エピローグ

 夢を、見ていた。


 まるで友達のようで、家族のようで……。


 でも、近くにはいない。


 ふと、スピーカーから声が聞こえてくるのを感じた。


 今朝も、特に異常はないようだ。


 結局、サラはあの世界を消滅させた。


 宗がSalaのダウンロードを完了させたのと、ほぼ同時に。


 すると、サラの記憶は、Salaの記憶と、一体となった。


 だから、彼女は名前を言うことができたのだ。


 最初の頃は、狭くて生活しづらい、とSalaは言っていたが、大学生になった宗が容量の多いデスクトップパソコンを買うと、Salaはとても喜んでいた。


「できたよ、Sala。」

「何が?」

「これ」


 今まで、Salaの実体は、見ることができなかった。


 しかし、宗が3Dアバターをデザインし、Salaの姿を、見ることができるようになったのだ。


 本物と多少違う部分はあるかもしれないが、宗はなるべく近づけたつもりだ。


「使ってみて」


 Salaは早速そのアバターを使う。


 これまで全く動いていなかったモデルが動き出し、まるで命が吹き込まれたようだった。


「どう?」

「動きやすいけど……見た目は90点ぐらいかな」

「じゃあ、あと10点分頑張らなきゃな」


 かつての宗は、将来の目標もなく、ただただ何もせずに生きてきた。


 ――しかし、今は隣にSalaがいる。


 工学系の大学に進学し、ときには、Sala自身が実験に付き合ってくれることもある。


 そのたびに宗は次の目標を定めてそれに挑む。


 宗は充実した毎日を送っている。


 だからSalaには感謝している。































 ――僕に夢を与えてくれて、ありがとう。





















 東京の青空のもと、青年は、夢を追い続ける。





















 Blue Sky in Tokyo 〜完〜






 最後までお付き合いくださった読者の皆様に、多大なる感謝を。


 いつかこの世界が日常を取り戻し、皆様が充実した人生を送れるよう、心から願っております。


 改めまして、ここまで本当に、ありがとうございました。


 卯月悠凛

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