19.目隠しがあったら完全にそういうプレイ。
一番大きな浴槽につかり、顔を覆いながら、
「もうお嫁にいけない……」
「あんた別にお嫁にはいかないでしょ……」
やかましいわこのお子様。アヒルさんをぷかぷか浮かべやがって。そんなやつに俺の気持ちが分かってたまるか。
最初の内は良かったんだ。
まずは頭から洗っていく、ということで初めにシャンプーとリンスをしてくれたのだが、ただわしゃわしゃっと泡立てたりするだけではなく、しっかりと隅々まで丁寧に洗ってくれていたし、マッサージもしてくれていた。「お痒いところはありませんかー」なんて聞いてくれたりもして、ちょっとした美容院の様だった。
問題はその後だ。
頭をしっかりと洗って、流し終わり。さあこれから体を洗おうという段になって、段々と不穏な空気が漂ってきたのだ。
初めのうちはまだ良かった。腕やら背中やらを丁寧に洗ってくれていて、このころには正直「さっきはちょっと酷いことをしたかな」と、一度跳ね飛ばしたことを後悔してきていたのだ。
が。その洗う部位が局部に至ったとき、ものの一分前の思考を思いっきり投げ捨てることになった。
背後から聞こえる「
正直また跳ねのけようかとも思ったが、彼女にはなんの悪意もないのは分かっていた以上それも出来ず。それ以前に「わざとやってる?」と聞きたくなるくらいの巧妙な手つきで、一番敏感な部分をあえて触らないで逆に意識させてみたりと、夢野が男性だったらほぼほぼ犯罪か変態の域に達した動きで、変な気持ちにならないようにと必死に心の中で「性的欲求とは無関係なもの」を思い浮かべ続け、それでもやっぱりどうにもならずに、最終的には素数を数えだし、途中から素数でも何でもない数もカウントするレベルまで脳内がぐちゃぐちゃになったところでやっと、
「終わったよ」
という声が聞こえて、開放されたのだった。別に男性器がむくむくと元気になるわけではないのだから、興奮してもいいのかもしれないが、それをすると、思いっきり夢野を押し倒してしまいそうな気がしたし、夢野がそれを一切拒まずに受け入れそうな気配も感じていたので、何とか押しとどめた。違うんだ。それは、違うんだ。俺が求めてるのはそういうことじゃないんだ。いや、そういうこともしたくないわけじゃないけど。
「はぁ…………」
ため息。
人間というのは実に愚かな生き物だ。いくら百合が好きで、自分が愛されることに興味が無いと言っても、やっぱり興味があるものは興味があるのだ。上の口では何を言っても下の口は正直なのだ。
そんなため息を聞いていたのか、
「どうした?やっぱり始業式だけっていっても初日だから疲れた?」
「大丈夫、大丈夫です。それより、ここのお風呂、凄いですね」
なんとも雑な話題転換だ。大丈夫っていう言葉は、大丈夫じゃないから出てくるものなのであり、実のところ全く大丈夫でもなんでもないのだが、そういった細かいことには頓着しない彼方は、
「だろ?私も最初はびっくりしたよ。一年もいると慣れたもんだけど、やっぱでかいよな」
そうですね。非常にでかいと思います。
違う。
そういうことじゃない。
風呂の大きさの話だ。
のぼせているのだろうか。なんでも風呂でうとうとするのは脳に十分な血液がいっていないから、気を失いかけているだけだなんて話もあるらしいし、頭が働いていないのかもしれない。
そんなことを考えていると
「でもいいお風呂ですよねー。またここでお姉さまとゆっくりできるなんて幸せです」
「はは、私も嬉しいよ」
「お、お姉さま……!」
やめてあげて。
この状態でそんな興奮させると、後で鼻血を出すか、のぼせて脱衣所でゆでだこになるかの二択だと思うから。
「……
訳:お前は邪魔だからどっかいけ。
うーん、嫌われてるなぁ。まあ、当たりまえだとは思うけど。
彼女の脳内では、お姉さまこと彼方とルームメイトになるっていう妄想が繰り広げられてただろうからなぁ。蓋を開けてみればよく分からないモブがクラスメートになってれば、そりゃ敵視もするよね。
ただ、そんな彼女の胸元は悲しいまでに直線を描いていて、平原そのものだった。本人に言ったら殴られそうだけど、ちょっと頭が冷静になった気がした。
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