ノスタ公爵家訪問
お披露目会が終わった次の日、アルスはノスタ公爵家を訪れることになっていた。
公爵家への訪問のため昨日と同じようにしっかりと身だしなみを整えた。
ノスタ公爵家の屋敷はサーナス侯爵家の通路挟んで隣の屋敷で、歩いて5分程かかる。上級貴族の屋敷はとても大きいため、近くにあっても少し時間がかかる。
アルスは護衛の騎士1人を連れてノスタ公爵家の家の前に今はいる。
(な、なんだこの大きさは...)
アルスはあまりの大きさにびっくりした。
サーナス侯爵家の屋敷も上級貴族であるからかなり大きい。サルサにある侯爵家の屋敷の中でも1番だ。
だが、ノスタ公爵家の屋敷はサーナス侯爵家の屋敷の2倍はあった。また、庭もとても綺麗に手入れされている。
さすが貴族のトップ公爵家である。
アルスは庭を通り玄関前まで来ると扉が開き、中からはセシルと同い歳くらいの執事が出てきた。どうやら門番の人がアルスが来たことを先回りして知らせてくれていたようだ。
「アルス様でございますね。お待ちしておりました。旦那様が応接室にてお待ちですので、ご案内致します。」
執事は丁寧に対応してくれて、屋敷に入れてくれた。
玄関ホールは天井が高く吹き抜けになっていた。壁や棚の上に絵画や骨董品といった品のある芸術品で飾られている。
公爵家の格の違いにとても驚かさられる。
執事について行き、応接室前まで案内してくれた。応接室の扉もとても重厚な作りだ。
執事がノックをする。
コンコン
「旦那様、アルス様をお連れしました。」
「入っていいよー。」
中からロフの声が聞こえ、執事が扉を開けてくれた。
中に入るとロフだけでなく、リエラも同席していた。リエラは今日もとても美しい。
ロフに座るように言われアルスは、ロフの正面のソファーに座った。
(何このソファーめっちゃフワフワ!)
そう思っていると執事が紅茶をいれてくれてテーブルに置いた。それと同時にロフが口を開いた。
「アルスくん来てくれてありがとう!ノスタ家は君を歓迎するよ。」
「ノスタ公爵、お招き頂きありがとうございます。とても大きな屋敷でびっくりしました。」
「無駄に大きいだけだよ。それも見栄の為にね。公爵家が舐められることなんてあってはならないからね。」
公爵家でも見栄を気にすることに貴族社会の面倒くささを改めて感じた。
「さて、昨日言ったようにアルスくんには相談したいことがあるんだ。」
「はい、なんでしょう。」
「実はね、君に我が領の開発を手伝って欲しいんだ!」
「か、開発ですか、」
まさかの開発という大規模プロジェクトであり、かなり驚いた。
「そうだ、今から説明するね!うちの領は...」
ロフが説明を始めた。
ロフによるとノスタ公爵領に新たな目玉スポットを作りたいということだった。
ノスタ公爵領は人口約60万人、国内2番目の規模を誇る領地でサーマル湖と呼ばれる風光明媚な湖がある。サーマル湖は領都バンと隣接しており、アクセスが良いため観光都市となっている。
「とても良い領地ですね。一度行ってみたいと思いました。」
アルスはノスタ公爵領の魅力に惹かれた。
だが、ここからが本題であった。
「自分の領が褒められるのは嬉しいよ。だけど問題を抱えていてね。」
「問題ですか、一体どんな。」
「実はね、観光するところがサーマル湖しかないんだよ。」
今のノスタ公爵領はサーマル湖頼りになっていた。王都サルサから近く交通のアクセスが良いため観光客は多いが、宿泊期間が短かったり、リピーターが少ないという問題があった。
「お金を持っている王族や貴族、豪商などは別荘を構えたりして休暇で長く滞在してくれたりすることは多いんだけどね。一般住民たちが少ないんだ。」
「なるほど。そんな課題もあるんですね。」
「新しく目玉スポットが出来れば観光客も滞在してくれるし、領内の経済にも大きく貢献してくれると思うんだ。どうだろう?手伝ってくれないかい?」
ロフの話を聞いてアルスはぜひ手を貸したいと思った。これもアルスの使命であるこの世界の発展に大きく貢献すると考えたからだ。
「はい!ぜひ手伝わせてください!」
「そうか、嬉しいよ!」
ロフは笑顔になり、とても嬉しそうだ。
その姿を見てアルスも嬉しくなった。
「では、アルスくんにはリエラとタッグを組んでもらう!」
「えっ!」
アルスは思わず、声を上げてしまった。
「リエラ嬢がここに同席していたのは、そのためだったんですか?」
リエラが一言も発さず同席していたのは気になっていたが、どうやらタッグを組むためだったらしい。
「そうだよ!」
ロフがそう言うと、リエラは席を立った。
その姿がまた美しい。
リエラはアルスの前まで歩きアルスの正面で立ち止まった。
アルスも席を立つ。
「アルス様、一緒に頑張りましょう!」
「はい、リエラ嬢。こちらこそよろしくお願いします。」
アルスが笑顔で応じるとリエラは頬を染めた。その姿もとても美しかった。
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