ノスタ公爵家

挨拶が終わり、アルスは挨拶回りをサノスとルナと行っている。

貴族が多く集まっており、貴族同士で話が弾んでいるところもあるため、上級貴族と下級貴族関係なく空いてる貴族から挨拶をする。

アルスは先程の貴族令嬢のことが気になっていたが、父親と貴族令嬢の周りには多くの貴族が集まっており、挨拶は最後の方になりそうだ。


挨拶回りをしていると、案の定自分の娘をしつこく紹介してくる貴族や媚びてくる貴族が数家見られた。


(思惑がバレバレなんだよ)


アルスが心の中でつぶやく。

その後も挨拶回りをし続けたが正直、最初の数家以降は覚えていない。あまりにも数が多すぎるのだ。


「あまりにも多すぎるよ。さすがに...」


「今日だけだ。頑張れ。」


「わかっています、父様。そういえば今どこまで挨拶し終わったんだけ?覚えてないや...」


「あら、アルスったら。まあこんなにいたらわからなくなるのも当然よね。今は120家終わったわ。最後はノスタ公爵家ね。あちらの御令嬢と一緒にいらっしゃる家よ。」


そういうとルナがノスタ公爵家の居場所を教えてくれた。

ノスタ公爵家はアルスが最初のステージでの挨拶の時に気になった人たちであった。

するとサノスがノスタ公爵家について説明をしてくれた。


ノスタ公爵家はマリアナ王国に2家しかない公爵家の一つで、マリアナ王国貴族の頂点に君臨する家である。ちなみにもう1家はマリアナ王国の最北にあるエルフの自治領の領主であり、領主もエルフである。今日のお披露目会には代理が参加している。

ノスタ公爵家は王都サルサの東にすぐのノスタ領を治めている。領都はバンでサルサまで馬車で2日という近さである。人口は全体で約60万人、領都バンには約40万人が住んでおり、マリアナ王国2番目の規模を誇る。

このノスタ公爵家の当主はロフ・フォン・ノスタ。40歳でイケメンだ。そしてマリアナ王国の財務大臣を務める重鎮だ。

そして、アルスが目を奪われた令嬢はリエラ・フォン・ノスタ。スタイルの良い絶世の美少女でアルスの一つ年上の6歳だ。かなり頭が良いと評判らしい。


「アルス、我が家はノスタ公爵家にとても仲良くしていただいてる。決して失礼のないようにな。」


「はい、父様。」


最後に、サノスの忠告を受けノスタ公爵家へと挨拶に向かう。

向こうもこちらに気づいたらしくこちらに来てくれた。

品のある家だと遠目で見てわかっていたが、近づくとよりわかった。特に令嬢のリエラの美しさはとても眩しかった。


(めちゃくちゃ綺麗な人だな...)


思わず口に出してしまいそうであったが、心の中にとどめアルスは挨拶を始めた。


「ノスタ公爵、本日は私のお披露目会に足を運んでくださり誠にありがとうございます。改めましてサノスの息子アルスです。よろしくお願いいたします。」


アルスは最高の笑顔でロフに挨拶をした。

ロフは近くで見るととても背の高いイケメンで華のある貴族だとアルスは感じた。


「挨拶ありがとう。ノスタ公爵家当主のロフ・フォン・ノスタだ。よろしく頼むよ。」


「はい、よろしくお願いします!」


ロフはとても親しみやすい優しそうな人だなとアルスは感じた。


「アルス君、私の娘も紹介するよ。娘のリエラだ。君より一つ年上だよ。仲良くしてあげてほしい。リエラ挨拶を。」


「初めまして、リエラ・フォン・ノスタです。よろしくお願いいします。」


リエラの挨拶をすると華麗に一礼した。この姿がとても綺麗だ。

見惚れているとリエラが口を開いた。


「アルス様、聞きたいことがあります。」


「なんでしょう、リエラ嬢。」


「3年前の農業都市カマの水不足問題を解決したのはアルス様だと聞いております。それは本当でしょうか?」


リエラの聞きたかったことは水路の件だった。

実は他家の挨拶回りの時もいくつかの家に聞かれたが、どの家もアルスを通じてサーナス侯爵家に取り入ろうとしているのが見え見えだった。

だが、リエラからは純粋に気になっていることが伝わってきた。


「リエラ嬢、その話は本当です。ですが、私の力だけでできたわけではありません。カマのみんなと協力して成し遂げられたのです。」


アルスは事実をそのまま伝えた。すると口を開いたのはロフであった。


「アルス君あの時、国中がかなり混乱したんだ。食糧不足になるってね。うちの領はサーナスに頼りきりだったから特に混乱したんだ。」


「そうだったんですね。」


「でね、うちの領でも色々対策を練っていたんだ。リエラも一緒にね!」


アルスは自分が転生者であるから2歳の時からあんなことができたと思ってきたが、リエラは転生者でもないただの人間なのに対策を練っていたと聞き、とても驚いた。


(いや、リエラの方がすげぇじゃん)


衝撃な話にリエラに興味がとても湧いてきた。


「アルス様、私は水路の話を聞いたあの時、自分より年下の子があんな発想をしたことに衝撃を受けました。それ以来一度必ず会いたいと思っておりました。」


こんな綺麗な子に会いたかったと言われアルスは嬉しくなった。


「今日実際に会えて嬉しいです!しかもかっこ....あ...なんでもないですぅう!!!」


(あれ?今かっこいいって言いかけた??)


リエラの顔を見ると真っ赤にさせていた。

その顔は恋する乙女そのものだった。


「リエラ嬢、私も会えて嬉しいです。ぜひ、友達になって下さいませんか?」


「と、友達...はい!是非とも!」


こうしてアルスとリエラは友達になった。しかも今まで訓練などに励んできたアルスにとっては初めての友達であり、とても嬉しかった。


しばらく話していると、ロフがアルスに話しかけてきた。


「アルスくん、明日時間があるかい?君に相談があって家に招きたいんだが。」


「明日ですか、明日は大丈夫です。父の許可が頂ければ。」


アルスはサノスに許可を求めた。


「ノスタ公爵の誘いだ。ぜひ行くといい。あと、どこか出かける時に私の許可はいらないよ。自分の判断で決めなさい。」


サノスはあっさり了承してくれた。

サノスはアルスを信頼しているし、公爵の誘いを断れるわけが無いからだ。


「ノスタ公爵、ぜひ伺わせてください。」


「そうか、嬉しいよ!」


「ところで、相談とは何でしょうか?」


公爵からの相談だ。きっと大きいことだろうとアルスは思った。


「まぁ、それは明日話すよ。来るのを心待ちにしているからね。」


「はい、分かりました。」


こうして、明日はノスタ公爵家の屋敷に行くことになった。

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