第9話 スサノオノミコト×喧嘩

 時刻は朝の6時、まだ、夜が明けて僅か、鳥のさえずりもまばらに聞こえる程度の早朝。外にはまだ誰も出ていない。しかし、そんななか、走っている男が一人、その男は、若干10代後半のように見える整った爽やかな顔立ちとは、裏腹に、首から下は筋骨隆々で、高校生のそれとは思えない巨漢だったのだ、それもただ大きいだけでなく、余分な肉が一切ないのだ、あふれ出るのは筋肉の身、脂肪が一切見当たらない。しかし、走り終えてしまうと、しぼんでいく風船のように、一気に筋肉は消えた。


「ただいま、ってまだ姉貴は寝てるか」


 男は、台所に向かい、冷蔵庫を開ける、牛乳パックをそのまま飲み、ものの10秒足らずで飲み干してしまった。その後も、冷蔵庫を覗き込み、あるものを見つける。


「これは、プリンがあるではないか、もらうとしよう」


 プリンを取り出したかと思うと、それもまた、ぺろりと一口で飲み込んでしまった。


「ふう、美味しかった」


 あーあ、今日もいいランニングができた、やっぱり運動してないと、俺って感じがしないからな。姉貴は、まだ起こさなくていいか、朝ごはんでも作っておこう。 

 男は、再び台所に向かい、料理を始めた、すると、部屋の奥から女性がやってくる、きっとおいしい匂いに連れられてきたのだろう。女は若く、お人形さんのようにきれいな顔立ちで、透き通った目をしている、髪は見事な黒髪だ。


「あ、姉貴、おはようございます、ご飯もうちょいかかります」


「おお、猛、ありがとさん、お姉ちゃんは今日もオンライン授業なので、絶対部屋入って来るなよー」


 女の名前は、須佐藍すさらん》猛の実の姉だが、神性はない、いたって普通の人間だ。


「分かってるよ、自分も今日は勉強しないといけないので、ずっと自分の部屋にいますから」


「おう、いい弟を持ったものだ、お姉ちゃんは誇らしいぞ」


 藍は、自慢げに、猛が友達の間でイケメンと言われているなど、猛の自慢話を我がことのように話す、しかし、機嫌がよかったのもつかの間、欄はあることに気付く。


「あれ、猛、これなに、このカップ、空なんだけど」


 料理を終えた、猛は、皿にフレンチトーストを盛り付けて、藍のもとに持って行く、しかし、藍は怒り心頭なのだ。


「どうしたんですか、姉貴」


「どうしたも、こうしたもあるかよ、私のプリン食ったろ、高かったのに!もう知らない、馬鹿」


 藍は、皿の上のフレンチトーストを一つだけ取って自室にこもった。完全に塞ぎ込んだのだ。猛は唖然とする。しかし、すぐに正気に戻った猛は、大急ぎでコンビニに向かい、似たようなプリンを片っ端から買い、また爆速で戻ってきた。この間僅か、5。。

 これでいいだろうか、姉貴にとってそんなに大事なプリンだったとは、早く渡さないと。 

 いそいで、藍のいる部屋に向かい、ドアを恐る恐るノックして申し訳なさそうに話しかける。


「姉貴、これで、許してもらえるとは、思っていません、しかし、部屋から出てきていただきたいです、プリン買ってきました」


 藍は何も返さず、無言で拗ねているのだ。困った猛は次の手段に出た。


「あぁ、このプリン美味しそう、うん!美味い、なんて美味しいプリンなんだ、姉貴、食べないなんてもったいないなー」


 直後、部屋から、慌てる音が聞こえ、藍が飛び出してくる。


「ず、ずるい!私にも食わせろ!」


「やった、作戦通り、捕まえた、姉貴」


 猛は、出てき藍を抱きしめるようにして、そういう。

 姉貴、ほんとに可愛いんっすから、振り回されるこっちの身にも、なって欲しいな、まぁそんなこと言えないけど。


「バカ、離せ」


「ダーメ、朝ごはんちゃんと食べるまで離さないっすよお姫様」


 そうして、この姉妹は、平和な休日を過ごした

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神様の日常 しのののめ @Rainn_

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