*第124話 命の波紋
その少年は何時も笑っていた。
呼吸不全の発作で苦しんだ後もにっこりと笑った。
生まれてから一度も歩いた事は無い。
食事も一人では出来ない。
堅くなった筋肉を
それでも少年は笑っていた。
本当は辛いだろうにと、大人達は陰で泣いた。
本人が笑っているのに目の前で悲しそうな顔をする訳にはいかない。
先天性筋ジストロフィー。
牧野ひかり 15歳
短過ぎるその人生の殆どを笑顔で生きた少年は、
最後にこう言った。
「行ってきます。」
***
「もう!信じられませんわ!」
置いてきぼりを食らいましたわ!
この怒りをどうしてくれましょう!
「お母様!どうして教えて下さら無かったのですか?
私も行きとう御座いましたわ!」
つい、お母様に八つ当たりしてしまいました。
「あら、そうでしたの?では今度は私と一緒に参りましょうね。」
雲間から差し込む日差しの様な、暖かいお母様の微笑み。
走り寄って飛び込んで抱っこですわ!
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330664229569946
「アーミアは甘えん坊さんね。」
えぇ、その通りですわ!
「お母様、お願いが有りますの。」
「あら、何かしら?」
「今度、私と一緒に精霊歌を作って下さいまし。」
お姉様ばかりズルいですわ。
「まぁ!でも案外に難しいのよ?
貴方は早くに死んでしまったから、ネタ不足では無くて?」
遠慮無しにハッキリ言いますわね・・・
さすが真正サイコパスですわ!
「駄目ですの?」
必殺うるうる攻撃ですわ!
「駄目などと言う訳が無いわ!
えぇ、分かりましたわ、一緒に作りましょうね。」
イチコロですわぁ~
「良かったわね!」
魔子も嬉しそうですわ!
魔子は前世でもずっと一緒にいましたの。
発作で苦しい時も、辛いマッサージも、
何時も魔子が励まして呉れましたのよ。
(僕なんか生まれた意味は有るの?)と聞きましたら。
『当然よ。』と答えて呉れましたの。
(なんで?何にも出来ないよ?)
『命はそこに在るだけで良いのよ。』
(働く事も出来ないし、役に立たなくても?)
『命は水面に広がる波紋と同じなの。
様々な命の波紋が干渉し合い織りなす模様が世界を脈動させるのよ。』
(こんな僕でも?)
『勿論よ、生まれたばかりの赤ん坊もベロゲイツも、
私から見れば誤差でしかないわ。
存在している事に意味があるの。
どんな人材かはどうでも良いのよ。』
(それはそれで空しい様な・・・)
『今は解らなくても良いわ、
肉体を持つ者の理解の限界だから。
死んだら私の言った意味が理解できるわ。』
(転生するって話?)
『えぇ、そうよ。』
(たしか先輩が居るって言ってたよね。)
『えぇ、二人居るわよ。』
(どんな人?)
『え~っと、パンツの好きな人よ。』
(???)
確かに異常なくらいに好きですわねぇ。
お母様は・・・
パンツがっ!
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