困惑

第1話

美沙side

「もう拓斗のLINE消しちゃおっかな」


もう電話してこない。

あの言葉通り。


それどころかトークもない。スタンプもない。

だから。


スマホの画面には


この番号を削除しますか?

という表示。



はい

のボタンを押せないで、

すでに三十分は悩んでいる。


「どーしよう」


ピーコン♬


なったのはLINEを知らせる音。

でも拓斗とかでなく番号で追加されましたという表示と信哉という名前。

アイコンがサッカーのグラウンドっぽい。ピントわざとずらしてあるようで何となくしかわからない。

開いてみると文章が見えた。


『こんちは。おれ拓斗のダチで

信哉って言ってわかる?

同じサッカー部なんだけど。

んで

部活の試合見にきてほしいんだよねもちろん拓斗のために。

あとLINEは拓斗から聞いた。

鈍感な奴で大変だと思うけど

がんばって!』




こんな感じのメールだった。

信哉クンって拓斗と仲いい男子。


こんなに長くて丁寧な文打てるんだって

ひそかに感動。


話したことないのに色々ばれてたり、

何でアド聞いたのかも謎だけど


今は頑張っての一言でも元気になれる。



本当に単純な性格している。


まえに進むしかないよね。


「とりあえず返信しないと」


『連絡ありがとう

試合見に行きたいよ!

詳しい時間と場所教えてほしいな』


「送信っと」


返信し終えるとさっきの削除のページは消えていて


アドレスを消そうとは思わなかった。


「信哉クン、ありがと」


まだ諦めるべきか判断がつかない。

でも見るだけなら


「明日考えよう」


ただの現実逃避ではあるんだけど。

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