【KAC20224】文化祭で何をする?
「あれ? 何聞いてるの、佐藤くん」
ある日のこと。
今日もふたりきりの図書室で、佐藤くんがイヤホンを着けながらメモを取っていた。
音楽を聴きながらメモ? と思ってこっそり覗いてみたけれど、どこか違うみたい。
「漫談だね」
佐藤くんがイヤホンを外して答えた。
「漫談好きなんだ?」
意外な趣味だな。
全然知らなかった、と思っていたら
「いや、今日初めて聞いてみたんだ」
と返ってきた。
「なんでまた漫談?」
「実はさ――」
どうやら今度ある文化祭のステージで、演目が足りないと実行委員の友達に相談されたらしい。
そこで何か出来ることがないかと考えた結果、お笑いでもしたらどうかと思ったみたい。
一人でするなら漫談か落語。
そこでまずは漫談から勉強しよう、という流れだそうだ。
「……すごいね。全校生徒の前でなんて、私には無理」
「僕も念のためくらいの気持ちで考えただけだし、あまり本気にはしないでね?」
佐藤くんは肩を竦めた。
「まぁ別の手段を考えてみるよ。カラオケ大会でもすればきっと誰か歌うでしょ」
漫談は僕には向いてなさそうだ、と零す。
内心、ちょっと見てみたかったけど、今から急に漫談を始めたところでウケを取るのは難しいだろうと思う。
そこでふと思い出した。
「そうそう。文化祭と言えば、この図書室でも何か企画やらないといけないんだけど、何をすればいいと思う?」
最後に――何かいいアイディアない? と付け加える。
推薦図書コーナーを作るか、人が集まりそうならビブリオバトルを開催するのもありだろうか。
うーん、と考えていると、佐藤くんが口を開いた。
「さあ……ちょっと思いつかないけど、すくなくとも漫才はやめた方がいいだろうね」
「さすがにするつもりはないけど……どうして?」
急になんだろう。
さっきの話の続きだろうか。
「『ふたりきりの図書室』で漫才をやっても、肝心の観客がいないだろ?」
「……佐藤くん。漫談よりブラックジョークの方が向いてるんじゃないかな」
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