第7話 同棲開始
俺の子供の頃からという発言で、えっという小さな声をあげる有希。横を見るときょとんとしている有希と目が合う。
「え?子供の頃から??」
もしかして俺のこと忘れちゃってるのかな?
「うん、有希覚えてない?俺とよく遊んでたの」
「もちろん覚えてるわよ。コウちゃんいつも私に合わせてくれて、おままごととかお絵描きしてくれたわ。一緒に歌も歌ったわね」
その頃を思い出したのかにっこり笑う笑顔に幼さを感じ、小さい頃の有希が目に浮かぶ。
人形のような可愛らしさで、コウちゃんと舌足らずに言いながら俺の後をちょこちょことついてきて、いつも控えめにこれで遊びたいっていうんだ。
俺がそれを断ったことはもちろん一度もない。
「あの頃から有希のことが大好きで、わがまま言って婚約者にしてもらったんだよ」
覚えられていたのが嬉しい。どうしよう、この感動。ああ、顔に出ないタイプでよかった。
あの頃の俺は今思い出してもワガママだった。よく親や叔父さんたちに呆れられなかったと寛大な大人たちにホッとする。
「幸二くんすごくてなぁ。有希を連れて帰るって会うたびにいうもんだし、かといって会わせないと静かに怒ってるっていうんで、彼の親に泣きつかれてなー」
「美幸さんにお願いされたのよね。いつか有希をお嫁さんにするんだって人生設計組み立てているから、諦めさせるために一応婚約という形をって」
つくづく、母と似ている性格でよかった……のか?
学生時代からうちの両親知っているこの二人だからこそ、俺が絶対に有希を諦めないとわかっていただろうし。
「でも有希の方も幸二くんのファンみたいだし、これはこのままほっとくほうがお互いのためだって思ったんだよな」
「あー、だから私はもう写真を持ってるってことね」
納得する有希。
叔父さんに軽く騙されていることには気がついた方がいいのだが、俺的には問題ないので放っておく。いつかバラすこともあるだろう。
俺の写真で有希が持っているのはメジャーデビューしてからで、それ以前は一枚もないということを。
それにしても、そうか、有希は俺のアルバム全部持っていてくれたのか。
ということは、
「嬉しいなぁ。有希のための曲がちゃんと届いてた」
俺の曲の全てが有希をモチーフにしている。
なので失恋の曲は一曲もない。みんな希望を持ったハッピーエンド。情景やイベントの曲はこれから有希と行きたかったりやりたいこと。
その後は叔母さんの手作りケーキを頂いたり、改めてマンションの住所を伝えて家族の方達との連絡先交換、真由ちゃんには曲のことを聞かれたり。
「それでは、叔父さん、叔母さん。真由さん、智くん。有希は預かります。必ず幸せにするので安心してください」
「ああ、心配していないよ。ただたまには顔が見たいので二人で帰ってくるといい」
「お父さんもお酒の飲み過ぎだけは注意してね。リビングで寝ちゃだめよ」
こうして、4時ごろお暇した俺と有希は、電車で4駅の俺のマンションに帰ってきた。
有希は今日から俺と同棲生活の始まり。
荷物は午前中に発送してあり、夜6時以降8時までの便に指定済み。
まずは部屋の案内からかな。っと、有希が玄関で止まっている。
「有希どうしたのかな?なんで入らないの?」
玄関は100足は入る作り付けのシューズボックスがあって、俺の靴だけでは半分も埋まらない。壁の色は濃いクリーム色でアクセントに茶色が使われている。俺の趣味全開の玄関。
「思ったより広くて驚いちゃった」
「ああ、親の援助もあったしね、奮発しました」
戯けたようにいうと、有希がホッとしたようにニコッと笑う。
「部屋を案内するよ」
そう言いながら俺は次々と案内していく。
「入ってすぐの左側の扉は浴室。洗濯機もここ、隣はトイレ。廊下の反対側は手前が防音室になっていてレコーディングや動画作りもここでしている。奥は器材室だけどベッドを置いたら寝心地が良くてそのまま寝室として使ってる」
有希の瞳が輝いている。機材が珍しいのかな?
「ここであの曲が作られているのね!すごい!すごい!」
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