社長編 最終話

あれからなんだかんだと話し合って、お互いの誤解を解いた。

何度も別れるという言葉を沙耶が言ったが、本心じゃないことは分かっている。

それでも、そんな言葉を言わせてしまった、俺の罪は重い。

だから、これからずっと俺の生涯をかけて償っていくつもりだ。

それはまだ先のことかもしれないが、今は、沙耶と始まったばかりの恋愛を楽しみたい。

一風変わってるから、飽きることもなさそうだし。

彼女は本当に、百面相のようにいろいろな顔をみせてくれる。

今は、極上の沙耶を胸に抱き、彼女の隅々まで愛撫する。

しなる身体は女豹のようで、その美しさは、俺を虜にしてつかんで離さない。

俺に夢中にさせたいと思っていたが、俺の方が沙耶に夢中だ。

ごたごたがあった分、さらに二人の仲は深まったし、遠慮がちだった沙耶も、堂々とふるまうようになった。

遊園地や動物園、水族館にも行きたいと言う沙耶。

ラグジュアリーなデートばかりを考えていた俺は、沙耶を分かっていなかった。

お金をかければいいというものではないと、沙耶に教わる。

二人過ごす時間に、金は必要ないのだ。

俺たちなりのやり方で、育んでいけばいい。


「それではお先に失礼いたします」

「お疲れさま」


必要以上の残業をしない、させないと二人で約束をした。

沙耶は俺といたかったために、残業をしていたところもあったと、言った。

俺は俺で、帰したくないという単純な気持ちだけで、残業をさせてしまったと謝った。


「じゃじゃじゃじゃーん」

「沙耶」


戻って来た沙耶は、両手を広げて俺に飛びつく。

抱きしめてキスをすれば、疲れなんか吹き飛ぶ最高のサプリメント。


「まだ終わらないの?」

「まだだ」

「真弥さん」


その甘い声で名前を呼ぶな。

それ以上言わないでくれと、キスで口を塞ぐ。

どこか変わっていて、天然で単純だけど、可愛い俺の彼女。

俺を形無しに出来るのは沙耶だけ、最高の彼女だ。



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5時からヒロイン 広兼 怜 @reihirokane

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