*第65話 密林大帝

“物差し”と言う概念が在る。


距離を測る場合や重さを調べるには、

それなりに世間に通用する基準を用いて測定する。


日本では基本的にメートル法に準じた単位を採用している。


十進法で統一されたフランス発祥の

この単位系は数学や物理などの理系科学との相性は良いが、

人の生理的な感覚とは馴染なじまないと言われる事が多い。


人は物事を定量的に理解する為に物差しを使う。

それは対人を理解しようとする時もそうである。

「普通ならこうする筈だ。」と考える。


ところがその“普通”と言う感覚は全く当てにならない。

誰かにとっての“普通”は他の誰かにとってはそうと限らない。


統計学は集団を扱うのであって、

目の前の個人には当て嵌まらない。


心理学はサンプル次第でどうにでも解釈できる。


脳科学を応用した洗脳や誘導はまた別の話だ。

心の理解を通り越した脳の操作なのだから。


人格を測る物差しなど、何所にも存在しない。


***


酒臭いですわぁ~


浴びるほど飲むとは言いますけれど、

本当に樽ごと持ち上げて飲むから

全身がお酒でびしょびしょですわよ。


「聞いて欲しいざんすよお客人!

ワシらはずぅ~っとオバルトの友人ざんす!」


また来ましたわぁ~

「有難く思うて居りますわ。」


「昨日や今日で尻尾を振りよる三下と一緒にして貰うたららちかんざんすよぉ!」

コイントの事ですわね・・・


「承知致して居りますわ。」

「北では随分と大盤振る舞いじゃったそうざんすねぇ?」


はて?何の事ですの?

「おっしゃる意味が解りかねますわ。」


「こら!キーロヒー!お客人に失礼ざんすよ!」

クロビー陛下が注意して下さいましたわ。

「ですがね親父おやじ!まだ祝福して貰うてねぇざんすよ!」


祝福?


「いい加減にするざんすっ!」

ケーンサン様がドスの効いた声で一喝されました。

しびれますわ~


「いくら小父貴おじきでも、此処は譲れねぇざんす!」


少し険悪が過ぎますわねぇ。

仕方が在りませんわね。


「キーロヒー様、祝福とは何の事で御座いましょう?」

お金なんて持ち合わせて居りませんわよ?


「あちこちで精霊歌を歌うて祝福したそうざんすねぇ。」


あぁ~なぁ~んだぁ~

私の美しい歌声が聞きたいと?

それならそうと早く言って下さいましな!


「あら!それでしたら今すぐにでもご披露致しますわ!」

精霊歌もバージョンアップ致しましたのよ!

ルルナにカラオケを実装して貰いましたの。


さぁ!皆様!お聞きあそばせっ!


チャランカチャァ~ンズンタタッタ

チャンチャンチャァ~~~ンズンタズンタズンタタッタタン


こんにちは~ズンタタッタズンタズンタこんにちは~ズンタタッタズンタズンタ

ズボンを~ズンタタッタズンタズンタ下ろして~ズンタタッタズンタズンタ

こんにちは~ズンタタッタズンタズンタこんにちは~ズンタタッタズンタズンタ

スカート~ズンタタッタズンタズンタ捲って~ズンタタッタタン


こんにちは~ズンタタッタズンタズンタこんにちは~ズンタタッタズンタズンタ

パンツを~ズンタタッタズンタズンタずらして~ズンタタッタズンタズンタ

こんにちは~ズンタタッタズンタズンタこんにちは~ズンタタッタズンタズンタ

便器に~ズンタタッタズンタズンタしゃがんで~ズンタタッタタン


千九~百~パラカパラカパ~ン七十~人~でぇ~パラカパラカパ~ン

こ~んに~ち~は~チャ~ンカチャンチャンチャ~ン


こんにちは~ズンタタッタズンタズンタこんにちは~ズンタタッタズンタズンタ

ウンチを~チャランカチャ~ンし~よ~お~~~チャンチャンチャ~ン♪』


ジャァ~~~~ン♪


「おぉ~!これが精霊歌ざんすか!」

「力が湧いて来るざんすねぇ~!」

「長生きして良かったざんす!」

丸く収まりましたわ!


それにしてもコレは何のお肉でしょう?

鶏肉のようですけれど弾力が物凄くて顎が痛いですわぁ。


おや?これは“手”?

鋭い爪の・・・

どう見ても爬虫類系の前足の様な・・・


ぐるりと周りを見回しましたら、

在りましたわ!

頭が!


ワニですわね・・・


おぇ~~~ゲロゲロゲロ~!」

ルルナが吐きましたわ!

さっきまでニコニコと食べていましたのに。


爬虫類くらいで吐くなんて未熟ですわね。

私は虫で無ければ平気ですわよ!

虫は駄目ですわ~


テレビでお笑い芸人の方が

「エビみたいな味がする~」

と言っているのを見て、

食べていたエビチリを吐き出しましたわ!


既存の食べ物に例えるのは止めて頂きたいですわ!


***


ハイラム訪問も最後の行程となりました。

キーロヒー様の御領地へご訪問してから帰路に着きますの。

王后陛下は暫くハイラムでご静養なされるそうです。


御領地はオバルトとバルドーの二国境で接していますの。

流通が盛んでいらっしゃるそうですわ。


今日は小舟に乗り込んでの密林探検。

珍しい動植物に巡り会いましたわ。

ヒップイテコマスの大きな口が迫力満点でしたわ!

日本では“カバ”ですわね。


で・・・


何ですの?これは?

「お客人!悪いざんすけど此処で死んで貰うざんすよぉ!」


泉のほとりで昼食を頂いておりましたら、

武装兵に囲まれましたの。


「ハリマオちゃん!宜しくねっ!」

「ガオォォォ~~~!!!」

十二支精霊のトラのハリマオちゃんを呼び出しましたわ。


南国の真っ赤な太陽を背に受けて

ハリマオちゃんの雄叫おたけびが、

果て無き大空にとどろき渡りましたの。


密林ジャングルの帝王ですわ!

巨大な前足の一振りで数人が吹き飛びましたわね。


その調子でお願いねっ!


ルルナも電撃を放って攻撃していますわ。

出力が高いと音の迫力が違いますわねぇ~


さてと・・・私はどう致しましょう?

見物していても宜しいかしら?


ぎゃぁぁぁ~~~バキバキグキィ!!!」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330660861423140


ハリマオちゃんに足を踏み抜かれてキーロヒー様が藻掻もがいていますわ。

戦闘が終息しましたわね。


「お話し頂けますかしら?」

どうせバルドーの描いた絵なのでしょうけれど

一応聞いて置きますわ。


「じゃかましいざんす!」


「死にますわよ?」

もう面倒ですから殺してしまおうかしら?


「ワ!ワレぇ人間ざんすか!」

「さぁ?私にも解りませんわ。」

転生者って微妙ですわよね~


「ワリャぁバケモンざんす!」

失礼なっ!自他ともに認める美少女ですわっ!


「お話し下さるのでしたら王都までお連れ致しますけれど、

如何いかがなされますかしら?」


「わ、わかったざんす・・・」

はぁ~デッカンコまで戻りますのね・・・


面倒臭いですわ~


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る