第2話 昼休み

転校生が来てから数週間経った、教室の友達グループ陣営に変化はなく彼女も俺と同じぼっちになった

と言いたいところだが、男子は話しかけたいが遠目で見るだけにしているという、いわゆる高嶺の花みたいなポジションの女子を自分と同じと言えるほど俺は神経太くもない


昼休みになりボッチの俺に居場所はないのでそそくさと教室を出て行く


人気がない空き教室に移動し弁当を広げる

「やっぱ一人は落ち着くな」

もりもり食べていたら教室の扉が開かれた、なんとあの転校生が入ってきたではないか

俺は気が動転して心の声が漏れてしまった

「え?なんでお前こんなところにいるの?」

発言した瞬間しまったと思ったが時すでに遅し

「貴方に説明する必要があるのかしら?」

やはりというかなんというか素っ気ない返答をされた

「そりゃそうか、悪かったな」

…………

まぁ多分教室だとジロジロ見られるうえにコソコソ噂話をされるのがストレスで人気が無いここにきた、といったところだろう

静寂の中二人で黙々と食べ続ける

教室だとガッツリ観察してるがこうして二人きりでは流石にバレるのでチラ見に抑えた

何故かこんな昼休みが日課になってしまった


数日経ったある日、あっちから話しかけてきた

「貴方は何か私に聞きたいことがあるの?」

「は? なんで?」

「貴方、教室だとジロジロ見てくるし今もチラチラ見てくるから何か聞きたいことでもあると思うのが普通でしょ?」

「正直に言えば気になるが、お前教えてくれそうにないからこうしてチラチラ見てる」

「そう、ならジロジロチラチラ見るの控えてもらえるかしら、不愉快で仕方ないから」

「わかった、次から気をつけるよ」

「本当に理解したの?」

「見るなと言われたら見ないさ」

「そういった男子の誰一人としてチラ見をやめなかったのだけれど」

「じゃあ賭けをしないか?明日昼休みになるまで俺がお前の方を見なければ俺の勝ち、見たらお前の勝ち、勝った方は負けた方になんでもいう事を聞かせるというのは」

「いいわよ、その賭け乗ったわ」

冗談で持ちかけたら通ってしまった、まぁいいかどうせ暇つぶしだし

「じゃあ明日はよろしく」

「よろしく」

俺は心の中で「決闘!」と叫んでいた




翌日の昼休み

俺はいつも通り空き教室で弁当を食っていたら、これまたいつも通り宇佐美がやってきた

しばし静寂が訪れ、いつも通り昼休みが終わるまで続くかと思われたが宇佐美によって破られた

「それで私に何を要求するつもりなの?」

「は?」

「昨日の賭けの件よ、今日確かに見なかったからあなたの勝ち、何を要求するつもりなの?」

「あ〜〜、そういえばそんな賭けしたな、別にいいよただの冗談だし」

「そうはいかないわ、あなたは勝者、ならちゃんとそれ相応のものを受け取るべき」

「変に律儀だな、じゃあおっぱい揉ませて」

「無欲かと思ったら性欲に忠実ね」

「そりゃお前みたいな見た目はいい奴に言うこと聞かせるなんてそうそうないからな、今後の人生で二度と味わえないものを欲するのは当然じゃないか?」

「そう言われれば納得できるわ」

「別に嫌ならいいぞ、貰えるなら貰うの精神で言ってるだけだし」

「人の胸をついでみたいに言われると腹が立つのだけれど」

「実際ついでだからな、クラス一の美人の胸を揉む、なかなか優越感に浸れそうだ」

「美人………流石にそんな事を許すわけにはいかないわ、他のことにしてちょうだい」

少し顔を赤くしてそっぽ向きながら言ってきた、ちょっと可愛いと思ってしまったのは秘密だ

「あ〜、じゃあ授業ノート見せてくれ、どうせお前頭いいからノートも綺麗なんだろ?」

「他人のを見たことがないから自身のが綺麗と保証できないけれど」

「それでもいいよ、俺もそこまで綺麗な字じゃないから汚くても気にしない」

「それなら問題ないわ」

「おっし、じゃあそれでよろしく」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


やはりというかなんというか、宇佐美のノートは綺麗で読みやすく、わかりやすかった

「サンキューここわからなかったんだよな、ようやく理解できたわ」

「そう、それは良かったわ」

「じゃあ明日は古典のノートよろしく、どうせ明日授業あるし」

「いいわよ、それはいいけど、また賭けをしないかしら?」

「はい?」

「賭けよ賭け、負けたままは性に合わないの」

「負けず嫌いなんだな、いいぞ、で、お題は何にする?」

「そうね、明日の天気なんてどう?」

「じゃあそれでいいや、俺は雨にジュース一本賭ける」

「私は晴れに明日の弁当のおかず一品賭けるわ」

「賭け成立だな、じゃあふれふれ坊主でも作っておくか」

「ふん、そんなものなんの意味もないからやめたほうが懸命よ」

「賭けで一番重要なのは勝つか負けるかじゃない、勝った時のことを妄想する過程の方が楽しいもんだ、故に楽しみ方は人それぞれ、お前に指図されるいわれはない」

「ふーん、一理あるわね」

「だろ?」



そんなこんなで翌日の昼休み

カエル達の鳴き声と雨が地面を叩く規則的な音が交わり落ち着く音色を奏でている、その音を聞きながら食べる戦利品の卵焼きはなかなか化けるものだ

宇佐美があーんしてくれたらもっと美味かったと思う

「納得いかないわ」

「何が?」

「なんでまた私が負けるのよ」

「そりゃお天道様に文句言ってくれ、俺に天気を操る力はないしな」

「………せっかくてるてる坊主を百個作ったのに」

何やら小さい声で呟いていて俺には聞こえないが、勝者が敗者に過度に干渉するのはご法度だからな、我関せずを貫く

と思って見ていたら宇佐美が急に顔を上げた

「次よ!次こそ勝つわ!」

「お〜別にいいぞ、何にする?」

「前回は私が決めたから次は貴方が決めていいわ!」

「そうか〜なら明日の朝どっちが先に教室に着くかでどうだ?俺は100円賭ける」

「成る程受けて立つわ、私は500円よ!」

「なんで俺の5倍なんだ?」

「意気込みの違いね」

「まぁ本人がいいならいいけどさ」

「Bed成立、あとはshowdownするだけね」

なんかオサレなことを言い出した、テンション上がりすぎて完全にキャラ崩壊しているが、もしかしたらこっちが素なのかもしれない



翌日の昼休み

俺は戦利品の500円玉をコイントスをして遊んでいた

「納得いかないわ」

「何が?」

「500円も賭けたのになんで100円しか賭けてない貴方に負けるのよ」

「まぁ量より質というやつじゃないか?」

「質で言っても100円玉より500円玉の方が上だと思うのだけれど?」

「あ〜、じゃああれだ、高い金額を賭ければ勝てるってもんでもないだろ?」

「確かにそうね」

「さて、次はどうする?お前が何に賭けるか決める番だろ?」

「次は明日の朝どっちが早く教室につけるかで勝負よ」

「了解です」



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