ゴッドフィンガー
「あ、モンスターが来ました!」
降りるとさっそくモンスターが突進してきた。
ちょっと大きくなってる。3体だ。
芽吹さんはウォーターボールで一体吹っ飛ばし、マチェーテをなげてもう一体屠る。
俺は人差し指をピンと立てて、向かって来たモンスターをタイミング合わせて突いた。
「また、光の粒子に……わたしの殺したモンスターとエフェクト違いません?」
モンスターは普通に殺すとドロドロになって地面に消える。
「マッサージですからね。満足して逝ってるんでしょう」
「突き殺したようにしか見えなかったんですけど」
「波動秘孔マッサージですよ」
「やはり謎ですね……」
ピコーン
ピコーン
またレベルが上がったようだ。
一体しか倒してないのに2レベもあがるとはな。
やはり、満足して逝ったモンスターがたくさん経験値をくれているようだ。
その後、芽吹さんとのレベル差の開きから考察して、およそ死因:マッサージで殺したモンスターからは3倍の経験値がもらえていることがわかった。
「ほかの人たち見かけませんね」
「迷ってるんじゃないですか?」
深度5を探索中にそんなことを思った。
ピコーン
スキル『ゴッドフィンガー』を習得しました。
深度5のモンスターを倒したとき、そんなアナウンスが聞こえた。
ミスター・ゴッドの声ではない。
ステータスを開いて確認してみる。
──────────────────
ゴッドフィンガー
消費MP:3
突いた相手の気力と体力とMPをわずかに回復させる
効果:気力1回復 体力1回復 MP1回復
快楽度10
解放条件:深度5以上のモンスターを指で突き殺す
──────────────────
だから突き殺してるわけじゃないっての。
にしても、俺にしか取得できないようなニッチなスキルだな。
試しに芽吹さんを後ろから突いてみる。
「ふにゃああ!?? 気持ちいい! ……って、いきなり、なな、なにするですか!!」
「気力と体力が回復した感じはありますか?」
完全マッサージ体質は0%に抑えた。
芽吹さんが感じる効果はゴッドフィンガーだけのはずだ。
「なな、何を言って……あれ? そういえば、なんだか気分がよくなったような気がしますね」
なるほど。
俺はゴッドフィンガーを自分に使ってみる。
確かに探索の疲労がなくなっていく感じはする。
快楽度10はデカいな。
俺はこれまでの指圧は快楽度50で固定していた。
完全マッサージ体質解放率1%での最大快楽度が50だからだ。
そこに神秘力とパワーの補正値が加算されて、最終的な快楽度が算出される計算だろう。
もし完全マッサージ体質を2%開放したら、指圧による快楽度をあげられるが、そうすると近くにいる芽吹さんが毎秒気持ちよくなって、色々イケナイ感じになってしまうだろう。
その点、ゴッドフィンガーは優秀だ。
2%開放しなくても快楽度──実質的なダメージを上乗せできるのだから。
これでもっと効果的にモンスターを気持ちよくして昇天させられるだろう。
「深度6の階段ありましたね」
「どうします、降りましょうか、加納さん」
「みなさん、全然追いついてこないですけど」
「うーん、でも、ダンジョンって深度100まであるって話ですし、ここまで来るのにすでに5時間くらいかかってますし、制限時間もありますし……」
芽吹さんが行きたそうにチラチラ見てくる。
現状の難易度にはまったく苦戦していない。
1%の開放率とゴッドフィンガーで余裕もある。
もうすこし降りても大丈夫だろう。
俺たちは深度6へ降りることにした。
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