*第106話 元祖 精霊会議

モスクピルナスの泉では、

四柱による精霊会議が開かれていた。

議長のサリーちゃんが開会を告げる。


『それでは定刻と成りましたので

精霊会議を始めます。

出席を取ります。

ミサさん。』


『はい。』

『ルルベロさん』

『はぁ~い』

『モモさん』

『うぃっす!これ要る?』


『決まりなのよ、

全員揃いましたので始めます。

何か意見は有りますか?』


『これと言ってねぇなぁ~』

『私も無いわ。』

『無いよぉ~』


『では私から一つ議題が有ります。』

そう言ってサリーちゃんは、

ルルベロに顔を向ける。


『ねぇルルベロ、

貴方なにかヤバイ事してない?』

”考えるポーズ”でルルベロに詰問する。


『うん、してるよぉ~』

あっさり答えた。


『大志の馬鹿が何かやらかしたんだろう?』

ヤンキーモモがヤンキー座りで横やりを入れる。

パンツ丸見えである。


『うん、あの人狂ってるよぉ~』

その片棒を思い切り担いでいる。


『何したの?伊予ちゃんに危害がある様なら

許さないから。』


『本人には害が無いから平気だよぉ~』

心理的ダメージは無視である。


『だから!何したの?』


『伊予ちゃんのクローン作ってるのぉ~』

“クロワッサン焼いたのぉ~”

と同じテンションで言った。


『うっわ~!それヤバイやつじゃん!!』

ヤンキーモモが仰け反る、食い込みがエロい。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330662953351907


『あぁ・・・それでか。』

かなり弱いが、伊予と同じ波長の存在を

サリーちゃんは感じていた。


『それって人型と契約が出来たりするの?』

ミサは何かを期待しながら聞いた。

『遺伝子の発現率が低いから無理だねぇ~』

人型は無理だが、高位の上級精霊なら問題ない。


『そう・・・残念だわ。』

ミサは自分と同じ平凡な見た目の

精霊仲間が欲しかった。


『沢山の伊予ちゃんに囲まれて暮らしたい訳ね、

でもまだ子供でしょう?』


波長の感じからすると上が3歳で、

下は生まれて間もない。


『違うよぉ、伊予ちゃんの脳を移植するのぉ。』

とんでもない事を言いやがった!


『思いっきり害が有るわよっ!』

狂うにも程が有ると言うものだ。


『ちびっこ伊予ちゃんが居るのになんで?』

わざわざ脳移植などする必要が分からない。


『見た目は伊予ちゃんなんだけどぉ、

伊予ちゃんを感じ無いんだってぇ。

それでぇ、

人格データのメインサーバーって脳でしょう?

だからそれを移植すれば

本物の伊予ちゃんが出来るわけ。』


『まぁ理屈ではそうなるよな。』


『コピーにしか成らないわよ?

それに、とっても危険よ?

ちゃんと説明したの?』


厳密に言うと手足の傷跡の一つでも、

それも含めて人格が形成されているのだ。

人格とは記憶の集合体である。

別の肉体に移植された時点で別の人格だ。


システムが転生体に人格をコピーする場合は、

胎児のまっさらな脳にデータのみを転写する。

それでも多少の影響がでるのだ。

脳移植によって人格にどんな副作用が出るか、

まったくの未知数だ。


『言ったんだけどぉ、

聞く耳を持って呉れないのぉ。

もう何人も殺してるからぁ、

引き返せないんだってぇ。』


『今なんて言ったの?!』

聞き捨てならない事をルルベロがほざいた。


『脳移植の実験でぇ、

失敗して何人も死んだのぉ。』


『いやいや!それ止めろよ馬鹿ぁ!』

粗暴だが多少の倫理観は有る

ヤンキーモモが怒った。


『だからぁ、止めても聞かないのぉ。』

不可能で無ければ、

依頼を実行するのが精霊である。


『なんか・・・大事になって来たわね。』

『これは、ほっとけ無ぇぞ!』


『伊予ちゃんに報告する案件よね。

管理者権限をシステムに申請するわ。

いざとなったら貴方の機能を停止するから、

その積りでいてね、ルルベロ。』


『うん、分かったぁ。』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る