朝
はす
第1話 朝
夢を見ていた気がする。幸せな夢だった気がする。そんな夢から現実に引き戻すように不快なアラームの音が響いた。朝だ。さっき眠ったばかりのはずなのに気づけば日は上がって外は明るくなっていた。煩わしいアラームを止め、憂鬱な気分のまま顔を洗い、髪を溶かし、朝食の準備に入った。準備と言っても、昨日コンビニで買ってきた物を出すだけなので、すぐに済んだ。料理はできないわけではないが、面倒くさがりな俺には朝からなにか作る気分にはなれないのだ。
「本当朝は憂鬱だ」
と誰に言うでもない独り言を、ため息をつきながら高校の制服に着替え、イヤホンをつけ、音楽を聴きながら、家を出た。
今日は入学2日目、俺、朝香 冷(あさか れい)は陰の気質のため、俗に言う陽キャのノリについていけず幸先の悪いスタートを切っていた。
まぁ、もともと多人数はあまり好きではないからそれでも構わないのだが、授業内でグループ活動や2人1組なんかで溢れて目立つのは流石にごめんだ。
「はぁー、ため息が出るな」
なんて歩いていると教室に着いた。入学2日目とは思えないほどグループのようなものが出来ていってるように見えた。そしてまた、ため息をついた。
自分の椅子で陰キャらしく本を読んでいると、教室に少し背の高い女性が入ってきた、担任だ。教卓の前に立つと、
「はーい席に着けーホームルームを始めるぞー」
そうすると生徒たちは、各々の席に戻り始めた。全員が戻った頃、
「今日は簡単な自己紹介を、行ってもらう。まず私から、私は一年間君達の担任の伊藤 夏夜(いとう かよ)だ。一年間よろしく」
そう言って出席番号順に自己紹介するよう先生は指示した。
俺は2番か、名字が朝香ということもあり1番になることが多かったが隣女子の方が早いらしい。
隣の女子が立ち上がる。
「赤羽 有美(あかばね ゆみ)です。趣味は読書です。一年間よろしくお願いします。」
拍手が起こり俺に視線が集まる、俺は席を立ち上がる。
「朝香 冷、趣味は、、、特に無いです。一年間よろしくお願いします。」
と棒読みでそう言うと、何も思ってないだろう拍手が起こった。そのまま次の人が立ち上がった。
「荒木 夕哉(あらき ゆうや)です。趣味はスポーツ、みんなと仲良くしたいです!一年間よろしくお願いします!」
と元気よく笑顔で言い切った彼に盛大な拍手が送られた。
小さな声で「イケメンだ!」とか「かっこいいー」と聞こえたが、確かにとても整った顔立ちをしている。そんな風に見ていたら、こちらに笑顔で答えてくれる。性格までイケメンらしい。
そのまま次々と自己紹介が進んでいくが、これ、まともに他人の名前とか趣味覚えている人いるのだろうか。そんな風に考えてるうちに最後の1人が終わる。
「よし、全員終わったな。皆一年間仲良くな!」
そうして俺の高校生活が始まった。
「やっと終わった、、、疲れた」
やっぱり学校は大変だ、人間関係もうまくいく気がしないしさっさと家に帰ろう。
家に入り、好きなパーカーに着替え、椅子に座り、パソコンに向き合う、ヘッドホンをつけて、ゲームの電源をつけ、コントローラーを持って準備完了。
「ふぅー日課終わりー」
毎日コツコツやることが重要だと思ってる冷は、軽く2時間ほどプレイしヘッドホンを外す。
そう俺はプロゲーマーだ。元々好きなゲームの大会で、実力がついてきた頃大会に出てみたら優勝。事務所に勧誘されプロになった。まぁ、周りに言って回るつもりも無いが。
「カップ麺でも食べるか」
そう言ってお湯を作って、3分待ち、カップラーメンを食べ、無駄に広い風呂に入る。
一通り日課が終わったら、後は寝落ちするまでスマホをベットで過ごす。
明日を憂鬱に思いながら寝落ちする。
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