分業とはかくも素晴らしい
10階層までの探索許可を手に入れることができた。
結晶ダンジョンはチュートリアルダンジョンのような洞窟系とは違って、上へ上へと登って行く塔系ダンジョンらしい。
外側から見えていた青い水晶の山は、それ自体がダンジョンだったのだろうと推測できる。
「高さから推察される階層はだいたい30階層〜60階層くらいだと言われているんですよぉ」
チュートリアルダンジョンよりは浅い。
俺たちは2階層へと上がる階段を登り始める。
ちょっと長めな階段を登りきると、床も壁も天井も水晶で覆われた通路へ出てきた。
1階層を見た時にも思ったが、巨大な氷山をくり抜いてつくった迷路みたいである。
この迷路が人が足を踏み入れるたびに変化するというのだから不思議なものだ。
「それでは皆さん引き続きよろしくお願いします」
俺はサングラスの位置を直して、足跡を追いかけた。
足跡の主人はちょっと大きくなったクリスタルコロガリムシ氏である。
最初の1匹は丁寧にマッサージすると決めている。
床を這いずっているところを上からガシッと押さえて揉みしだき、クリスタル攻殻を砕く勢いで肩たたきコースを堪能していただき、最後にカカトで踏みつぶす。
「いや、加納さん、それは絶対にマッサージとは違うなにかですよね?」
「マッサージですよ」
クリスタルコロガリムシが光の粒子に変化して命の循環のなかへ還っていく。
「マッサージってなんなのでしょうか……」
「流石は2階層のクリスタルコロガリムシですね。カノウさんを持ってしても指先一つでダウンという訳にはいかないんですね」
サドゥは険しい顔でそう言った。
別のクリスタルコロガリムシが復讐しに来た。仲間をマッサージされ昇天させられ目がメラメラと燃えているのが見える。
のでひと思いに疲労回復秘孔を突いてあげる。
無事、光の粒子となって昇天する。
「まだ余力はありますよ」
「か、カッコいい……流石です、カノウさん!」
「一体どれほど鍛えれば指で2階層のモンスターを倒せるようになるんでしょうねぇ」
「カノウさんはきっとS級冒険者クラスの英雄なのですっ!」
「練習すれば誰でも出来ます」
俺はそう言って、魔力クリスタルを拾って、ルーヴァに手渡した。
「むぅ、加納さんばかりずるいです」
「それじゃあ、俺のほうでモンスターを見つけるので、芽吹さんがやっつける係やりますか?」
「っ、いいですね、それで行きましょう!」
と言うわけで、俺が足跡を追いかけ、視界にモンスターが入った瞬間、芽吹さんがマチェーテをぶん投げ、モンスターを黒い液体に変え、俺が魔力クリスタルを拾いに行くルーチンワークが始まった。
芽吹さんの投擲有効射程は30m近くあるので非常に狩りが楽になった。
なるほど、分業とはかくも素晴らしい。
ただ、芽吹さんの投擲攻撃は、気力とスタミナの消費が激しいようだ。
気力というのは、ステータスに表示されない隠しパラメータであるが、意外に重要なようだ。
気力が落ちてくると、各種ステータスにマイナス値が付くらしく、またさらにスタミナの消耗が激しくなる。気力を低下しすぎると以下のようなステータスになる。
──────────────────
レベル65
HP 829/850
MP 295/669
補正値
体力 750 (-150)
神秘力 559 (-150)
パワー 600 (-150)
スタミナ 397 (-150)
耐久力 556 (-150)
神秘理解 459 (-150)
神秘耐久 457 (-150)
ユニークスキル
≪重刃の殺し屋≫
スキル
ウォーターボール lv2
致命の一撃 lv2
キルカウンター lv2
アタックカウンター lv2
──────────────────
「はぁ、はぁ、ちょ、ちょっと休憩を──」
泣き言を言い出したのでゴッドフィンガーlv3を16発打ち込んで復活させる。
「ふにゃあああああー!」
「復活しましたか?」
「なんでそんなこと平然とできるんですかッ?! 鬼畜ですかッ?!」
ちなみにゴッドフィンガーがlv3になっているのは、さっきレベルアップしたからだ。
獣モンスターを6体倒した分の経験値、ギルドの前で男たちを気持ち良さで痙攣失神させた分の経験値、それと1階層分殲滅した分の経験値でようやく1レベルアップだ。
流石に上がりづらくなってきた。
──────────────────
ゴッドフィンガーlv3
消費MP:6
突いた相手の気力と体力とMPを少しだけ回復させる
効果:気力4回復 体力4回復 MP4回復
快楽度10
──────────────────
ゴッドフィンガーlv3はこんな感じだ。
lv1→lv2の時より、上昇値が大きい。
lv3→lv4の時はもっと大きくなる予感がする。
スキルは突破するほどに、加算的に増えていくのかと思ったが、もっと規模感の大きい話になりそうだ。
「あ、3階層への階段なのですっ!」
「まあ、1時間も経っていないのに見つけてしまうなんてぇ」
「流石はカノウさん、もう好きです」
魔力クリスタル回収班のバッグを見やる。
まだ、埋まってない。
我々はさらなる資源を求めて3階層へ上がることにした。
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