第9話 ルールと音楽
あれから、有希の荷物も無事に届き、買い物デートをしてダイニングテーブルと有希の部屋の家具を買い揃え、二人で生活をするようになって一ヶ月。
有希は学校で忙しく、俺も新曲のレコーディングや、それに伴うプロモーションで忙しくしていた。
二人で住むに当たって、ルールをいくつか決めたりもした。
掃除は基本的に自分のスペースは自分で。共有は交代で。ロボット掃除機も頑張ってるし雑巾掛けをまめにしてたら大丈夫。洗濯は有希がしてくれるそうだ。
食事は作りたい人が申告。俺の方が家を開けることがあるので、そういう時は実家に行ってもいいしな。
あと、大事なこと。俺から有希には触れることができない。
それはこの生活を始めるための親とした約束。
結婚したら思う存分いちゃいちゃしてやる。
「あと、一日一回は有希を口説くから絆されて」
まだ新品同様のダイニングテーブルで向かい合って座り、有希の両手を包み込むように握りしめて、ちゃんと目を合わせて言う。
すごくすごく大事なこと。これは有希に納得してもらわないとな。
「ひぇっ?こ、コウちゃん??」
「有希はまだそこまで俺のこと好きなわけじゃないでしょ?だから、結婚するまで有希のことどれだけ好きか教えるから、俺のこと好きになってね」
握った手に軽く力を入れて、有希の手をぎゅっとする。コクコク頷くと髪がふわふわ揺れて綿菓子のよう。美味しそうだな。
その後、部屋から聞こえてきた、
「初恋の人を好きじゃないなんて、あるわけないでしょ〜」
そんな有希の小さな呟き、聴こえてしまった俺は自分の耳の良さに感謝した。
さて、有希が大学に行ってる間に俺は音楽活動。有希と再会してから毎日5曲はストックが出来ている。
簡単なコードとフレーズだけだともっと多いな。
その中から曲としていけそうなものをブラッシュアップしていく。
パソコンとキーボードを使ってコード進行を考えながらメロディを作っていく。
「ん〜、あー、るる、らー」
歌詞を入れやすいように意味のない音で声を出しながら曲を紡ぐ。
ああ、我ながら綺麗な曲ができそうだ。
途中マネージャーから連絡が来たり、昼飯を食べたりして、夕方に有希が帰ってくるまで2曲が形になっていた。
夕食後、鼻歌を歌いながら皿を洗う。あ、これも曲になりそうなんてことを思いながら。
「もうすぐ卒業式ですね、待ち遠しい」
有希は隣で皿を拭きながら片付けをしてくれている。俺より15センチほど低い身長の有希がパタパタと動くのを見るのは可愛いくてたまらない。
「コウちゃん、その曲は一体!? 聴いたことがないですよ?」
お、珍しく有希が興奮している。目がキラキラして頬が少し赤い。やばいにやけてしまう。
「この曲はー。即興です。今作った」
だから、これを聴いたのは有希が正真正銘初めて。そう続けると、
「い、いいんですか?私だけになんて」
「奥さんになるんだもん。いいんじゃないでしょうか?」
相模みなとモードの笑顔を大安売り。有希に向かって微笑むと、わかりやすく真っ赤になった。
あ〜、抱きしめたい。
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