第2話 中学時代
中学生になっても、俺の気持ちは変わらないまま。
身長が伸びてそれなりに見た目に気を遣い、有希にふさわしい人間になるために勉強もスポーツも頑張っている俺はそこそこ女子にモテていた。
「神戸くん、好きな子はいるの?」
「いるよ、ずっと好きなんだ」
それなりに話をする女子とこういう会話をするのは正直いって面倒だった。
仲が良いと思っている子は自分のことかと勘違いするし、そうでもない子はそれが誰かを執拗に知ろうとする。
そのうちあしらい方を覚えてきて、そういう雰囲気から自分を外すことに成功した。具体的には、手の届かない存在だと思わせてしまえばいいということに気がついたんだ。
自分を高みに上げるためには更なる努力が必要だったけれど、そのおかげで教師からの覚えはよくなるし、女友達はいなくなったけど男友達はやたらと増えた。
中学3年の時には生徒会長なんてやってみたり、高校受験の時もおかげで内申が良くなったり良いこと尽くめだった。
それもこれも有希のおかげかもしれないなんて、会えない寂しさをこうして違う方向にすり替えていた。
まさか3歳も年下の子にずっと恋してるなんて、恥じることではないけど誰にも言えなかった。
だって、下手に教えて他の人に有希の可愛さを気づかれてしまうわけにはいかない。
たまに有希の父親である、香川篤宏さんが連絡をくれる。
俺が叔父さんと呼んでいるその人からのメールに添付してある何枚もの有希の写真。さすがに水着なんかはないけど笑顔、怒った顔、私服、制服、時には妹弟が撮ったという変顔まであった。
どんな顔をしても可愛い有希。
専用のフォルダを作って大事に全部保存してある。
「幸二、有希ちゃんと会えるけどどうする?」
母はたまに香川さんの家に行って、お茶したり食事したりと付き合いは続いていた。
「会ったらそのまま拐ってきそうだからやめとく」
思いっきり本心から答えると、両親が呆れたような顔をする。
「ほんっとにあんたって子は誰に似たの?」
「母さんだな」
「美幸さんだね」
俺と父さんから瞬時に指摘された母さんは、思い当たることがあったのか口を噤んで黙ってしまった。
知ってるんだよね、昔父さんから聞いたから。
幼馴染で初めて会った時から父さんに夢中で、将来絶対結婚すると言い張って中高大と父さんに近寄る女性たちを牽制しまくっていたそうだ。
なんだ自分はこの人に似たのかと納得できてしまった。
そしてそんなよく言えば情熱的、悪く言えばやばいやつの血を色濃く受け継いだ俺は自覚有りのヤバいやつになりつつある。
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