第2話 人形の生まれた経緯

 ☆  ☆  ☆


 私は人形。中世ヨーロッパの職人によって形作られた。


 なぜ私を所有する人は所有欲の塊なのだろう。


 その次の所有者は金の亡者、その次の所有者は色欲の亡者。


 私を持つ人に憎しみが募る。


 そして遊んでくれない人には呪いを使って手放してもらった。


(ねえ 遊んで。

 私の頬に埃が付いてる。

 ドレスにも。

 綺麗にしてよ。


 またこの扉を開けてよ。


 そして私でまた遊んで。

 一緒にお人形遊びしようよ)


 幼女は母親に尋ねた。


「ねぇってば。

 おばあちゃんからのプレゼント!

 去年の誕生日にもらったじゃん!!

 ドレス着たお人形ってどこにあるの?」


「あれはもう捨てたわよ。随分汚くなってたし」

 幼女は食い下がる。

「どうしてももう一度みたいの。遊びたいの!ねぇ!」



(ほら思い出してくれた。早く私のところへ来て!)


「押入れのどこかにやったかねぇ」

 遊んでくれた幼女は、期待を胸に私を探してくれる。

 なんて幸せなことでしょう。私に触れてくれたらいいのに。


 あなたは押入れに詰めてある道具を懸命に探していく。


「懐かしいな。こんなゲームもあったっけ」

 駄目だよ。私に行き着く前に寄り道しないで!


 ようやく暖かい光が見えた。

 早く綺麗な私に戻して……


「え~。こんなんだっけ!」


 長女のレミはこんな悲鳴を上げた。


「どうしたの?」


「この人形ってこんな埃まみれで首とかおなかとか壊れてたっけ? 不気味」


「覚えていないの? レミがこんなにしたのに」


「……わかんない」

 素直で可愛い私の子供。

 だけれど誰に似たのかとてもわがままで癇癪持ちなのだ。


 二、三歳のころから何か投げることが多く、

 どうしてと問いただしたことなど数知れない。


 そんな手のかかる子が唯一興味を示したのが、いま不気味と言った人形だ。


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