*第103話 君は誰?

「い、伊予ちゃん・・・」

真っ白だった視界が景色を取り戻すと同時に名を呼ばれた。

そこには初めて見る懐かしい顔が在った。


「大志君!」

直ぐに分かった、顔も声も体つきも知らない人だが、

それでも彼は横井大志その人だった。


「伊予ちゃん!あぁ伊予ちゃん!」

ふわりと抱き寄せられて伊予は安堵あんどに包まれる。


「ごめんね・・・大志君。僕のせいで・・・」

あんな死に方をさせてしまった。


「どうでもいいよ、そんな事。

こうしてまた逢えたんだ、これからはずっと一緒だ。」


言い終わると伊予の唇に口づけをする。

前世でも何度かそうしたが、只の悪ふざけだった。

しかし今は違う。

愛の意思表示として重ねられた大志の舌が伊予を求める。


「んっ?!」


驚き、そして戸惑いもしたが拒む事はなかった。

罪悪感と、許されたい心が彼の行為を肯定した。


絡み合う舌と唾液の音に息が乱れる。

脈拍数が上昇し動悸どうきが激しくなるのは、

交感神経が活性化しているからだ。


血圧が高くなり末梢まっしょう血管が収縮する。

手足がしびれ、眩暈ままいと浮遊感に支配されて行く。


「あのぉ~済みませぇ~ん。

一先ずその辺で止めて貰って良いですかぁ?」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330662636096448


危ない所であった。

ホッとするのも束の間に羞恥心が萌える。


(うわぁ~恥ずかしぃ~)


「誰だ!お前たちは!」

大志は邪魔をされて苛立っている。


「言わなくても分かんだろ!馬鹿か?」

えらく口の悪い子が居る。


「あっ!ヤンキーモモだ!」

“魔法のサドンデス・ヤンキーモモ”が居た。


「うわっ!サリーちゃんだ!」

“魔術使いサリー”も居る。


「それじゃぁ、あれはルルベロか?」

大志が指さす方には、

“魔法少女ルルベロ”が手を振っている。


「そうだよ!ルルベロだよ!凄いよ!精霊が魔法少女だなんて!」

先程までの恥ずかしさは興奮の熱で蒸発した。


「なんで魔法少女のコスプレなんだ?」

しかも日本のアニメの。


「いやぁ~この方が親しみ易いかなぁっと。」

ルルベロが照れながら説明する。


「大志君、あの子はなんだろう?」


伊予が見つめる先にはセーラー服の少女が居る。

「いや解んない、普通の女子高生だよな。」


「ミサです!黒木ミサ!ほらっ!ヘコヘコ・アザラシの!」

普通の女子高生が自分を指さしながら訴える。


「いやぁ~それじゃぁ解らないよぉ~

朝の駅前に山ほど居るよぉ~」


「あっ!伊予ちゃん!大志!」

「光一君!」

柿本光一が来た!


「やっぱり転生したんだね!信じてたよ!」

「うん!会いたかったよぉ。」

伊予は光一に飛びつき、無自覚な誘惑を躍らせる。


「ル、ルルベロだ!サリーちゃんも居る!

あぁ~!モモじゃん!ヤンキーモモじゃん!」

魔法少女の勢ぞろいに光一も大興奮だ。


「彼女は誰?」

「ミサです!ヘコヘコ・アザラシの!」


「おぉ~!やっぱり居た!伊予ちゃん!」

「真司君!」

最後の一人、寺島真司も到着した。


これで全員が揃った。

真司も魔法少女を見て驚いた。


「君も転生者なの?高校生?」


「ミサですよぉ~黒木ミサぁ~

ヘコヘコ・アザラシのぉ~~~」

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