*第19話 聖女の行進

魔法を発動させる技術を“精霊術”と言う。

基礎となる生活魔法は地域にある教会に通い習得する。

貴族であれば家庭教師を雇うのが一般的だ。


上級精霊と契約した者は精霊院にて教育を受け、

精霊師の資格を取る事を義務付けられる。


通常は12歳までに生活魔法を身に着け、

その後精霊院へ2年間通い初級の特殊魔法を習得し、

一般精霊師の資格を得る。

さらに上級の魔法を所得するには、

軍、騎士団、憲兵、教会の何れかに所属しなければならない。


この世界での宗教は精霊信仰のみである。

目に見える形で精霊が存在しているのだから当然そうなる。

各地で個別に営まれていた信仰であったが、

それも精霊教会に統一されて久しい。


教会の権威と信用は国家のそれを凌駕している。

しかし教会が権力を持ち民衆を統治する事は

原初の契約に依って禁じられている。


かつて四始祖が精霊と交わした契約である。


・契約を望む者を拒んではならない

・契約を望まぬ者に強いてはならない

・契約者を導かねばならない

・契約者に導かれてはならない

・契約者を統治してはならない

・契約者に統治されてはならない


権威と権力の分離原則である。


***


カルアンの私邸と成りましたミーチェー通りの

元公爵家別邸に逗留とうりゅうしております。

公爵邸ほどではありませんけれど、

王都の一等地にあるなかなかのお屋敷ですわ。


カルアンはついこの間まで騎士爵でしたけれど、

婚約の際に父公爵閣下から従属爵位のエルベ男爵を継承しましたの。


ちなみに私はこのまま王都で暮らす事になりましたの。

年明けから精霊院に通いますのよ。

いわゆる飛び級ですわね。


当然カルアンもここに住みますわ。

このお屋敷の御主人様ですもの。

けれども婚姻が成立するまで私は客人としてお世話になりますの。

お部屋も離れの客室を使いますのよ。


「少し手狭になるけれど暫くの間だけ辛抱しておくれサーシア」


なにかと母屋おもやの正室を勧めて来ますけれど、

そこは文字通り本妻様のお部屋ですから隣のお部屋と繋がっていますの。


「いいえ充分ですわカルアン。

お気遣いなさらないで」

下心が股間に露出しそうですわよ。


お祖母様も一緒ですの。

私が精霊院を卒業するまで院の講師をして下さいますの。

家庭教師もお祖母様でしたのよ。


「人型の精霊ですもの、このくらいは楽勝よね!」

といきなり中級レベルの実技を特訓させられましたわ。

私が上手に出来る度にお菓子を下さいますの。


オーシャンパラダイスのアシカとおねーさんを思い出しましたわ。


けれどもう全ての上級魔法を使えますの。

だってルルナが居ますのよ!

当然で御座いましょう?


内緒ですわよ!


とは言いつつも年末には結婚となりますので、

あと90日もすれば母屋に移るのですけれど。


諸所しょしょの雲行きが怪し過ぎますので、

さっさと身を固めた方が良いとなりましたの。

公爵家との取り決めで14歳になるまでは

閨を共にしない事になっておりますわ。


カルアンの辛抱が続けば良いのだけれど・・・


まぁ一線を越えないで下さるのでしたら、

多少の事は黙認して差し上げますわ。

チャーミィに飛び火でもしましたら大惨事ですもの

ガス抜きは必要ですわ!


いざとなったらルルナが力ずくで止めて呉れるので、

焦らされて悶絶なされる姿を眺めるのも悪くはありませんわね。


さて今日は教会で聖女就任の式典を行いますの。

ところが教会の方がルルナにも法衣をまとって頂きたいと

懇願こんがんしていますの。


何卒なにとぞ!何卒こちらをお召し下さいますよう

伏してお願い申し上げまする!」


まぁ無理もありませんわね。

精霊王がパンツ丸見えでは体裁が宜しくありませんもの。


「パンチラのない魔法少女は、唯の美少女です!」

マジカルプリンセス・ルルナ第一話

~紅の魔法少女~のセリフですわ・・・


ルルナが言うには、

マジカルプリンセスのコスチュームで

魔法を発動する設定になっているので

他の衣装では都合が悪いのだそうですわ。


変身は出来るのですが、その際に一瞬だけ

裸になるのが嫌だと言いますのよ。

恥ずかしいのならそこまで忠実に再現しなければ宜しいのに。


放送禁止になったのもあれが原因でしたわね。


代替案だいたいあんとしてルルナの提案で

精霊の多重契約をする事になりましたわ。

緊急で無い時はルルナに替わって魔法を発動して貰いますの。

多重契約はルルナが精霊歌をうたう事で成立するのだそうですわ。


フル装備のルルナが私の周りを軽快なリズムで

踊りながらうたい出しましたわ。


『お椀出せ~♪茶碗出せ~♪

 はよ出せ~♪お~待た~せ~♪

 若者~の街~なんば~♪

 みんなで~集~ま~れ~♪』


難波デキシーランダーズの「聖女の行進」ですわね。

おしりフリフリがエロくて可愛いですわよルルナ!

前も後ろもしっかりと食い込んで良い仕事をしていますわ。


たくさん出ましたわぁ~

朝からどっさりですわぁ~

どう見ても十二支ですわよね・・・

牛が大きいですわぁ~


「こんなに大勢いりますの?」

「私の代役ですから最低これくらいは必要です」

よっぽど裸が嫌ですのね。

パンツは喜んで見せる痴女っ子ルルナちゃんですのに・・・


ほんの一刻ほどの道のりですが大行進になりましたわ。

わらわらと沿道に人が集まって、

私達が通り過ぎた後を付いて来るのです。


致し方御座いませんわね。

人型もそうですけれど牛や馬や虎の様な

大型の精霊を見るのは初めてですものね。


「せっかくですから牛に乗ってみてはどうですか?」

とルルナが勧めるので、何故馬では無いの?

と思いながらも乗ってみましたの。


くら手綱たづなもありませんけれど柔らかくて

横乗りしていても安定していますわ。

動き出しても全く揺れませんのよ!


まるで浮いている様に滑らかに進みますの。

リニアかしら?

足元を覗いて見ましたら本当に浮いていましたわ。

リニアですわね!

さすが精霊牛ですわね!

お肉もきっと霜降りに違いありませんわ!

運動不足で!


それにしても牛の頭にはやっぱり

ネズミがいますのね・・・


お約束?

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330657480270615

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