第2話 夜は明ける
夜更かしとは、今日に満足していない者か、明日を拒絶するものがする事だ。そして、その結果、明日後悔すると知っているのに。
例え夜明けまで起きてようと、寝ていようが、全人類平等に朝は訪れるのだ。寝る事で明日を健康に迎えるか、夜更かしをし、その場を楽しみ、明日後悔するか。
今を楽しめなんて言ってる人は皆後者を選ぶのだろうか。
そんな事を考えながら、いい加減うるさいアラームを止めて、ベットを降りた。
朝の支度を済ませた冷は、学校に向かった。
もうすぐ二週間が経とうとしているが、正直クラスメイトからは根暗とか陰キャと言う立ち位置が確立していた冷だった。
「おーい冷!おはよう!」
そんな、冷にも話しかけてくれるのは、荒木 夕哉、いわゆる誰とでも仲良くなれるタイプの陽キャである。
「おはよう 荒木」
そう眠そうに返すと
「相変わらず眠そうだな。ちゃんと早寝早起きしてるかー?」
「荒木は朝なのに元気すぎ、ほら教室着くぞ」
そう会話を切って夕哉は「おはよー」と大きな声で教室のドアを開けて行った。クラスメイト達の視線は一斉に夕哉に集まった。
そんな中俺はすぐに席につき本を読み始めた。隣の席の赤羽はイヤホンをつけていた。赤羽は非常に美人で長い黒髪が人目を集めるので、話しかけたい男子は多いが、イヤホンをつけているため、話しかけにくく、俺とは違う意味で孤立していた。
しばらくして担任の夏夜先生が教室に入ってくると赤羽がイヤホンを外した。その時スマホがちらっと見えた。
「あ、、、」
つい声が出てしまった。
「どうしたの?」
不思議に思った赤羽が声をかけてくる。
「いや、なんでもない」
すぐに平静に戻して答えておく。
「そう」
スマホには<ヘイト>と言う文字が見えた気がしたため驚いたが、見間違いだろう。
その後夏夜先生の号令によって、朝のHRが始まった。
学校が終わり、家に着いた頃電話が鳴った。スマホの画面には、早見 雪(はやみ ゆき)と表示されていた。冷のプロゲーマーとしてのマネージャーである。
「もしもし、早見さんどうかしたんですか?」
「もしもし、レインさんまだ高校でしたか?今大丈夫ですか?」
レインというのは、俺のプロゲーマーとしてのハンドルネームだ。まぁ名前の れい(冷)にん をつけただけだが。
「はい、今家に着いたところなので問題ありません。それで、どうしたんですか?」
「もうすぐゴールデンウイークでしょ、そこで大会が行われるんだけど、でる?」
「でますけど、情報遅くないですか?」
「あー、えーと、、、」
「伝えるの忘れてたんですね」
「ごめんねーそういえば忘れてて、、、」
「別にいいですよ。もう慣れましたよ、で場所はどこですか?」
「酷いなー、えーとね、確かレインさんの家からそこまで離れてない所でしたよ。位置情報送っときますね」
「そこは間違えないでくださいね」
「さすがに大丈夫だって、用はこれで終わりだから、またね!」
そう電話を切ってしまった。大会か、割と久しぶりだな、練習するか。
しばらく一人で練習していたら、同じチームのメンバーであるチョコレートさんからメッセージが来た。かなり気さくな男性で、ゲームの実力も高く、大会で結果も残しているプレイヤーだ。メッセージには「一緒に対戦しませんか?」と書かれていたので、「いいですよ」とメッセージを返したら、すぐに通話に招待された。
「こんばんはー久しぶりですね!」
と夜にしては元気な声で挨拶された。
「こんばんは、お久しぶりです。」
そう淡々と返す。
「そういえば、レインさんは、ゴールデンウィークの大会出場されるんですか?」
「はい、そのつもりです。チョコさんも出られるんですか?」
「いえ、今回はスルーする予定ですね。まだあまり仕上がってないので、8月に備えようかと思いまして。」
そう8月にはかなり大きな大会があるのだ。そこに備えるプレイヤーは多く、そこでの結果が、日本ランキングとして一年間記録されるのだ。
「そうですか、では今回の大会前の練習相手は、お願いしますね。」
「もちろん!でも8月は負けませんよ?」
そういって対戦を始めた。
3時間程対戦した後一旦休憩しようと言うことになった。
「やっぱりレインさんは、強いですね!立ち回りが安定していて、羨ましいです。」
「チョコさんも強いじゃないですか、ワンチャン狙ってくるプレースタイルはヒヤヒヤするので心臓に悪いです、特にこれが大会なら余計に怖いですよ」
「ありがとうございます、そういえばレインさんは、今年から高校生でしたよね。部活なんかは、入るんですか?」
「入らないつもりです。ゲームの時間削りたくないので」
そんな他愛のない会話を楽しみ、対戦を再開して、しばらくして、終わりになった。
ゴールデンウィークの大会当日、レインは問題なく勝ち進んだ、、、そう問題はなくベスト4まで進んだ。ただAブロックの勝者が、プレイヤーとして全く無名であり、冷が知っている人物であったことだけが問題だった。普段とは違い、長い黒髪は結んでおり、ゲーム用と思われる、メガネをしていて、私服は、初めて見たが、かなり動きやすそうな服ながら、とても似合っており、美人を際立たせており視線を集めていた。
「…赤羽有美だよな、なんで、」
そう、高校での立ち位置とは似合わない、そんな印象の相手が、たった今決勝進出を決めた。
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