第10話眠れないから部屋を出たら聴いちゃいけないものを聴いてしまった

私たちは今、べつの都市の近くにある、ダンジョンに来ていた。

ここから魔物が湧きだしてくるという話だったけど、


シオン曰く、魔の気配が強いからもっと準備をした方がいいだろう、とのことだった。


「ここは少し時間掛かりそうだな」

イグニス様が言った。

「そうね。しばらくあの街に滞在することになるわね」

リアナも頷き、私たちは一度街に戻った。



その夜、私は何となく眠れなくて、もう夜も遅かったけど宿の個室部屋を出て、中庭で外の空気でも吸おうかなと思って廊下を歩いていた。すると。

「ん……」


イグニス様の部屋の中から、何か声が聴こえた。


なんだろ?と思って、ちょっと立ち止まって耳を澄ませてみたら、


「あ……」



……なんか、イグニス様とリアナの声っぽいんだけど、どうも苦しそうというか、吐息混じりな聞いたことないような声が漏れている。


いや、これはさすがに分かった。



……えーーーっ!!?ちょっと、あの二人ってそういう関係だったの!?


ぜんぜん分からなかった!

確かにリアナってイグニス様にボディタッチ多めだなーとは思ってたけど。


初めて聞く他人、というか仲間のそんな声に、顔を赤くしながら固まっていると、

「どうしたんだ」


後ろから声がかかった。


「ぴょっ!?」

びくぅっと肩が跳ねる。


「シ、シオン、なんで、こんな夜更けに」

慌ててかすれた小声で答えると、


「なんか眠れなくてな。お前こそ、こんなとこで何してんだ?」


って聞かれて、「う、うん、ちょっと」なんてやり取りをしていたら、気付くと部屋の中からの音はぜんぜん聴こえなくなっていた。


あー……私たちの話し声に気付いて、途中でやめちゃったのかな……って何考えてるんだ私は。


「ここイグニスの部屋だな……お前ーーーー」

ちょっと、シオンの雰囲気が変わった。

なんだ?なんか、物騒というか、怒りを含んだ声というか。


あっ……ひょっとして、私がさっきの声盗み聞きしてたの、気付かれた?

ああああ。もしかして喜んで盗み聞いてたとか思われてる?


ち、違うよー!たまたま、通りかかったら聴こえただけなんだよ!


「ちょ、ちょっと待ってシオン!ここじゃなんだから、こっち来て!」

とにかく、この扉の前で長々とやり取りするのはやめよう!

たぶんもう、私たちの話し声、ぜんぶイグニス様たちも聞いちゃってるから!


「ーーーー分かった」

シオンも答える。


私たちはとりあえずシオンの部屋に行った。だって他に夜中に話せるちょうどいい場所ないんだもん。


シオンは認識阻害のローブを乱暴に脱いで、ベッドにぼすんと座った。私はテーブルのとこのイスにちょこんと座る。


うわーーー……。シオンの顔見たら、なんかやっぱ怒ってない?こわー……。


「ーーーで、お前はイグニスに夜這いでもしようとしたのか」

「はえっ!?」

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