第11話明るくなる5
この日が来るのはあっという間だった。正直憂鬱だった。昨日のうちに細かい掃除を済ませて茶菓子も用意した。これから家族になるとはいえ最低限度の礼儀はいるだろうし見た目も軽く整えた。
さてどんな人が来るのか…
向こうの家族は昼過ぎに来てうちで顔を合わせるそうだ。向こうの家族は父さんが迎えに行くらしい。どうやら父さんはもう向こうの家族と会っているらしい。
ガチャ、とドアが開く音がした。
「ただいまー連れてきたぞー」
父さんのお気楽な声、こっちはそれなりに緊張もしているというのに、憂鬱な気分を内にしまって玄関に向かう。
玄関に行くと
「え、」
思わず声が出た。玄関にはおそらくこれから義母になるだろう女性と義妹になるだろう女の子がいた。そこまでは予想してた。驚いた理由は義妹になるであろう女の子が金髪美少女であったのだ。今までテレビや雑誌で見てきた女性の中でもトップクラスだった。
あまり異性に対して興味を示さない冷でさえ少しときめいてしまうくらいには。
「こんにちは、冷さんこれからよろしくお願いします」
そう柔らかい口調で言ったのは義母になるだろう由香子さん。この人も相当な美人だった。
「どうも、えー、こちらこそよろしくお願いします。由香子さん」
かなりぎこちない挨拶だったがまぁいいだろう。
由香子さんは「ほら」と金髪美少女の背中を叩く
「みりあ、、、です。よろしく、、お願いします、」
かなり緊張した口調で自己紹介してくれた金髪美少女、みりあ、、、?珍しい名前だな、しかも染めていると思われた金髪もよく見ると髪染めには見えない、だが顔つきは明らかに日本人よりだった、
「?その髪、色染めじゃないよな?」
気になっていたことを声に出してしまった。すぐにそれが失言だったことに気づいた。
2人の顔が少し暗くなったのだ。いやみりあの方は少し憎悪に見えた。
すぐさま父さんに顔を向けると答えが返ってきた。
「クォーターなんだそうだ」
そして理解した。例のDV夫がハーフだったのだと。
「すいません」
「いえ全然いいんですよ。もう終わったことなので」
そして沈黙が訪れる
、、、
「さぁ立ち話をあれだし、中に入ってくれ」
沈黙を破ったのは父さんだった。
「お茶入れてくる」
俺もそう言って逃げるようにその場を動いた。
俺はお茶を淹れて買ってきた菓子を出す。
そして席に座る。いつもと違い俺と父さんが隣で正面に由香子さんとみりあさんがいる。
普段は昔の名残で父さんと俺は正面だった、理由は簡単母さんが父さんの隣だったからだ。
「綺麗にしてるんですね!」
由香子さんが口を開く
「急いで片付けたんですよ」
「いやお前普段から綺麗だろ、照れんなよ」
「照れてないし、実際昨日片付けしたのは本当だよ」
「可愛くないなー、それに比べてみりあちゃんは可愛げあってこいつとは比べ物にならんなー」
そう言ってみりあさんに話を振る
「いえ、そんなこと…ないですよ…」
こうして正面で見るとみりあさんの美少女っぷりがよく分かる、モデルとかでも十分やっていけるだろう。
そのまま会話は続いた。主に父さんが話を振って会話を繋いだ感じだ。父さんはそこらへんのコミュ力はほんとすごいと思う。初めて会う相手なのに気まずい空気がほとんどなかった。
数時間が経った頃「お、もうこんな時間か」
と言い出した。
確かにもうすぐ夕方だ。
「よし、由香子さん、行きますか。」
「そうですね」
「ねぇ父さん、住む場所云々はどうするの?」
「?、あ、あれ〜?言ってなかったっけ?」
由香子さんとみりあさんが少し驚いたように父さんの方を向く
「何?どういうこと?」
「あーそう言えば言ってなかったな冷、今日からみりあちゃんもここに住む」
「…はぁ、父さんと由香子さんは?」
「父さん達は今まで通り仕事で飛び回る」
つまり突然兄弟だと顔合わせをし、男女2人きりで生活しろと?
無理だ、めんどくさい
しかし、みりあさんの方を見ると父さんを呆れながら見てた、つまり知ってたのだろう。俺だけが知らなかったと、ここで俺が嫌がれば、もっと話がめんどくさくなりそうだ。
冷はここで嫌と言うのを話が長くなりそうで面倒そうと逃げたのだ。その結果もっと面倒で憂鬱な日々が待っていると言うのを、理解していたのに。
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