第10話 猫

 勉強机に向かいながら、私はじっと新聞の切り抜きを見つめていた。古びた新聞記事だ。こうして手に持っているだけで崩れていきそうな危うさがある。

 けれどそれ以上に危ういのは、藤一郎が話した、私の正体だ。

 ……私が、璃子様……。

 思わず身震いが起こった。

 本当なのだろうか? 本当だとするなら、私は……希清様の声に応えるべく、魂殺しをし、その上黒川葵子の体を乗っ取ったことになる。殺された黒川葵子の魂は一体どうなったのか、どこへ行ってしまったのか、私には知るよしもない。けれど、魂殺しの上に体を盗んだとなれば、こんなに罪深い業はない。

 私は再度記事を見つめると、それをそっと引き出しにしまった。

 魂殺し……。

 普通の殺人よりも重い罪。

 それを、私が……?

 考えられない。どうして私にそんな力があるというのだろう。

 私は頭を振った。

 今日一日の授業が終わり、みんなそれぞれ部屋に戻ったり、どこかへ出かけたりしている。寄宿舎は全体的に静かだ。いつもの静寂。けれど、どうしてか、全く世界が違ってしまったような不穏さがある。それは多分、私がそんな気持ちになっているからだと思う。

 私は頬杖をついて、窓の外をぼうっと見つめた。門のほうで白木蓮の木が風に揺れているのが見える。

 そうしていると、不意に扉を叩く音が聞こえた。

「葵子さん?」

 次いで聞こえた可愛らしい声に、私ははっとした。

「はっ、はい!」

 慌てて立ち上がり、扉のほうを向く。するとすぐに、ゆっくりと扉を開けて蓮子様がお顔を覗かせた。

 蓮子様は柔らかに微笑まれて、ちょっと会釈するように首を傾げられた。

「ごめんなさい、突然。びっくりさせてしまったかしら」

「いいえ、そんな! どうかなさったのですか?」

「葵子さん、今、何かしていた?」

「え? いいえ、特に……」

「そう? 時間、あるかしら」

「もちろんです」

「よかった。ねえ、これから、一緒にお出かけしない?」

「お出かけ、ですか?」

「ええ、そう。どうかしら」

 蓮子様の申し出は、ちょうど気分がふさいでいた私にはあまりにもありがたいもので、思わずため息が漏れた。

 私は身を乗り出して頷いた。

「は、はい! ぜひ」

「それじゃあ、門で待ち合わせしましょう。着替えたら、そこでね」

「はい!」

「うふふ、嬉しい。それじゃあ、後でね」

「はい、すぐに行きます!」

 蓮子様が行ってしまうと、私は急いで着替えた。何を着ていこうか迷ったけれど、いくつかある黒のうち、生地の薄いほうを選んだ。

 寄宿舎から出ると、よく晴れた空から降り注ぐ光が少し眩しかった。私は手庇(てびさし)をしながら門へ向かった。門には衛士様が立っていたけれど、蓮子様はまだいらしていないようだった。

 衛士様から少し離れて、蓮子様を待つ。衛士様はじっと前を見つめて立っている。私は足下を見つめながら、少しどきどきしていた。蓮子様とのお出かけは、これで二回目だ。

 暫くすると、芝生を踏んで歩いてくる音が聞こえてきた。そちらを向くと、蓮子様が歩いてこられるところだった。

「蓮子様」

「ごめんなさい。少し待たせてしまって……」

 そう言って、蓮子様は眉を下げて微笑んだ。

 蓮子様は白いワンピースをお召しになり、長い御髪(おぐし)をうなじで二本にまとめられていた。背中に流れる御髪の毛先が、くるんくるんと踊っている。

「髪をまとめるのに時間がかかってしまったの。あまりきちんとまとまらなくて。みっともなくないかしら」

「大丈夫ですよ。とてもお可愛らしいです」

「そう? ありがとう」

「そうして御髪をまとめられると、とても印象が変わって見えますね。素敵です!」

「うふふ。でも、葵子さんのようなまっすぐな髪の毛、憧れるわ」

「え? そ、そうですか?」

「ええ。だって、そのほうが色々な髪型にできるもの。わたし、短くするとすごく変な髪型になってしまって……。伸ばすしかなくって」

「え? でも、蓮子様の御髪は毛先に癖があるだけなのでは?」

「うふふ、これはね、重みで癖が伸びているだけなのよ」

「え? 重みで?」

「そう。このくらいまで伸ばすと、少しは癖をごまかせるのよ」

 蓮子様はおかしそうにくすりと笑った。

 他愛のない話がすごくありがたかった。こうして蓮子様とお話ししているだけで、気が晴れる。お誘いくださって本当によかった。

「それじゃあ、行きましょうか、葵子さん」

「はい」

 私たちは門を離れ、街へ向かって歩き出した。

「どこへ行かれるのですか?」

「あんみつ屋さんへ行こうと思うのよ。この間行ったところとは、別のところ。とっても美味しいの」

「わあ、楽しみです」

「前に葵子さんとあんみつ屋さんへ行って、とても楽しかったから。また行きたいと思っていたの」

 蓮子様は口元に手を当てて微笑まれた。私はその時、蓮子様がお付きの人を誰もお連れになっていないことに気がついた。お出かけの時には大抵誰かをお連れになっているのに、珍しい。

「そう言えば、今日はお付きの方は……?」

「断ったの。今日は葵子さんと本当に二人で出かけたかったものだから」

「そうなんですか……嬉しいです! でも……大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。むしろ、お付きなんて本当はいらないと思うの。みんな、わたしを子ども扱いしすぎるのよ。わたしだって、お友達と二人で出かけるくらい、できるのよ?」

「そうですよね。蓮子様はしっかりしていらっしゃいますし」

「そうなんだから。そろそろ、自立していることを分かってもらわなくっちゃ」

 蓮子様がそうおっしゃるお顔が本当にお可愛らしくて、私は思わず見惚れてしまった。

 あんみつ屋へは、完全に蓮子様の案内で向かう。どのような道を通っていくのか分からないから、私は蓮子様についていくしかない。

 歩いていると少しひとけのない道に入った。両側に民家が続いていて、延々塀が並んでいる。少しさみしい感じのする道だけれど、まだ日が高いのでそこまで寂れた印象はない。

 その道の先に、ふと、黒い人影が見えた。見えたというか、いつの間にかそこに立っていたのだ。塀の上に猫が丸まっていて、じっとそれを見つめているようだった。

 学ラン、学帽、インバネス。見覚えのある秀麗な横顔。

 藤一郎だった。

 ととと、藤一郎!

 私はぎょっとして立ち止まってしまった。

 どうしてこんな所に、藤一郎がいるのだろう。いや、藤一郎は常に私のそばにいるのだから、私の近くに現れたとしても不思議ではない。不思議ではないが、いくら何でも唐突すぎる。

 せっかくの蓮子様とのお出かけなのに、藤一郎が何かすれば台無しになるかも知れない。

 む……無視していこう。

 なぜ猫を見つめているのか知らないが、今ここで藤一郎と関わる必要などないのだ。気配を消さずに姿を現している理由も全く分からないが、無視していこう。……そうしよう。

「どうかしたの?」

 蓮子様は突然黙り込んだ私の顔を、不思議そうに覗き込んでこられた。

「あ、い、いえ、別に……」

「何か見つけた?」

「いいえ、な、何も!」

「そう?」

 その時塀の上の猫がもぞもぞと起き出して、あくびをした。うんと伸びをすると塀から飛び降りてきて、こちらへ顔を向けた。じいっと私たちを、というより私を見つめて、にゃあ、と鳴いた。

 その泣き声に、蓮子様は猫のほうを見た。そして、猫のそばにいる藤一郎にもお気付きになった。

 蓮子様はそのままじっと、藤一郎のことを見つめている。

 今度はその視線に、藤一郎がこちらを向いた。蓮子様と目が合い、何か思ったように目を細める。

 その藤一郎の表情に何を感じ取ったのか、蓮子様は頬を赤くなさってどぎまぎと視線を泳がせた。

 蓮子様はそのまま、動かなくなってしまった。

 今度は私が蓮子様のお顔を覗き込んだ。

「……れ、蓮子様?」

 しかし、蓮子様は何の反応もなさならない。

 立ち止まってしまった私たちの間に、沈黙が流れる。

 そうしていると、猫がこちらに向かって歩いてきた。猫はその間もじっと私のことを見つめている。猫が来ると、なぜか藤一郎まで猫を追ってこちらに歩いてきた。

 ちょ、ちょっと来ないで!

 と思ったが遅かった。猫が私の足下に来て、にゃんと鳴く。そのすぐ後ろには藤一郎。藤一郎はじっと猫を見下ろしていたが、蓮子様がちらちらとその顔をご覧になるので、切れ長の目を蓮子様に向けた。視線かかち合った瞬間、蓮子様は頬を真っ赤になさって下を向いた。

「……ふん」

 と、藤一郎。目を細めているところからすると、蓮子様のご様子が何か気になったようだった。

 どうしてか蓮子様は固まってしまわれたし、藤一郎も今にも蓮子様に何か言い出しそうな雰囲気だ。藤一郎はとにかく口が悪い。蓮子様に何か失礼なことでも言うんじゃないかと気が気でない。

 と思っていると、藤一郎はにやーっと笑った。なぜ笑う。

 私は結局我慢できずに、声を上げた。

「ちょっと、何か用なの?」

「何を言っている。用などあるものか」

「じゃあ、一体何なのよ」

「猫を見に来ただけだ」

「猫?」

 確かに、さっきやたらと猫を見つめていたようだが。

 私はむーっと藤一郎を睨んだ。とにかく、ここにいられると困る。

 その時、不意に蓮子様が私の袖を引っ張ってこられた。

「あの……葵子さん」

「あ、はい」

「ちょっと……ごめんなさい」

「は、はい」

 蓮子様が袖を引っ張るので、私はそれに従って藤一郎に背を向けた。二人で藤一郎に背を向け、こそこそと話す。

「あの、葵子さん……。あの方、お知り合いなの?」

「知り合いというか、まあ、その……」

「あの……あのね、葵子さん」

「は、はい」

「私、女ばかりに囲まれて育ってきたものだから……男の方に慣れていなくて……。その、どうしていいのか……緊張してしまうの」

「そ、そんな! 蓮子様がお気になさるような相手ではありませんよ! 藤一郎なんて……」

「藤一郎……。そう、と、藤一郎様とおっしゃるの」

「い、いえ、様とお付けになるような人間ではありませんから!」

 藤一郎は神隠しであって人間ではないけれど、人型に化けている以上は人間ということにしておいたほうがいい。

 蓮子様は白い頬を真っ赤になさって、何かもじもじと口に手を当てている。

「まあ……。葵子さんは、呼び捨てにするくらい、藤一郎様と近い仲なのね」

「いえ、あの、それは……」私は困って、どぎまぎとした。「あの、本当に、様……と付けるような相手ではないんですよ、蓮子様」

 だって、神隠しだし。

 蓮子様はお顔を真っ赤になさったまま、ちらりと後ろを振り返った。途端に藤一郎と目が合って、またばっと下を向かれる。

 蓮子様が、外見上は男である藤一郎に緊張なさっているのは間違いないようだ。このまま藤一郎にここにいられては、どうにも身動きのしようがない。せっかくのお出かけだというのに、台無しになるかも知れないのだ。

「あの、蓮子様、少々お待ちください!」

 と言うが早いか、私はばっと藤一郎の腕を掴んで、蓮子様から遠ざかった。なぜか猫も私の足下をついてくるが、今はそれどころではない。

「ちょっと、どうしてここにいるのよ!」こそこそと、小声で文句を言う。

「僕がどこにいようと関係なかろう」

「そうじゃなくて、どうして人型で現れているの?」

「別に人型に変化しているわけではない。意識を猫のところへ運んだだけだ」

「はあ?」

「その猫は二十年をこえて生きている。それがお前の気にあてられて異形に化けそうだったからな。様子を見ていたのだ」

「だからって、姿を現していなくてもいいじゃないの!」

「お前は僕の話を聞いていたか? 別に人型に化けてなどいない。意識を運べばそこに僕の気配ができる。それがお前達には人型に見えているだけだ」

「何よそれ。じゃあ、つまり……何なのよ」

「お前は本当に勘が悪いな。要するに今の僕は普通の人間には見えんのだ。お前と二階蓮子にだけ見えている」

「私と……蓮子様だけ?」

「霊感はうつると聞いたことがないか。それは要するに、力の強い人間のそばにいると、素質さえあれば目覚めることがあるということだ。二階蓮子は元々異形や怪異は見えない人間だったが、お前の近くにいることで影響を受けたようだな」

「え……じゃあ、つまり、その」

「とにかく、お前達の見ている人型は僕の本体ではない。ただの気配だ。だから常人にはなおさら見えん」

「ちょっと待って。見えるようになったって、それじゃあ、蓮子様も異形を引く体質になってしまったってことなの?」

「どうしてそういう思考になる。見えるだけなら害はない」

「そう……それなら、いいけど」

 私の足下で、猫がのんきににゃんと鳴いた。藤一郎はそれを見下ろして、にやりと笑う。

「とにかく、今はこいつがどう化けるかが見物だな。化けるまでにもうそれほど時間はかかるまい」

「そ、それもちょっと待って!」

 私ははたと気付いてしまって、思わず身を乗り出した。

「化けるまでもうすぐって……あたし今、蓮子様とお出かけをしているのよ。間近で化けられたら、蓮子様まで巻き込まれてしまうわ!」

「まあそうなるな」

「ちょっと、この猫を追い払って!」

「何を言う。それでは化けるのに時間がかかる」

「それどころじゃないわよ! だって蓮子様が……」

「それが何だ。僕に関係あるのか?」

「猫を追い払わないなら蓮子様を守ってよ!」

「そんなことは知らん」

「れ、冷血漢!」

 本当に腹立たしい神隠しだ。

「少しは助けてくれたっていいじゃないの!」

「異形が現れれば、僕はそれを喰うだけだ。それ以上のことは興味がない」

「人でなし!」

「人ではない」

「何なのよ、もう!」

 私は思わず肩をいからせた。

「あなたって、本当に自分のことばっかりね!」

「それが何だ。僕は異形を隠す現象だと言ったはずだ。それ以上の存在ではない。他のことはしないのは当然だろう」

 私はぶーっとむくれて、乱暴に藤一郎の腕を放した。

「そう。そんなに言うなら私にも考えがあるわよ」

「何だ」

「蓮子様を守ってくれないなら、もうこれ以上私のそばにいられないようにしてやるんだから」

「どうやって?」

「え? それは、その……とにかく、あなたを追い払ってやるのよ!」

「できるのか? お前に? 怪異を祓うなんていうことが」

 私は思わず口ごもって、口の中でうなった。

 確かに、そんな方法なんて知らない。勢いに任せて大口を叩いたが、藤一郎は私に何の考えもないことなど見通しているのか、涼しい顔だ。

 藤一郎はふんと鼻を鳴らすと、にやーっと笑った。

「仮にできたとしても、お前に寄ってくる異形を喰うものがいなくなる以上、お前も身近な者も危険に晒されるぞ。それでも良ければ、そうするがいい」

「な、何て意地悪な人なの!」

「人ではない」

「もう!」

 しかし、藤一郎の言うことももっともだ……。私が異形を引いてしまう以上、それを喰う存在がいなければ私も周りも危険なのだ。

 私はこぶしを握ってふるふる震えた。憤懣やるかたない思いだ。

 そんな私などお構いなしで、藤一郎は猫を見下ろし、次いで蓮子様のほうを見ると、にやーっと笑った。そしてさっさと歩き出し、塀の角に消えた。

 私はその後ろ姿を見送って、思わず鼻息を荒くした。

「く……悔しい」

 藤一郎に全く反論できなかった。

 私の足下には、まだ猫が寄り添っている。のんきな声で、にゃん、と鳴いた。この猫にいつまでもそばにいられると、危険なことになる。藤一郎は化けるのが遅くなるとか言っていたけれど、もう構うものか。

 私はぱっと猫を見ると、しっしっと両手を払った。

「もう、ほら、あっちへ行きなさい!」

 猫はまたにゃんと鳴く。全く離れていく気配がない。

「しっしっ、行ってったら!」

「……葵子さん」

「はっ、はい!」

 猫に夢中になって、蓮子様がすぐ隣にいらっしゃっていたことに気付かなかった。私は肩をふるわせて振り向いた。

 蓮子様はまだ顔を赤くなさっていて、もじもじと指先をいじっていた。

「あの……今の方」

「え? あ、ああ、藤一郎ですか? ご安心ください、もう行ってしまいましたから」

「いえ、その……」

 蓮子様は何か恥ずかしがるようなお顔をなさると、はにかんだように微笑まれた。

「……その、とても素敵な方とお知り合いなのね」

「え?」

 蓮子様は何をおっしゃっているのだろう。私はきょとんとした。

 藤一郎が素敵など、一体どうして。

「え……蓮子様?」

「葵子さんが少し羨ましいわ。うふふ」

「れ、蓮子様……い、いえ、藤一郎など! とても素敵なところなんて見当たりませんよ」

「お顔もお声も素敵だったわ」

 顔。

 そうだ。

 藤一郎は黙ってさえいれば、見惚れる程の美男子なのだ。蓮子様はどうやら、藤一郎の外見にだまされていらっしゃるらしい。……まあ、あんな顔になったのは私のせいらしいのだけれど。

「れ、蓮子様、藤一郎のことはお忘れください。本当に、蓮子様がお気になさるような相手ではないんですから」

「うふふ。仲がいいのね」

「いえ、その……」

 足下で、にゃあん、という声がする。私たちは同時に猫を見下ろした。

「藤一郎様も、猫がお好きなのかしら?」

「え?」

「ずっと猫を見ていらしたわ」

「え、ええと、それは……猫が好きというか」

 食べようとしていたんですなどとは、口が裂けても言えない。

「この猫、先程から葵子さんについて歩いているわね。動物に好かれるなんて、すごいわ」

「いえ、その……これは好かれているのではなくて」

 私の邪気に寄ってきているだけだ。

 蓮子様はしゃがみ込んで、猫を撫でた。

「よしよし、いい子ね。可愛いわ」

「あ、あのー……蓮子様?」

「何かしら」

「今日のお出かけは、また日を改めてということに……できませんか?」

 猫は私から離れていかない。藤一郎も猫が化けるまでこのままでいさせるつもりだ。しかも蓮子様を守ってくれる様子もない。このままでは蓮子様が危険だ。

 私はそう思って、蓮子様のほうを私から遠ざけようと思った。だって今はそれしかない。

 が、私がそう言った途端、蓮子様は悲しそうなお顔をなさって、私を見上げてきた。

「まあ……どうして?」

 お声まで悲しそうだ。私はたじろいだ。

「ええと……その、何だか雲行きが怪しく思えて」

「こんなにいいお天気よ」

「そうなんですが……その、えっと、そう、何だか予感がするんです」

「予感?」

「動物が近寄ってくると、悪いことが起こるんです」

「まあ。でも、動物が近寄るのは徳の高い証拠だと聞いたことがあるわ、葵子さん」

「いえ、私の場合それは違って……」

「葵子さん……わたしとのお出かけ、嫌だったかしら」

「え! そ、そんなことは!」

「葵子さん……わたしね」

 蓮子様は立ち上がった。

「葵子さん、最近元気がないようだったから。何か気分転換にでもなればいいと思って、お誘いしたの」

「え……?」

「だって、何か悩んでいるような顔をしているんだもの。きっと何かあったんだわと思って」

「蓮子様……」

「わたしには話せないようなことかも知れないけれど、せめて気を晴らしてもらいたかったの」

 あまりにもお優しいお言葉に、私は思わず黙り込んでしまった。

 確かに、私はこのところ悩んでいた。しかも蓮子様にはお話しできないようなことだ。私が本当は魂殺しをしたかも知れないなんて、言えるわけがない。蓮子様だけではない、誰にも相談なんてできない。

 そんな私の様子に気付いていらっしゃって、蓮子様は私をお誘いくださったのだ。そんなこととは知らず、私は何て考えなしなことを言ってしまったのだろう。

「蓮子様……申し訳ありません」

「……やっぱり、嫌だった?」

「いいえ。そうではなくて……蓮子様にそんなお気持ちがあることなど知らず、私……」

「ううん、いいのよ。全部わたしの勝手だもの」

「いいえ! とっても嬉しいです。私のことをそこまで思ってくださるなんて」

 私は猫を見下ろすと、ぱっと抱き上げて道の端へ運んだ。地面に下ろされた猫は、じっと私と見つめている。私はその鼻先に人差し指を向けて、よく言い聞かせた。

「……いい、ついてこないでよ。絶対によ」

 猫はにゃんと鳴いた。返事なのか何なのか分からなかったが、私はそっとそこを離れ、蓮子様の元へ戻った。猫はついてこなかった。私はほっとした。一応言葉が通じたということでいいのだろうか。

「参りましょう。蓮子様」

「え? でも……」

「せっかくの蓮子様のお気持ちを、台無しにはできません。ぜひ、連れていってください」

「葵子さん……」

 蓮子様はにっこりと微笑まれた。

「優しいのね。ありがとう」

「い、いえ、お優しいのは蓮子様のほうです」

「じゃあ、行きましょう、葵子さん」

「はい!」

 私たちはようやく歩き出した。猫はやはりついてこない。じっと私を見つめてはいるものの、やはり言葉が通じたのだろうか。化けるのも時間の問題の、二十年を超えて生きる猫は、人の言葉も分かるものなのだろうか。よく分からないけれど。

 蓮子様が案内してくださったあんみつ屋は、民家に挟まれたこぢんまりとした店構えだった。あまり蓮子様のような方がご存じだとは思えないような外観なので、私は少し驚いた。

「ここ……なんですか?」

「ええ」

「よくこんな場所をご存じですね」

「人から教えてもらったの。美味しいんだけど、あまり人に知られていないから、穴場なんですって」

「へえ……そうなんですか」

 店の中に入ると、中はいっそうこざっぱりして見えた。と言うよりも少し寂れて見える。私たちはそれぞれあんみつを頼んで、外の縁台で食べることにした。

 縁台に腰掛けると、蓮子様はどこか嬉しそうに微笑まれた。

「うふふ。こうしていると、華族の娘であることなんて忘れられそう」

「え?」

 そのお言葉に驚いて蓮子様の顔を見ると、蓮子様はそっとまぶたを伏せておられた。微笑んではいるけれど、何かをお考えになっている様子でもあった。

「わたし、本当は……普通の家に生まれたかったわ」

「え……それは、どうしてですか? もしかして、ご家族とうまくいっていらっしゃらないんですか?」

「いいえ、家族のことは大好きよ。お父様もお母様も、姉たちも。二階の家族でいられることには感謝しているけれど、別に華族でなくてもよかったと思うの」

「華族でなくてもよかったというと……?」

「華族の娘だと、特別扱いされてしまうでしょう。特にわたしの家は、裕福な武家華族で……他の皆さんもそれを気にして、わたしを特別に扱ってくれるけれど……わたしには、それがとてもおかしなことに思えるの」

「おかしい?」

「わたし、人って階級じゃないと思うのよ。そんなのは社会が勝手に決めていることだわ。わたしも、家の使用人も、ここのあんみつ屋のご主人も……みんな本当はおんなじはずなんだわ」

「おんなじ……ですか?」

「ええ。おんなじよ。特別扱いされるっていうことは、それに見合う責任を負っているということだけれど、それは何も華族に限ったことではないと思うの。本当はみんな特別で、それぞれ責任を負っているんだわ。だから、階級で人の扱いを変えるのは、おかしいと思うのよ」

「蓮子様……」

「人はみんな平等に特別で、重いものだと思うの。一人一人が大切な存在なんだわって。だから階級で扱いを変えるなんておかしいと思うのよ」

 蓮子様のお考えに、わたしはとても感動した。とても聡明に、人々の平等のことをお考えになっている。そのことはこのような階級社会において、とても得がたいもののように思えた。

「蓮子様は……とても深いことをお考えなのですね」

「深いなんて……。うふふ。自分の扱われ方と、使用人の扱われ方とがあまりにも違うから、それが小さな頃から疑問だっただけだわ」

 はにかんだようにおっしゃって、蓮子様はあんみつをお口に含まれた。

 私はその横顔を見つめて、それから自分のあんみつを見下ろした。自分の扱われ方と、使用人の扱われ方……。私はどうだろうと考えた。私はちよのことを、自分と平等に考えていただろうか。

 ちよは確かに、私にとっては大切な存在だ。何でもしてくれて、どんな相談にも乗ってくれる。とても感謝しているけれど、私と同等に尊いなんて、考えていただろうか。分からなかった。

 しかしそれを考えると、ちくりと胸が痛んだ。人は皆平等に特別ならば、私は、その特別な一人を、魂殺ししてしまったのだ。藤一郎の言っていることが、もし本当なのだとしたら。

 両親は葵子が生まれてくることを楽しみにしていたに違いない。しかしそれを、璃子が、私が、魂を殺して体を奪ったのだ。何という許しがたいことだろうか。

 そんなことが事実だとは思いたくない。でも、事実でないと言い切る証拠も持っていない。

 私の手が止まってしまったので、蓮子様は私の顔を覗き込んでこられた。

「……葵子さん?」

「……あ、は、はい」

「やっぱり……何か悩んでいるのね」

「いえ、その……」

 私はもごもごと口ごもってから、小さく頷いた。

「……はい」

「わたしには、話せないようなこと?」

「……はい。……でも、あの……」

「どうしたの?」

「……人が皆平等に特別なら、その命を奪うことは、とても罪深いことですよね」

「葵子さん……」

 蓮子様は悲しそうなお顔になって、あんみつを持った手を下ろされた。

「とても深刻なことを悩んでいるのね」

「まあ、その……そうかも知れません」

 まさか自分が魂殺しをしたなどと言えず、私は曖昧に返事をした。

 蓮子様は暫くじっと私の顔をご覧になって、それから小さく頷かれた。

「何か、恐ろしいことがあったのね」

 私はそれに、とっさに返事ができなかった。蓮子様に何と言ったらいいのだろう。

 蓮子様があまりにお優しいので、魂殺しの悩みを、まっすぐに言ってしまいたくなった。けれどそんなこと、蓮子様に相談できるはずもない。人殺しと言われたんです、と言ったとしても、お優しい蓮子様のこと、きっと私のことを擁護して否定なさるだろう。私は魂殺しの事実を否定してほしいわけではないのだ。魂殺しの事実と、どう向き合っていいのか分からないのだ。

 私は悩んで、それから蓮子様のお顔も見ずに、頷いた。

「……はい。恐ろしいことがありました。もしかしたら、私が恐ろしいことをしたのかも知れません」

「まあ……どうして?」

「……分かりません。今はまだ、何も分からないのです」

「以前に、自分自身が不思議なものなのかも、と言っていたけれど……。それと関係があるの?」

「……はい」

「葵子さん……」

 蓮子様は私を哀れんで、とても悲しそうなお顔をなさった。私はそのお顔を見て胸が痛んだ。

「葵子さん、わたしには詳しいことは分からないけれど、葵子さんが悩んでいることはきっと、一人では抱えきれないことなんだわ」

「蓮子様……」

「葵子さん、葵子さんも特別で、大切な人なのよ。だから、悩んでいると思うと、わたしも切ないわ」

「……本当に、お優しいのですね」

「だって、大切な葵子さんのことだもの。わたしでは力になれないかも知れないけれど、きっとその悩みを解決してほしいと思うわ」

「蓮子様……そのお言葉だけで、充分救われます」

「ごめんなさい、わたし、何もしてあげられなくて」

「いいえ。お優しいお言葉を、沢山くださいました。それが私には、とても嬉しいことなのです」

「葵子さん……あまり、悩まないでね」

「はい」

 私はまた頷くと、蓮子様が心配してくださるありがたさに、何だか気恥ずかしくなって頬が赤くなった。思わず笑みが漏れ、蓮子様のお顔を見た。

「蓮子様、美味しいあんみつ屋さんに連れてきてくださって、話まで聞いてくださって、本当にありがとうございます」

「ううん。わたしにできることなんて、こんなことくらいだもの……。本当はもっと力になりたいけれど、その方法が分からなくて、切なくなるわ」

「いいんです、蓮子様。お心だけで私には充分ですから」

「ねえ、葵子さん」

「はい?」

「これだけは、分かっていてね。葵子さんは、特別で、大切な人よ。だから、苦しんではいけないんだわ」

「……はい。ありがとうございます」

 魂殺しをしたかも知れない私に、蓮子様は本当にお優しかった。もしかしたら、私が魂殺しをしたという話をしても、お優しいままお言葉をくださるかも知れない。こんなに業の深い私にも、お優しくしてくださる。特別で大切なのは、蓮子様のほうこそそうなのだ、と私は思った。

 私たちはあんみつを食べ、それからは他愛のない話をして過ごした。そうしているとだんだん日が傾いてきて、風も夜風のような香りを含んできた。

「随分遅くまでいてしまったわ」

 紅に染まった夕焼け空を見上げながら、蓮子様は小さく呟いた。

「本当にそうですね……。とても楽しくて、時間を忘れてしまいました」

「わたしも楽しかったわ」

「本当に、ありがとうございました。蓮子様のおかげです」

「いいえ、わたし、何もしていないわ」

「そんな、蓮子様は沢山のお言葉をくださいましたし、とても優しくしてくださいました」

「だけど、わたしにできることは、それくらいだわ。本当はもっと力になりたいの。だから、もしわたしにできることがあったら、何でも話してね」

「はい。ありがとうございます」

「本当に、そうしてね。そうしたら、わたしも嬉しいわ」

「はい」

 蓮子様は本当にお優しい。私は嬉しくなって、はにかんだ。

「そろそろ戻らないと、門限に間に合わなくなるわ。帰りましょう、葵子さん」

「はい」

 私たちはあんみつの器をお店に返すと、帰途についた。

 帰る道々、あの猫のいた道に通りかかった。猫ははたして、いた。私が道の端に運んだ時のまま、そこに座っている。

 私はその猫を見てぎくりとした。……放っておけば、化ける。

 今は、蓮子様が一緒だ。私一人の時ならまだ許せるけれど、蓮子様が巻き込まれるのだけは避けたい。私はそれとなく道を変えるよう提案することにした。

「あの、蓮子様、こちらのほうが近道になりませんか?」

「え?」

「その、ええと、行きとは違う道を通ったほうが、気分も変わって、いいかもしれませんし」

「そう?」

 蓮子様は疑った様子もなく、微笑んで頷かれた。その無垢なご様子に、私は何だか胸が痛んだ。けれどこれは、蓮子様をお守りするためなのだ。

 私たちは道を曲がって、別の道に入った。細い道で、びょおう、びょおう、と風が強い。蓮子様は御髪をお押さえになりながら、少し歩きずらそうになさっている。……でもこれも、蓮子様をお守りするため……! 蓮子様、本当に申し訳ありません!

「風が強いわね」

「そうですね……。春ですし、仕方がありません」

 そう言えば、藤一郎と出会ったのも、こんな風の強い夕刻だった。藤一郎はあの猫が化けると言って楽しみにしていたようだったけれど、今化けられては困る。できるだけ遠ざかって、蓮子様が巻き込まれないようにしなければ……。

 と、思っていると、ごとん、ごとん、と妙な音がし始めた。何の音なのか、見当も付かない。

「何の音かしら?」

 蓮子様もさすがに気になったのだろう、きょろきょろと周りを見回して、不思議そうになさった。

「本当に……何の音でしょう?」

「風が家を鳴らしているのかしら」

「言われてみれば、そんな音かも……」

 と言いかけると、ごとん、ごとん、という音が近付いてきているのに気がついた。風が家を鳴らしていると言うより、大きな何かが屋根を蹴りながらこちらに来ているような……。

 そう思うとさっと血の気が引いた。まさか、猫が化けたのだろうか?

 まさか、そんなまさか……。だってわざわざ道を変えてまで遠ざかったのに、まさか……。血の気が引きながらもどきどきしていると、ごとん! と近くで大きな音がして、私と蓮子様は反射的にそちらのほうを見た。

 そこには、屋根を蹴って飛び上がり、私たちの真上に舞い上がった巨大なものがいた。私達二人を合わせたよりも大きな体で、太い尾があり、獣らしい太い四肢を広げている。夕日に照らされた爪が禍々しく光っていた。

「きゃあ!」

 私は思わず蓮子様をかばうように抱きついて、一緒に後退った。すると同時にその獣は私達の前に降り立って、後ろ足二本で立ち、前足を広げて口角を上げた。

 その顔は猫だ。禍々しい猫。やはり化けたのだ。でもどうして、わざわざ私達のところに!

「き、葵子さん……!」

「れ、蓮子様、お下がりください!」

 とは言ったものの、どうしたらいいのか分からない。藤一郎! 藤一郎はどこに行ったの!

 びょおう、びょおう、と風が通る。その風に化け猫の毛並みが踊った。今にも飛びかかってきそうで、恐ろしい。

 蓮子様、蓮子様をお守りしなければ、でも今逃げ出して、飛びかかってこられたら……!

 その時、ひときわ強い風が吹いた。それと同時に、化け猫が飛びかかってきた。

 私達はどうすることもできず、ただとっさに目をつぶって身を低くした。

「――なるほど。こう化けたか」

 声がした刹那、ばさりと布のはためく音がして、化け猫がみゃおうと唸るのが聞こえた。

 私達はそろそろと目を開けた。すると目の前には藤一郎の後ろ姿があり、その向こうに化け猫が見えた。化け猫は藤一郎を睨んで、様子をうかがっている。

「期待した程には化けなかったな」

「とう……藤一郎」

「藤一郎様……?」

 だから、蓮子様が様とお付けになるような存在ではないのだけれど。

 蓮子様は藤一郎を見てぽうっと顔を赤くなさっている。

 化け猫はもう一度みゃおうと鳴くと、藤一郎に向かって飛びかかった。しかしその爪は藤一郎には届かなかった。それどころか、飛びかかってきたにもかかわらず、こちらと化け猫との距離は変わらなかった。

 奇妙な感覚。藤一郎が鬼を喰った時と同じ、あの距離の縮まらない奇妙なことが起こっていた。

 化け猫は藤一郎に飛びかかろうと何度もかけ出したが、全く距離が縮まらない。それに従って周りの風景が歪んでいくような、おかしな感覚になってきた。

 化け猫はしびれを切らしたように、後ろ足を踏ん張って一気に飛びかかってきた。蓮子様はその様子の恐ろしさに悲鳴を上げ、私と一緒になって縮こまった。

 その時強風が起こり、目を開けていられなくなった。私達は目を閉じて、風が収まるのを待った。

 風が収まってくると、辺りは静かだった。化け猫の気配も……ない。

 私達はそろそろと目を開けた。

 そこには藤一郎がいるだけで、化け猫はどこへ行ってしまったのか、姿がかき消えていた。

 藤一郎はこちらを向いていて、私達の様子を見ると、にやーっと笑った。

「藤一郎……」

「小物だったが、まあまあだったな」

「藤一郎……その、助かったわ」

 礼を言うのは癪だったが、結果として蓮子様を救ってくれたのだから、何も言わないというわけにもいかない。私は渋々礼を言った。

「別に助けたわけではない。お前もあの程度でいちいち怯えるな」

「し、仕方ないじゃない!」

 自分の倍以上もあるような化け猫を前にして、怯えるなと言うほうが無理だ。

「そ、それより、もっと早く助けてよね!」

「だから、助けているわけではないと言っているだろう。異形が最も力を放つ時を見計らっただけだ」

「もう一瞬でも遅れていたら、私達、死んでいたかも知れないわ!」

「死なせはしない。お前は貴重な餌場なのだからな」

 にやーっと笑うと、藤一郎はさっさと私達の後ろへと歩いて行った。

「ちょっと!」

 振り向いたが、既に藤一郎はそこにはいなかった。

 本当に、自分のことしか考えていないんだから……!

 私は怒って鼻息荒く前に向き直り、息を整えてから蓮子様のお顔を見た。

 蓮子様はぽうっとしたお顔のまま、どこか虚空を見つめている。どうも普通ではないご様子だ。

「え……れ、蓮子様?」

「はあ……」

 とため息をつかれると、蓮子様はぱっと両手で顔を覆って、ふるふると首を振った。

「ああ、お名前を口にするのも恥ずかしい……」

「えっ? れ、蓮子様?」

「なんて素敵な方……はあ……素敵……」

「れっ、蓮子様? 蓮子様ー!」

 蓮子様はそれから暫く立ち尽くしたままで、私達がようやく女学院に帰れたのは、門限ぎりぎりだった。

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