第5話その時空は赤かった3
大会2日目、今日も早見さんの車で会場まで送ってもらった。今回の会場は割と近めなので移動時間が少なくて助かるものだ。やはり遠いだけでも面倒になるものだ。
大会2日目は各ブロック優勝者がトーナメントで順位を決める。最初はAブロック優勝者とBブロック優勝者が戦うのでCブロックの俺は、惜しくも負けてしまったサラと観戦席にいた。無名の美人プレイヤーとやらのお手並み拝見と言ったところか、
2日目は、ステージで配信されながら行われる。入場も演出があり、実況の人が大きく拡声された声で名前を呼ばれ、プレイヤーが入る、そう言ったものだ。
実況の人の声が音楽と同時に始まる。
『GW大会、準決勝!対戦カードはーAブロック優勝、無名の女性プレイヤー、yumiー!』
言い終わると同時に、女性が出てくる、その瞬間大喝采が起こった。
、、、だが俺だけは違った。
「…赤羽有美だよな、なんで、」
そう口に出してしまった。
「師匠なんか言ったっスか?」
「いや、なんでもない」
すぐに冷静に戻る。
あれは間違いなく、同じ高校、同じクラス、隣の席の赤羽有美だ。プレイヤー名がyumiで名前と一致しているのは珍しいが確定だろう、普段と違い長い髪の毛を結びポニーテールになっていてちゃんとゲーマーらしくなっている。
いや正直問題はそこじゃないか、俺、朝香冷がレインと同一人物であるとバレる方がめんどくさい。、今は普段の高校での姿とはかなり違う格好で雰囲気もかなり変わっているからそう簡単にはバレないとは思うが、ふとした瞬間にバレないとも限らない、声も少し変えておくか、
軽く咳払いして「あー、あー」と喉を触りながらひさしぶりに声を作る。
「師匠どうしたっスか?」
「いや、なんでもない」
「え、師匠声どうしたっスか」
「気にするな」
「わかったっス」
冷の声は、いつものだるそうな声はではなく、明るく優しい声になっていた。
これで見た目、声も冷とレインは結びつかないだろう。この声はレインの時にインタビューとか相手に好印象を持ってもらいたいときに使う声だ。
と言っても普段だるそうに低めな声で喋っているのに対して、明るく、少し声を張った程度のものだ。そんな大したものでは無いが印象は変わるのだ。
俺がそんなことを考えてるうちに、試合は進んでいた。しばらくして赤羽が決勝進出を決めた。
「悔しいけど、やっぱり強いっスね」
「確かにな」
「師匠なら勝てますよ!」
「その前に準決勝だよ、行ってくる」
「頑張ってください!」
サラの声を聞いて立ち上がった。
その後準決勝は勝利し、決勝進出を決めた。
そして、決勝戦、赤羽と対面しても俺が冷であることがばれている様子はなかった。俺は少しほっとしながら、試合に集中した。
そして試合は、辛勝という形で俺が勝った。試合内容としては、序盤から終盤まで俺の劣勢だったが、最後に癖を見抜き大逆転をした。それにより会場は大盛り上がりを見せ、実況・解説も「さすがランク一位」と大会を終えた。
「師匠優勝おめでとうっス!」
「レインさん、おめでとうございます」
「ありがとうございます、」
さすがに疲れたため、喋り方もいつも通り、暗くなっていた。
「やっぱりさすがに師匠っスね!最初は負けちゃうかと思いましたけど、あの大逆転は燃えたっス!」
「まぁ、最後に癖が見抜けたから勝てたけど確かに危なかった」
「お疲れ様です、そろそろ夕方ですけど、もう帰りますか?」
「トイレ寄ってくので、先行っててください」
「サラもまた」
「はい!お疲れ様です」
トイレに向かう途中、ガラス張りの通路で、今最も会いたくない人物と会ってしまった。yumiこと赤羽由美だ。無視するわけにもいかず、「お疲れ様です」といってそのまますれ違おうとしたら、
「待って」
と止められてしまった。
その時赤い夕日が窓越しに入ってきて、赤羽が妙に神秘的に見えた。
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