*第72話 鎮魂歌

エルサーシアは人の死に関して淡泊であった。

それは自分自身に対してもそうである。


今を生きているこの瞬間が全てであり、

死は無にかえるだけの事だととらえている。

その事を経験として知っているのだ。


前世と言い、そして転生と形容したとしても、

それはデータをコピーしただけで

過去世と現在世は別物であり、

また未来世もそうである。


だから今を生きるのだ。

血の涙を流し、それがれ果てても。

全てが此処ここに在り、此処ここで終わるのだから。


***


今日はお母様のご要望でターターリニ宮殿の跡地に

お花をお供えに参りますの。

殿下も御一緒なされます。


戦が激しくなれば、もしかしたら殿下にも召集しょうしゅう

掛かるかも知れないので、

余裕が有る今の内に一区切り付けましょうとなりましたの。


近頃は急に大人びてしまわれた殿下ですの。

背も高くなって体つきも男らしくなりましたわ。

成長期ですわね。


私も来年は14歳ですもの、成長期ですわ!

えぇ、きっとこれから大きくふくらんで来るのですわ!


お母様の娘ですもの!

そうですわよね?

不安ですわぁ~


チャーミィが自慢げに見せ付けて来ますのよ!

痴女ですわ!痴女!!

今も殿下の腕にしがみ付いて押し付けていますのよ。

まぁ~~~いやらしいですわぁ~


私もカルアンと手を繋いで居りますの。

夫婦円満ですわ。


そうですわ!ロリコンのカルアンの為に慎ましいお胸なのですわ!

愛ゆえにですのよ。


「アダーレンのお城が見えて来ましたわ。」

お母様の言葉に皆も視線を一つにしました。

「大丈夫ですか?殿下。」

チャーミィが心配そうにしていますわ。


「あぁ大丈夫だよチャーミィ。」

そうそう、殿下とチャーミィの婚約が内定しましたの。

ただ、これから戦となりますので暫くは延期ですの。


離宮の名前の由来でありますターターリニ湖に着きました。

瓦礫がれきは撤去されていますが、基礎の石垣は残っていますの。

皆で石段を登り、花を手向たむけけました。


「母上、私は陸軍に進む事となりました。

ダモンの皆と共に戦います。」

「アナマリア様、タチアーナに御座います。

私が殿下を御支え致します。」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330661191497763


「マリア、次の演目は“ホモオとズリエット”よ!」

お母様、それはBLではありませんこと?


「サーシアは何も言わないの?」

そう言われましても~これと言って何も~


ここはひとつ、精霊歌の出番ですわね!


「私からは歌をお捧げ致しますわ。」

「まぁ!それが良いわ!」


タン♪タララン♪

タララン♪タラランラン♪


腐乱死体はヤバイわ~タンタラランタラランタラランラン

あまりに~も臭いの~タンタラランタラランタララ~ン

腐乱死体はヤバイわ~タンタラランタラランタラランラン

身元が~判らない~タンタラランタラランタララ~ン


三月~三十日の~日曜日~チャララ~ンチャラララチャララ~ンピロピロリン

野グソ~したら~チャラランチャララン

橋の~下で見つけた~パラランパラランパララ~ン

腐乱死~体~パラパ ラ~ンラ~ン


本当の事を言~ったら~タンタラランタラランタラランラン

このまま~無視したい~タンタラランタラランタララ~ン

本当の事を言~ったら~タンタラランタラランタラランラン

警察~が怖いの~タンタラランタラランタララ~ン


三月~三十日の~日曜日~チャララ~ンチャラララチャララ~ンピロピロリン

野グソ~したら~チャラランチャララン

橋の~下で見つけた~パラランパラランパララ~ン

腐乱死~体~パラパ ラ~ンラ~ン♪』


タララララ~ン♪


「美しい歌ねぇ~マリアも喜んでいるわよ!」

お母様が嬉しそうですわ!

あら?ルルナが目を丸くしていますわねぇ。


「何かしら?ルルナ。」

「いやぁ・・・余りにも不謹慎ふきんしんで驚きました。」

死んでしまった人に何を言えば良いのか、

私には解りませんわ。


生きている間にどれだけ愛せるかでしょう?

それ以外の何所どこに答えがありますの?

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