ボス:亡国の騎士
石門の中に入ると5つの扉があった。
「1人1つずつってことですかね」
「恐らくは」
最後の試練をまえに5人に挑戦者が限定されるなんてな。
まじでバトルロワイヤルが正解だったのか?
いや、本当の正解はみんなが殺し合いしてる間にさっさと駆けこむことか。
扉に近寄る。
扉にはそれぞれ白い文字で「ボス:亡国の騎士」と書かれている。
左が黄色。右側が赤色。
左から右へグラデーションを描くように色が濃くなっていく。
なにか意味があるのだろうか。
「恐らくボス戦ですね」
「ボスですか……ダンジョンには付き物ですけど、まさか本当にいるなんて」
「それじゃあ、俺は一番右の扉にします」
「うーん、それじゃあ、わたしは左にしますね」
たぶん、このボスが最後の試練になのだろう。
倒せば、次の瞬間には異世界……ってこともありえる。
そして、向こう側で芽吹さんに再び会えない可能性もある。
「芽吹さん」
「はい?」
「頑張ってください」
「っ、はい! そっちも頑張ってくださいね、加納さん」
「向こうで会いましょう」
互いの無事を祈り、扉を押し開ける。
奥には暗い通路が続いていた。
すこし進んで振り返ってみても、もう扉はどこにも見当たらない。
進み続けると、コロッセオみたいな闘技場にたどり着いた。
足場は荒い砂で、端っこのほうに武器が置いてある。
剣に銃にロケット砲になんでもござれだ。どこから持ってきた。
「これが亡国の騎士……か」
闘技場の中央。十字架に磔にされた7人の鎧を着た者たちがいる。
話しかけると、地響きが起こり、囚われていた7人の鎖が緩んでいく。
鎖から解放された騎士たちが、むくりと起きあがり、こちらを見つめてきた。
中にはなにか入っているようだ。ただ生身の人間かはわからない。
動きはまるで人間っぽくはなく壊れた機械人形のようだ。
彼らはスイッチが入ったように機敏に動きはじめると、地面から十字架を引っこ抜くと、それを肩に担いだ。
「それ武器なのかよ」
高さ4m、横2mの馬鹿でかい十字架だ。
騎士たちは身体いっぱいに使って十字架をふりまわし、叩きつけてくる。
ステップでかわすも、余波だけで砂が飛んできてチクチク痛い。
地面にはイエスの右手が深く刺さっている。喰らったらチクチクでは済まなそうだ。
俺は次々襲いかかってくる騎士たちをステップでかわしながら、隙をうかがった。
幸いにも動きは速くない。
よく観察し、体の動きを把握しきる。
そして、その時は来た。
「ここだ」
打ち込むは『
十字架を振り上げた瞬間に、すかさず機関綬のごとき連射で打ちこんだ。
たちまち亡国の騎士が光の粒子に変わる。
その後、騎士たちは激昂したように連携攻撃がいっそう苛烈になっていく。
だが、何のことはない。
もう十分観察できた。
すでに動きは完全に見切っている。
「マッサージ師を舐めるな」
俺は十字架の隙間を縫って、秘孔を突いてが駆けぬけた。
残像を残すほどの速さを解放して、一瞬ですべての亡国の騎士に疲労回復秘孔を打って昇天させきった。
ピコビコピコピコーン!
ピコビコーピコビコピコピコ!
ピコーンピコピコピッコーン!
レベルアップしすぎてちょっとリズムで遊び始めるのやめろ。
騎士が光の粒子に還っていくなか、俺は落とし物がないかを確認する。
地面に突き刺さった十字架に、銀色のネックレスが掛けてあるのに気づいた。
見れば『7人の騎士』とアイテム名が表示されている。
首にかけてみる。
マッチョ、サングラス、ネックレス。
清純なパリピっぽくなっていくのを感じながら「ステータス」とつぶやいた。
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加納豊
レベル249
HP 10,798/10,798
MP 6,902//6,902
補正値
体力 7,798
神秘力 7,402
パワー 7,560
スタミナ 7,007
耐久力 7,179
神秘理解 2,701
神秘耐久 2,653
ユニークスキル
≪肉体完全理解者≫
アビススキル
深淵の先触れ
深淵の囁き
スキル
ゴッドフィンガー lv2
疲労回復秘孔 lv2
装備品
『追跡者の眼』
『下僕の手記』×10
『7人の騎士』
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補正値はちゃんと上昇している。
アビススキルに『深淵の囁き』なるものが増えているな。
指でなぞって詳細を確かめる。
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『深淵の囁き』
消費MP:2,000
十分な熟練度に達したスキルを深淵のチカラで進化させる。
効果:スキルレベルを2→3に突破させる
解放条件:深淵の下僕を2体倒す
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どうやら深淵の作曲家を倒したことで獲得していたらしい。
獲得音が聞こえなかったのは、きっとピコピコうるさかったのと、ミスター・ゴッドの力でチュートリアル会場へ引き上げられていたからだろう。
「ミスター・ゴッド、また深淵アーティファクトを調べて欲しいんだが」
スキルは指でなぞれば詳細がわかるが、深淵アーティファクトについて調べるには、ミスター・ゴッドの力が必要だ。
「……。ミスター・ゴッド?」
呼びかけても反応がない。
どれだけ待っても返事が返ってこない。
なにかあったのだろうか。
まあ、アイテムの効果を知るのなんて急務ではないし後回しで構わないのだが。
俺はほかに見落とした深淵アーティファクトがないかを確認して、闘技場の奥へと進んだ。
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