*第110話 ヘッドライン

タッタッタッタッタッタッ


まだ夜明け前の暗い部屋に、

駆け足の音が聞こえる。

庭師が起きるには早過ぎるし、

通りに面しているのでも無い。


タッタッタッタッタッタッ

次第に近づいて来る迷い無きリズム。


タッタッタッタッタッタッ

ピタッ!

止まった!


新~聞~~~んチリ~ン チリ~ン


閉まっている筈の窓をすり抜けて、

一部の新聞が飛び込んで来る。


ま・・・まさかこれは!


やがて夜が明け、朝の陽ざしが部屋に差し込む。

「あら、精霊新聞だわ。」

すっとルルナが拾い上げる。

不定期で送られて来る精霊界の業界新聞である。


「何かあったのかしら?」

取り敢えずは一面のチェックである。


<ムーランティス大陸 封印解除!>

大見出しでトップを飾るに相応しい大ニュースだ。


「え!嘘でしょう?」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330663171156118

***


何時もより少しだけ早くルルナに起こされましたわ。

何やらあわてていますわね。


「何ですの?貴方が取り乱すなんて珍しいわね。」

わざわざ起こさなくても、もうしばらくしたら起きますのに。


「大変なんです!封印が!封印が!」

何の封印ですの?


「落ち着きなさいなルルナ。

はい、息を吸って~~~スゥ~~~~

吐いてぇ~~~ハァ~~~~~

吸って~~~スゥ~~~吸って~~~スゥ~~~

吸って~~~スゥゥゥゥゥ

チュウしてっブホッ!!❤」


「なんでやねんっ!」

シモーヌ菌が伝染うつったのかしら?


「で?どうしましたの?」

もう大丈夫ですわね!


「ムーランティス大陸の封印が解除されました。」

何所どこの大陸ですの?

古代人でも出て来るのかしら?


「それがどうかしましたの?」

何でしたら焼き払いますわよ?


「聖地モスクピルナスの在る、四始祖生誕の地なんですよ。」


ルルナから封印の経緯いきさつを聞きましたの。

成る程ぉ~

そうでしたのね。


「問題を起こす前に破壊しませんこと?」

先手必勝ですわ!


「それは乱暴過ぎるよぉ~」

「そうかしら?」


「ヤベェなアンタ。」

「修羅の大陸なのでしょう?」


「先ずは話し合いからですよ。」

「面倒臭いのは嫌ですわ。」


「平凡な人型精霊は居ますか?」

「その様な精霊は居ませんわ。」


え?誰?


見知らぬ人型精霊が居ますわ。

いえ、知っては居ますのよ!

サリーちゃんに、ルルベロでしょう?

それにヤンキーモモね!


それから~えぇ~っと・・・


「ミサです!黒木ミサ!ヘコヘコ・アザラシの!

お前誰?って顔しましたよね!

そう言うの分かるんですから!」


さすが黒魔術ですわね、病んでますわ。


なんでも四始祖様と契約していた四精霊だとか。

ずっとモスクピルナスで隠居していたそうですわ。


「これはどう言う事ですか?先輩。」

そう!それですわ!


「あぁ、それね。

ちゃんとシステムに承認されたわよ。」


「それはそうでしょうよ、私が聞いているのは

何故に封印を解除したのか?ですよ。」


そう!そこですわ!


「う~~~ん」

「それはぁ~」

「やっぱあれじゃん!」

「暇だったから?」


なんでやねん!なんでやねん!


「やっぱり何所となく面影が有るわねぇ。

五千年以上も血筋を残すなんて、さすが伊予ちゃんの子孫ね!」


え?イヨちゃんって誰ですの?

「何の話ですの?」


「あれ?言ってませんでしたか?

ダモン家は四始祖の一人、伊予ちゃんの子孫ですよ。」


ルルナぁ~~~

一言も聞いてませんわぁ~~~


それならそうと!

早く言って下さいましなぁ~~~


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