第14話 鉛丹




 あの少年を後継者にした。

 小さな子どもに変装した両親にそう報告すれば。

 喜んでくれるものだと思っていたのだが。

 両親は駄目と言っては、後からついてきた少年の足に抱き着いた。

 少年は私たちに必要だから、後継者になる余裕はないのだと。


 両親がそこまで言うなら。

 それに両親の傍に居た方が良いかもなと思ってしまったから。

 解消しようとしたら、少年がいきなり攻撃して来た。

 しかし果たして、掠りもしなかった。


 両親が足に抱き着いている所為で届かなかったのか。

 そもそも届かせる気がなかったのか。

 どちらにしても。


 やはり油断を狙っていたのかと思いきや。

 機会をくれと、行動とは裏腹に随分と殊勝な事を言い出した。


 そこまでの覚悟があるなら。

 結局、少年が機会の内容を言い出す前に両親が少年を解放して、私の後継者になる事を了承。祝杯だと言って、子どもの姿のまま爆走してスーパーに突入。焼き肉の材料をしこたま買って、師匠の秘密基地で焼き肉パーティーをして、大騒ぎをしながらたらふく食べて、後片付けもせずに雑魚寝になっていたところに届いた、連絡。


 これも一種のフラグかな。

 苦笑しながら、こっそり抜け出す。


 行ってきます。

 唇を動かした。

 音は出さなかった。











(2022.11.29)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る