すべてがゼロになる
「おぬしも死ぬがいい」
大悪魔は嬉々として俺を指さす。
直後、空から斧が降ってきた。
暗黒のドームごと両断しそうなサイズの斧である。
ちょっと避ける挙動をとってみる。
すると斧の先端が追尾するように動いた。
これも命中率100%のアーティファクトをのようだ。
凄まじい速さでせまる分厚い刃。
避けられないのなら受けるしかないか。
「はは、諦めたか勇者」
「はい。避けられないみたいなので」
斧が俺の肩に物凄い速さで叩きつけられた,
ダンジョンを揺らすような激震と、舞い上がる土埃。
すべてが晴れる。
斧の先端は、俺の皮膚を1mmだけ破り、そこで止まっていた。
大悪魔の表情から一瞬で余裕がなくなる。
「なんじゃと……」
「もう終わりですか」
「舐めるでない、人間」
大悪魔は何かをしようとし、直後、俺は素早く接近して、『
「ふにゃぉぁああああああっっっ?!!!!」
大悪魔はたわわに富んだ乳房を押さえ、股を隠すように手を当てると、高揚した眼差しで、睨みつけてきた。
ただ、気持ち良くなった直後なので、覇気はなく可愛い感じになってしまっている。
「な、な、なんだ、この、このすけべな勇者め……っ、魔神相手にこんなどすけべ破廉恥極まりない技を使うなぞ……っ! んんっ♡ やめろ、感じるなわらわ、感じたら負けぞ!」
「はっはは、スケベだなんて。ただのマッサージですが」
腰が引けてる大悪魔へ間合いを詰めて、今度は、『
大悪魔は身体をくねらせながら、喘ぎ声を闇に響かせて、暗黒のドームのうえで濡れに濡れる痴態をさらした。
まだ昇天しないか。
なかなか骨のある痴女だ。
「屈辱だ……っ、ひぃ♡ あぅ、こ、こ、こんな、恥辱を、ぁぅッ、味合わされるなどッ、ぅぅん♡ くそくそ、感じるなわらわの身体……! んんっ!」
地面のうえでビクンビクン震えて、未だ止まらない快感に腰をくねらせている。
「すこしレベルアップし過ぎましたか」
「っ、そ、そうか、勇者のもつ補正のせいで、ここまでの力を……っ、ひぃぎ♡ んんっ」
大悪魔は羞恥に顔を赤く染めながら、なぜか勝ち誇ったような顔になり「はは、お前を倒す方法がわかったぞっ! んんっ!」と、腰を震わせる。
芽吹さんとエージェントGにラスボスを倒す瞬間を見せてあげるために『
「あ、おはようございます、加納さん」
「ミスター・加納、ありがとうございます」
もはや慣れた感じで、起きあがる2人。
絶句する大悪魔。
「マッサージ、なんとデタラメな能力だ……神の奇跡の真似事まで……。だが、油断したな、勇者、隙だらけぞ!」
さっきからビクンビクンしてる大悪魔は強気にそう言うと、両手をパンと胸の前で叩きあわせた。
赤黒い波動が膨張して、ドーム全体を包みこんだ。
波動にあたった瞬間、俺たちのなかで何かが砕けちり、同時に魂のようなキラキラした光が一気に溢れでてしまった。
「超一級アーティファクト『勇者殺し』、おぬしらの負けぞ」
光は空へと帰っていく。
俺たちの身体から致命的なナニカが失われたと悟った。
「今のは……もしかして、経験値……?」
「その通りぞ、勇者。んっ……♡」
大悪魔は気を取り直して、厳粛な顔つきになる。
「まさか、勇者たちに与えたステータスを消滅させたというのか、大悪魔!!」
「察しが良いな、結社のエージェント。召喚された勇者なんて、レベルさえなければ雑魚ぞ。200年前に考案し、復活したら使おうと思っていたのをすっかり忘れておった」
「加納さん……っ、これはやばいですよ、わたしのスキル全部なくなってます……!」
「ステータス」
俺はつぶやく。
────────────
加納豊
レベル0
HP 3,999/4,000
MP 500/500
補正値
体力 0
神秘力 0
パワー 0
スタミナ 0
耐久力 0
神秘理解 0
神秘耐久 0
装備品
『追跡者の眼』
『下僕の手記』×10
『7人の騎士』
『無限外套』
『岩竜の魂』
『握撃グリッパー』
───────────
なんという事だ。
「死ぬがいいぞ、勇者」
気がついた時。
目にも留まらぬ速さで黒い拳がせまっていた。
襲って来る衝撃。
真正面から大悪魔に俺は殴り飛ばされた。
「加納さんッ!!!」
「ミスター・加納ッ!!」
頬に残るズキズキとした痛みが、ただのマッサージ師に戻った俺にひさしぶりの痛みを教えてくれた。
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