EPISODE1 帝国の英雄と異国の娘
1章 英雄誕生
1話 破天荒な将校
今から25年ほど前。
魔法帝国は悲願のアルディア大陸の統一まであと少しという所まで迫っていた
相手は東の大国、夜美ノ国。
魔法帝国の将たちは世界最強の魔法軍事の随意をあつめた魔法騎士団ですぐに平らげられるとタカをくくっていたのであろう。
短期決戦火力集中の準備をしてさっくり戦争を終わらせるつもりであった
ただ敵も去るもの――と言うべきだった。
魔法帝国の将たちは夜美ノ民を過小評価しすぎていた
魔法騎士団はどうしても少数精鋭になりがちだが夜美ノ民は銃という武器で誰しもが最強兵士になれる可能性がある。
つまり魔法帝国は数の上では圧倒的に不利になっていた。
それに浸け込み夜美ノ国は反転して膨らんだその数で魔法帝国を押し込もうと画策していた。
その数魔法帝国の主力魔法騎士団の2倍近く。まさに魔法帝国はミイラがミイラ取りになりかねない状況に陥っていた。
だが、下手したら歴史に残る大敗北が目の前に迫っているというのに魔法帝国の将たちは余裕の表情を浮かべていた。
夜美ノ国も他の非魔血国家とさほど変わらない。いつも同じように魔法火力で押し戻せる。
お偉方はいつもそうだ。過去の栄光に縋って現実を見ようとしない。
そして、若い将校たちもまた自分たちの強さに絶対的な強さに奢り散らかしている。
この状況がどれだけ危機的なものなのか――そう危惧している人物は魔法騎士団の中でもほぼ皆無にちかかった
一人の歳若い魔法剣士の彼を覗いて。
魔法騎士団の本陣が敷かれている古城に怒りを抱いた彼の軍靴が早足で響き渡る。
そしてそのまま彼はお偉いさん方の軍議の真っ最中という作戦室に半ば乱入に近い形で踏み入った。
「なんだね騒々しい·····」
相変わらず軍部のお偉いさん方はなんの緊張感もなく急に乱入した彼を怪訝そうに見た。
そして作戦室を守っていたほかの将校に彼をつまみ出せと命令したその時だった。
彼は殺気に満ちた深紅の瞳を開く
ほんの一瞬だった。その一瞬で彼はその手に炎の魔剣を手をかかった将校の首に突きつけていた
「貴様!どこの若造だ!」
「ここは軍議をする場であるぞ!」
彼の狼藉にその場にいるお偉いさん方は一気に殺気立った。
だがそんな場の空気でさえ何処吹く風のように彼はさらにその場を凍りつかせる言葉を言った
「あんたたち、この戦争に勝つ気があるのか?」
若輩者の将校が言い放ったその言葉はまるで燃料を投下するかのようにお偉方の心を逆立てた。
「ふざけるな!貴様の産まれる前から我々は魔法帝国を勝利に導いてきたのだぞ!」
その言葉を聞いて彼は馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに口元に笑みを浮かべた。
「これだから頭の固いお偉方に任せたくなかったんだよ」
「何――!」
一気に怒気が上がるお偉方の面々。
そんな彼らを他所に彼はその部屋の中央の地図を配した布陣表を見た。
「あんたたち、本気で俺たちの人数で夜美ノ国の大軍を打ち破れると思ってる?」
その一言にお偉方の一人が自信満々に一言言った
「当たり前だ!たかが非魔血の軍勢など我々には恐れるに足らん。例え倍の人数でこられようがな!」
その一言に彼は思わずため息を漏らした
そして彼は自分の頭の中に潜めてあった勝利の方程式を徐々に明らかにして言った
「言っておくが、魔血の魔力は無尽蔵にあるわけじゃない。こんな大軍をまともに相手にしたら疲弊は目に見えている。あんた達そんな事も分からないの?」
彼のその一言にお偉方は思わず黙り込んだ。
言い返す言葉がなかったのだ。
「あんた達のくそ硬い頭だと奇襲とか卑怯だとか何とか言われるかもしれないけど、今回ばかりはまともに相手できない大軍。つまり、一点集中。核となる部位狙って攻撃するしかない」
その一言にお偉方の一人が彼に向かって一言聞いた
「君、名前は?」
その一言に彼はここに来て初めて名乗った。
「ケンヴィード・ゼファー・ティアマート·····少尉です」
「ティアマート·····?」
その名は少なくともお偉方の中では知ってる名前だった。
彼らは急に態度を変えたように声を上げた。
「なんと·····サランド公爵家の出だと」
「選帝侯家のお坊ちゃんがこんなのだとはねえ」
こういう反応が帰ってくるからあまり名乗りたくはなかった――
彼はそう言わんばかりの表情を浮かべたあと、自分に集中するように言わんばかりに咳払いをすると更に布陣表を動かした
「敵は大軍故戦列が間延びしている。先程俺が偵察してきたから間違いない。つまり、相手につけ入る間隙があるってことだ」
「ほう、ではどうするというのだね?」
その一言に彼は3本指を立てて一言言った
「30人ほどでいい。精鋭の魔法剣士が欲しい」
その一言にお偉方は驚いた表情を浮かべた
「30人で何ができるんだ?」
「普通もっと要求するだろうが」
だがそのざわめきを押し沈めるように彼は一言言った
「こう言う奇襲は人数が少なければ少ないほど相手に精神的なダメージを与える。俺が求めてるのは大軍の殲滅ではない。大将首を獲ることだ」
その一言にお偉方は一瞬黙り込む。
だが、その沈黙を破った相手がいた。
その男は彼に拍手を送りながらニコニコと笑った。
「いいんじゃないでしょうか、皆さん」
その男のその言葉に焦ったのは他のお偉方だった。
「しかしですな、シヴァルナ大佐」
「ティアマート少尉は少数の兵で何とかしてみせると言っているのです。やらせてみてはどうでしょう」
シヴァルナ大佐のその一言に明らかにお偉方の態度が変わっていった
だが、結論を渋る彼らを見てシヴァルナ大佐は一言ある条件をつきつけた
「なら、この作戦私に一任させてください」
シヴァルナ大佐は一言そう言うと彼のそばへ行き彼の肩を優しく叩いた。
「ただし私は監督するだけで全権は彼にたくします。万が一失敗しようものなら私を叩いてくださって結構ですよ」
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