第16話 梔子
「「あ~あ~」」
「おい」
「「あ~あ~あ~」」
「おい」
「あ~あ~あ~あ~」」
声を荒げてはいけない。
体力気力知力の無駄だ。
現補修者元ナンバーツーヒーローは小さく頷くと、脱力しきった声を出しながら竹を粉砕し続ける元ナンバーワンヒーローズである夫婦に声をかけた。
「竹を粉砕しないように頑張っているのはよくわかるが、傍に居る俺の力まで萎えちまうから別の方法を考えないか?効果ねえみたいだしよ」
「「………」」
「何だよ」
「「んー。ちょっと、子離れを実感している」」
「ああ。あいつが弟子を取ったからか?」
「「そー」」
「殊勝な態度は最初だけで暴れさせろ暴れさせろって煩いんだろ」
「「粉砕しない方法を教えろ粉砕しない方法を教えろ!」」
「そんな方法があるならとっくに教えてさっさと補修者にさせてここから立ち去ってもらっとるわ」
「「ひどいひどい!」
「駄々をこねるな」
「「うー」」
「はあ。ったく。もうヒーローとして返り咲いた方がいいんじゃねえか。どうせ死ぬまでずっと強いままだろうしよ」
「「引退したから」」
「引退表明したって戻ったっていいだろうが」
「「やだ。補修者として娘の補助に回る」」
「人には向き不向きと言うものがあってだな」
「「やだやだやだやだやだ!」」
「あーあーあー。ひっくり返ってじたばたすんな」
「「お父さんお母さんすごいって言われたい!」」
「ヒーローとして言われりゃあいいだろうが」
「「ムリムリムリ娘は好敵手としてしか見てくれなくなる!いつも負けない勝つよって睨みつけられるようになる!うち負けん気が強いもん!」」
「否定はしないが。あー。んー。じゃあ、その竹を俺の骨だと思って慎重に扱ってみろ」
「「………補修者の骨」」
「急に影を負うな。怖えだろうが」
「「骨は粉砕しても回復可能」」
「最初から諦めんな」
「「で、では。お願いします」」
「ああ」
「なあ。俺たち、捕まらねえの?」
「幼児の見た目に惑わされるな。こいつは悪様なんだからな」
「でも。パトカーの数がすごいんだけど」
「………本部と警察の連携はどうなっているんだ?」
初の邂逅から会いに来ては逃げ帰るを繰り返す悪様をやっとの事で捕縛できた現ナンバーワンヒーローは、今にも飛び掛かって来そうな警官たちにヒーロー証明書を見せたのであった。
「えー紙切れ一枚かよかっこわりー。バッジとかねえの?」
「ない」
(2022.12.8)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます