幕間__①
「チッ……! どういうことだよっ」
「そのまんまよ、カルロ。仕事をしなきゃ溜まっていくに決まっているでしょ?」
小さな書斎の机やソファに積み上げられた書類たちが散乱している。
「今まで通り、母さん仕事してくれよっ」
「は?
「そうだよ!これまでだってやってくれていたじゃないか!」
「なぜ当主の仕事をこの私がするのかしら」
公爵当主・カルロは苛立っていた。なぜ今までやってくれていた仕事をもうやらなくなったのか、俺がリディアと勝手に離縁したからなのか。
そういえば母さんは、リディアを気に入っていたな。
「メアリーが気に入らないからって……」
「は? 気に入らないのは初めからわかってることでしょう? だから私がいない時を狙って離縁して婚姻を結んだのでしょう?」
確かにそうだ。母さんがいない時を狙っていた。というか、どこに行っていたんだっけ……。
「私がバカンスをしたことも知らないのかしら」
「ば、バカンス? いつもの旅行じゃ無かったのか?」
カルロがそう問うと「一年くらいはいなかったわよ」と衝撃発言をした。
「その間は、どうやって……」
「え、リアさんがずっとやっていたわよ。あなたが女遊びをしている間、ずっと公爵家当主がするべき仕事をずっとね」
カルロにとっては初耳のことばかりで、唖然とする。
「まあ、あなたも愛する女性と結婚できてそれに子供まで授かっているんですもの。これからは夫として父親として当主として頑張りなさい」
「そ、そんな……」
「これから私はもう一度、旅行に行くの。だからあとはよろしくね、カルロ。メアリーさん?」
そう言って母が好きな帽子を被ると、トランクケースを持って出て行った。
それと入れ替わりで、公爵家執事長が一枚の手紙を持ってきた。
「王宮から……?」
そう呟くと、メアリーが「えっもしかしてパーティー?」と言い嬉しそうに笑った。
カルロは手紙の封をナイフで開けるとそこにはアンダーソン伯爵と国王陛下の名前がサインされて王家承認の印が入っている。そこには、契約していた全てを白紙とすることと金銭援助の停止が記されていた。
「なんだよ、これ……」
「どうしたの? カルロ」
「いや。なんでもない……」
王家を通したのは俺が捨てるだろうと思ったからなのか、王家を通せば覆すことはできないからなのか……とてもまずい状況だ。
それにカルロは、金銭援助してもらっていたことを知らなかったのだ。
「なんとかしなくては……」
――メアリーのためにも、お腹の子のためにも。
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