誕生会という名のお披露目会
王都サルサに着いた次の日。
今日は夜にアルスの5歳の誕生会が催される。だが、この誕生会は普通の誕生会では無い。
まずこの世界では、誕生日を祝う文化がない。しかし、貴族には5歳つまり洗礼を受ける年齢になった時にだけ、誕生会という名のお披露目会を開催する。
これは、自身の子供を紹介し貴族に知ってもらうことを目的にしており、顔を売る為に開催される。
しかし、この催しはとても重要で参加する貴族にとっては品定めの機会になる。
お披露目会にはサーナス侯爵家を除く121家の全ての家を招くが、当主が参加する家もあれば、代理が参加する家もあるそうだ。
また今回のお披露目会には、アルスに娘を嫁がせることでサーナス侯爵家と縁を持ちたい家やアルスに気に入られ安定した地位を確保することを目的とする家などもいるようだ。
様々な思惑が交差するのがこのお披露目会である。
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夕方になり、次第に暗くなっていく。
部屋から庭を覗くと、馬車が続々と入ってくる。中には娘を連れてきている家もあるようだ。
「はぁ、ちょっと緊張してきたな。てか、こんな髪型で大丈夫かな?」
アルスは今日のために準備されてパーティー衣装に着替え、髪をセットしている最中だった。貴族は見栄が大事だとサノスが言っていたため、いつも以上に入念に髪の毛をセットし、会場へ向かった。
会場は屋敷のダイニングだ。この屋敷のダイニングはスパムの領主邸より広く作られていた。貴族がパーティーを開く時はわざわざ領地に出向くのではなく、王都の屋敷で行うのが慣例となっている。これは王族の目が届くとこで行わせることで謀反などを防止する役割があると言われている。
会場に入ると一斉に貴族たちがアルスを見る。どうやら品定めが既に始まっているようだ。会場に設けられたステージにはサノスとルナが既に待機していた。
アルスが2人の隣に立つとサーナス侯爵家当主であるサノスが挨拶をする。
「本日は集まって下さりありがとうございます。我がサーナス侯爵家の一人息子アルスがこの度5歳を迎え、皆さんに紹介できることを嬉しく思います。ではアルス挨拶を」
サノスに促され、アルスは1歩前にでる。
水路整備の挨拶の時より人は少ないが、品定めをされていることからかなり圧を感じた。
アルスは一度深呼吸をして、挨拶をした。
「皆様、初めまして。サーナス侯爵家当主サノスの長男アルスです。本日は私の為にお集まり下さり感謝申し上げます。皆様のご指導のもと、このマリアナ王国のために力を注いでまいりますので、これからよろしお願い致します。」
挨拶をすると同時にしっかりと頭も下げた。
すると、盛大な拍手と歓声が上がった。どうやら好感を得ることができたらしい。
アルスは笑顔で辺りを見渡すと一際強い視線を感じ、その方向を向くと一人の女の子に目があった。
(かっ、かわいい、、)
アルスは思わず目を奪われてしまった。
その女の子は青色の髪で肩まで伸ばし、背がすらっとしている絶世の美少女だった。隣には父親であろう男性も立っていた。歳はサノスより年上に見えるが豪華な貴族服を着たイケメンだ。
アルスは気になったがこの後挨拶回りがあるため、サノスの隣に戻った。
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