幕間Ⅰ
途中
「これでよし、と」
真っ暗闇に近い空間に一人残された女神は大きく伸びをして、
「んー……これで今日の仕事は終わりっと。いやぁ、めんどかったなぁ今の。なんかよくわかんないから、願望系は全部脳内から出力にしたけど、まあ、大丈夫でしょ。いざとなったら細かな設定は後からいじれるしね。取り合えずきゅうけーい」
椅子に深々と腰かけてふっと天を仰ぐ。その視界には漆黒以外のものは何一つ映りはしない。小太郎のサポートを含めてやらなければならないことは山積みだが、ここには時間や場所と言う概念はない。じっくり休んでから取り掛かるとしよう。
「それにしても60年以上差があるってどういうことよ」
女神は思わず資料を再確認するが、やはり正規の寿命までは60年以上の時間がある。明らかに早めに死に過ぎている。
『もしもーし』
脳内に響く声。名前を尋ねるまでもない。友人のものだ。
「どうしたの?」
『いやー、もうお仕事終わったかなぁーって』
「終わったわよ。そっちは?」
『え?うーん……えへへ♡』
「えへへ、じゃない。しっかりやりなさい」
『はーい、これからやりまーす……あ、そうだ。そっちにさ、寿命よりすっごく早く死んじゃった子、こなかった?』
「来たわよ。それが?」
『その子ね、まだ〈途中〉なんだって』
「え……」
〈途中〉
その言葉が意味するところなんて一つしかない。
それは、
『いやぁまさか自分の友人にそれが回るとは思ってなかったよー……ごめんね。直接かかわる子には事前にこの情報を渡しちゃいけないってことになってるから』
「それは……知ってるけど……え、っていうことは、彼は」
『うん。佐々木小太郎。彼は〈途中〉──要するに別世界で過ごすことが大前提に織り込まれた子。だから、』
少しの間があき、
『──ここからが彼にとって本当の試練、かもね』
そう、言い切った。
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