるのよ」


「わぁ……凄い」


「分かった?」


「うん、分かった!ありがとう」


「どういたしまして。分からないことがなんでも聞いてね?」


 自分よりも凄くて、ちょっとだけ「女の子として」成長してる彼女にいつしか俺はドキドキするようになっていた。好かれたい。嫌われたくない。そんなことを考えるようになっていた。多分、あれがきっと初恋なんだと思う。


「これ、あげる」


「いいの?でもこれって……」


「いい!あげる!」


「ありがとう……嬉しいな」


 そんな。むしろこっちのほうがありがとうって言いたいんだ。そうやって笑顔で、楽しそうにしてくれるだけで俺は……僕は嬉しいんだ。


 だから、ちょっとだけ張り切りすぎちゃった。いつだって男の子はやんちゃで、ちょっと馬鹿なんだ。女の子みたいに繊細な心なんて持ってなくて、気を引かれるためにわざと嫌がらせをしたりするんだ。相手に反応してもらえるだけで嬉しいから。


 だけど、そんな「ちょっとしたやんちゃ心」は、時に取り返しのつかないことを起こしてしまうんだ。そう、あれは確か…………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る