*第60話 味狭藍(あじさい)
梅雨の時期に小さな花が密集した
手毬状の姿で
土の酸性度によって色が変化し、
また同じ個体でも時間の経過で変色する。
“七変化”の異名を持つ。
花や葉には毒が有るとされ、
実際に食べると
中毒症状を起こす。
エルサーシアはこの花が好きだ。
幾つもの顔を持ち、
食べると危険な在り様を好ましく思う。
***
はぁ~雨ですわぁ~
雨は好きですのよ!草も樹も花も、
景色の全てが色濃く
庭を眺めているとショパンの調べが聞こえて来ますわ。
カルアンが弾いていますの。
ショパンの「別れの曲」。
夜明けにカルアンを叩き起こして、
私がスキャットで歌い丸暗記させましたのよ!
「雨の日の私は
と言ったら雨が降る度に弾きますのよ。
もう飽きてしまいましたわ・・・
10日も降り続いていますので洗濯物のパンツが溜まっていますの。
パンツだけは自分の手で洗うのが私の
殆どの淑女の皆様は使い捨てにする様ですが、
愛しいパンツを捨てるなんて私には出来ませんわ!
替えのパンツは十分に有りますし、
魔法で乾かす事も出来るのですけれど
やっぱりパンツは天日干しですわよね!
朝に干したパンツが2~3枚無くなっているのを見つけるとゾクゾクしますの。
すぐさまカルアンの近くで独り言の様に言いますのよ。
「あれぇ~おかしいですわねぇ~
確か10枚干した筈ですのにぃ~」
オロオロと目が泳いで挙動不審になりますのよ!
「どどどどうしたんだぁ~い?サ、サーシアぁ~」
「『コセムしてますかぁ~?』」
ピピッ!ピピッ!ピピッ!
「おんやぁ?何の音かしらぁ~?」
ポフッとカルアンの背中に
豊かになる予定の胸を押し付けますの。
カクカクと無意識に動く胸騒ぎの腰つきに
畜生の
警告音の発生源であるカルアンの
胸の内ポケットに手を滑り込ませて、
スルスルとパンツを取り出しますの。
早くも繋ぎ合わされた3連パンツが出て来ましたわ!
掛布団の材料にする積りでしたのね・・・
“太陽に萌えろ”の
裸電球スタンド風の照明をカルアンの顔に向けてルルナが問い詰めましたの。
「何じゃこりゃあ~!!!」
ジーパン
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330660574880407
「つい・・・出来心で・・・」
あっさり
お仕置きで大広間のシャンデリアに逆さ吊りにして差し上げましたの。
伝統の
お母様に見つかってお叱りを受けました・・・
やり過ぎたのかしら?
けれどカルアンも嬉しそうにしていましたのよ!
***
クリステル王后陛下から御呼出しが掛かりましたの。
後宮パッサント宮殿の敷地内に在る離れ屋敷で暮らして居られますのよ。
離れに続く道沿いにアジサイの花が咲いていて物悲しくも美しいですわ。
案内されたお部屋の中には、
陛下と向い合せにハイラムのお使者の方々がいらっしゃいましたの。
「
陛下の隣へ座る様に勧められましたの。
「ご機嫌麗しゅう御座いますわ陛下。
そちらの皆様はハイラムのお方ですの?」
先ずはご挨拶ですわね。
一通りご挨拶が済んで席に着きました。
それにしても宰相様は良い男ですわぁ~
初老の紳士風ですけれど鋭い眼光と
隙のない
「聖女様には是非ともハイラムに御越し頂きたいざんす。」
不器用そうな口調でお願いされたら、
ときめきますわ~
「私の一存ではお答え出来ませんわ。」
「それなら大丈夫よ!私が話を通すわ!」
随分と前のめりですわね陛下・・・
「えぇ、それでしたら私に否やは御座いませんわ。」
うっとりと少女の様な眼差しで宰相を
見つめていらっしゃいますわねぇ。
あっ!
もしや例の初恋の・・・
ほぉ~~~
左様で御座いましたかぁ~
ここはひとつ私がお手伝い致しましょう!
「陛下も御一緒に参りませんこと?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます