離れの生活①
――あれからひと月経った頃。
「お父様……こんな場所ありましたっけ」
「ああ。本当は俺が使おうと思っていたんだが、リアに譲ろうかと思っているんだ」
「え、なんで私に?」
私は、公爵家から離縁されて伯爵邸に戻ってきた私は好きなことをして過ごしていた。
「料理好きだろう? うちの厨房では自由に使えないからな」
「ま、そうだけど……でも」
「それにリア言っていただろう? 皆から腫れ物扱いされていると」
確かにそんなことを行った気もするけど、でもはなれが欲しいなんて言っていないです。
「刺繍糸も揃えたし、厨房も簡易的だが設備は整えた」
「それは嬉しいですけど……」
「友人を呼んでも問題はないよ」
まあ、そんな感じしますが。ティールームもあるくらいだもの。
「気に入ってくれたかな」
「はい、とても素敵です」
そう言えば、お父様は侍女や従者たちに指示をして私の部屋移動をさせてしまった。
「リア様、お茶でもどうですか?」
「ありがとうカネリー……だけどもう少しでクッキー焼けそうなの」
離れに暮らすようになり数日、毎日お菓子を作っているのだからお菓子作りの腕はとても上達した。
「リアお嬢様、侯爵夫人がいらっしゃいましたわ」
「あら、早いのね……ティールームへ通してちょうだい」
「はい、畏まりました」
侯爵夫人であるエミリア様は、侯爵夫人だった時からとても仲が良かった。王都アカデミーの時からの友人で、今じゃ2人の母である。ちなみに侯爵様とは関係が良好で、今もラブラブだ。
「ふふっ、よし……焼けた」
「お嬢様、私が持っていきますわ」
「ありがとう、熱いから気をつけてね」
侍女に任せてミア様がいる部屋へと急ぐ。
「お待たせいたしました、ミア様。ごきげんよう」
「ごきげんよう、リア様。今日も美味しそうな焼き菓子ね」
「ええ、やることがなくなってしまったから料理とかの時間が増えたの」
私は座ってそう言うと、ふふっと笑った。
「離縁してからのあなたはとても生き生きしているわね」
「そう、かしら?」
「そうよ、長い間の呪縛から開放されたのだもの当然よね」
「それもあると思うわ、でも公爵夫人としての矜持とか気にしなくていいと思ったら気が楽になったの」
本当に自由って最高だわ。
書類と睨めっこしないでいいし、領民からの文句や罵倒も聞かなくていい。そう思ったら、スキップできそう。
「そうなのね、そうだわ。その後の公爵家知っている?」
「え、知らないわ。興味ないもの」
「そうよね。じゃぁ、何も言わないわ。でも大変らしいの」
まぁ、そうよね。あの人は、仕事したことないと思うし……書類も溜まってるだろうし、お父様の金銭的援助もなくなっているだろう。
「侯爵が言っていたのだけどとても荒れていたらしいわよ、隈もできてしまったらしいし……なのに愛人さんはお金使い放題らしくて、喧嘩ばかりらしいの」
「そうなんだ、まぁ予想通りよね。ふふっ……あ、そうだわ。これ刺繍したのだけどどうかしら」
「えっ、素敵だわ! すごい。侯爵様もお喜びになるわ!」
それは、彼女に以前頼まれていた侯爵家の家紋を刺繍したハンカチだ。
「そう? 良かったわ。で、これがあなたの分ね」
「えっ、わたくしにも?」
「あなたはマリーゴールドが好きでしょう? それを刺繍してみたの」
……というか暇だったのよ。暇だから刺繍が進んでしまって、今度伯爵領であるバザーに出すものがほとんど出来てしまったわ。
「ありがとう、大切にするわね」
ミア様はこういうものがとても好きな人だ。学生時代に自分には出来ないからと褒めてくれたのをきっかけに刺繍のものをプレゼントしている。
「こちらこそ」
そのあとは、彼女の侯爵様とのラブラブな惚気を聞いたりして楽しい時間を過ごせた。
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