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「さて、朝一の会議だわ」


今はタブレットとパソコンで会議をするため、資料をコピーしたりすることは滅多にないが、取締役会議は定年間近の役員が多く、やたらと紙媒体で資料を欲しがる。

朝一番の会議は、その取締役会議だ。資料は昨日揃えてある。私は資料を持って、会議室に向かい、それぞれが座る位置に資料を配る。


「あれ? 水越君か?」

「おはようございます」


西城取締役だった。いつもこの方は一番に入ってくる。にこやかに挨拶してくる愛想のいい方だ。毎日ケーキを食べては、太ることを気にしていると、担当が言っていた。


「誰かと思ったよ、髪を下ろしているから」

「あ、これは……たまにはいいかと」

「うん、うん、いいね」


年配の男であっても褒められるのは嬉しい。言っておくが、男なら誰でも良いというわけではない。


「セクハラになっちゃいますよ、西城さん」


そう言いながら入って来たのは、真田取締役だ。重役会議は人数が限られているから楽でいい。


「おはようございます」

「本当だ、水越くん、いいね」

「いえ、あの……」

「褒めるのはいいことだけど、最近は直ぐにセクハラと言われてしまうからね。何を言っていいか、困るよ」

「本当ですな」

「私はそんな風にはとりませんよ、素直に褒め言葉として、受け取らせていただきます」


朝の、のんびりした雰囲気で、和やかに会話は進む。

秘書はこうあるべきと、自分で秘書像を作ってここまで来た。身にまとうスーツやアクセサリーにも気を使い、色々な髪型を試したが結局、夜会巻きに落ち着いた。

会話の中心となってしまった私に、後ろから「おはよう」と声がして、社長が入ってきた。

一斉に居住まいを但し、私は頭を下げる。


「始めます」


社長の一言で、会議は始まった。

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