*第125話 希望の歌
「こここ・・・今度の、あ・あの
あの・が・が・学園祭の、あの・あの
だだ出しの・あの・出し物・・・」
緊張すると余計に言葉が出ない。
本宮
言葉を発音する為に必要な筋肉の動きを上手く制御する事が出来ない。
歌う時には何の問題も無いので、“会話”として言葉を処理する経路に
異常が有るのだろう。
田舎の小中学校に通っている時は周りの理解も有り、
歌う様に会話をする事で日常を過ごしていた。
「お~早~う♪御座~いま~す♪先~ん生~ぃ~♪」
「おぅ!おはよう本宮!宿題忘れて無いか?」
「はぁ~~~い♪やって~♪来ました~~~♪」
武はこの歌会話によって楽しく暮らしていた。
将来は劇団春秋に入りたいと密かに夢見ていた。
だが卒業と同時に親の仕事の都合で都会へ引っ越し、
高校へ進学すると全く理解されなくなってしまった。
ふざけていると受け取られたのである。
「普通にしゃべりなさいっ!」
それが出来たら苦労はしない・・・
「あの・あの・あ・あ・す・すすみません。」
火に油を注いだ。
「先生を馬鹿にしてるの!」
「し・し・し・して・・・ません。」
「へんな真似するのやめなさい!
歌えるんだから、ちゃんと話せるでしょっ!」
専門的な知識の無い者の認識とはこの程度だ。
入学早々にトラブルを抱えてしまった為に武は悪目立ちしてしまい、
クラスで浮いてしまった。
私立高校であるこの学園の文化祭は、夏休み明けの九月に開催される。
どういう訳なのかは分からないが、武は委員に選ばれた。
武は張り切っていた。
皆の役に立って文化祭を成功させれば、
友達の一人くらいは出来るだろうと思った。
夏休みの間も教室で設営に
うだる様な暑さの室内は危険な空間であった。
再三のミコの忠告に従い休憩を取ってはいたが、
頑張り過ぎてしまった。
ふらふらに成りながらの帰り道、公園のベンチで横に成った。
頭が痛いし、吐き気もする。
息苦しい。
「やばい~かも~♪ハァ、ハァ」
『だから言ったのに。』
「ハァ、ハァ死~ぬの~かなぁ~♪」
『かなり早いけれど、行く?』
***
『新~しい~朝よぉ~♪
希~望~の~朝よぉ~♪
喜~びに~胸が~♪
高~鳴~るわ~~~♪』
「おはよう!アリス!」
「お早う御座います、姫様。」
『大空~らを~見上げて~♪
挨拶~つ~するの~~~♪』
「おはよう!お日様!おはよう雲さん!
今日はとっても良いお天気ねっ!」
『ら♪らん♪ららぁ~~~♪
らん♪ららん♪ららぁ~ん♪
あっそぉ~れっ!
いっち♪にぃ~♪さあ~~~ん♪』
「お早う御座います!お母様!」
「お早うサラーラ、今日も元気一杯ね!」
『歌を~歌えば~♪
元気~が出~る~の~~~♪
一緒に~♪歌いま~しょお~~~♪
お~母~様~~~♪』
「えぇ!歌いましょう!」
『
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330664277782168
「お母様!私、コブシ・ジェンヌに成りますわ!」
「まぁ!それは楽しみね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます